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詐欺未遂事件で逮捕・特殊詐欺における弁護活動
少年が詐欺未遂事件で逮捕されたケースを題材に、特殊詐欺における弁護活動等について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
東京都八王子市に住む少年A(19歳)は、高齢者V(80歳)に対し息子を装って今すぐ金が必要であるとの嘘の電話をかけた。
その後、少年AはV宅を訪問し金を受け取ろうとした。
警視庁八王子警察署の警察官は、少年Aを詐欺未遂の疑いで逮捕した。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~少年による特殊詐欺~
近年、振り込め詐欺等の高齢者をターゲットとした特殊詐欺事件が増加しており、このような事件の中には少年が関わっているケースも少なくありません。
刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた」場合には詐欺罪が成立することを定めており、これは罰金刑を定める窃盗罪(刑法235条)と比べても重い犯罪とされています。
本件も特殊詐欺の事案ではありますが、少年AはVから金銭の交付を受けるには至っておらず、詐欺未遂罪が成立するかどうかが問題となります。
刑法43条前段によると、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」は、(未遂処罰規定が存在する場合には)未遂罪の責任を負います。
(詐欺罪には未遂処罰規定(刑法250条)が存在することから)詐欺罪の「実行に着手」したと言える場合には、詐欺未遂罪が成立することになります。
まず、詐欺罪(上述の246条1項参照)の実行の着手があったといえるためには、「人を欺」く行為(この要件は刑法の現代語化前の表現である「欺罔(ぎもう)行為」と呼ばれることが多いため、以下これに倣います。)に着手したことが必要となります。
欺罔行為とは、人を錯誤に陥らせ財物を交付させる危険性を有する行為をいい、かかる客観的な危険性 があれば実行の着手すなわち未遂罪の成立が認められることになります。
本件では、少年Aは高齢者Vに対し、電話でVの息子であると名乗り金銭が必要であるとの嘘をついています。
高齢者は、日常生活等には支障がないとしても若年者に比べ判断能力が減退している傾向があり、家族を名乗る者から緊急に金銭等の無心をされた場合には、これに応じてしまうことは十分に考えられる事態といえます。
したがって、本件少年Aが息子を装いVに対し金銭の交付を要求した行為は、人を錯誤に陥れ財物を交付させる客観的危険性があるといえ、詐欺罪の実行の着手が認められることになり、詐欺未遂罪(刑法246条1項・250条)が成立すると考えられます。
~特殊詐欺事件の弁護活動~
上述のしたように少年が関与するものを含め特殊詐欺事件は社会問題化しており、捜査機関や裁判所はこれに対して厳格な態度で臨んでいるのが実情です。
成人事件では仮に初犯であっても実刑判決が下ることもあり、楽観的な弁護活動は禁物であると考えられています。
本件のような財産的被害は生じていない未遂事件の場合、財産的被害の生じている既遂事件よりは軽い処分が見込まれるとも考えられます。
もっとも少年事件では、原則として裁判ではなく、家庭裁判所による少年審判を受けることになるため、(組織的な関与も疑われる)特殊詐欺事件では少年院送致など厳しい処分を回避するための弁護活動を行うことが求められることになります。
なお、特殊詐欺グループの共犯事件に受け子や出し子などの末端で関与する場合にも、詐欺(未遂)罪等が成立するとした判例が続々と出てきており、弁護活動を行うにあたっては近年の判例・裁判例の正確な理解が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、特殊詐欺などの詐欺事件を含む少年事件を専門的に取り扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺未遂(特殊詐欺)欺件で逮捕されてしまったお子様のご家族等は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に まずはお問い合わせください。
器物損壊で少年が逮捕・弁護士による早期接見
少年が逮捕されてしまった器物損壊事件を題材に、弁護士による早期接見等の重要性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
神奈川県横浜市に住む少年A(18歳)は、V女の住むマンションの駐輪場にあったV女の自転車に、自らの体液を付着させた。
V女による被害の申告を受けた神奈川県山手警察署の警察官は、少年Aを器物損壊の疑いで逮捕した。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~器物損壊罪の成否~
本件では、少年Aは器物損壊の疑いによって逮捕されています。
この点、刑法261条は「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し……た者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」として、器物損壊罪を定めています。
ここにいう「前3条」には、公用文書等毀棄罪・私用文書等毀棄罪・建造物等損壊罪(258条~260条)が含まれ、これら以外の他人の物を物理的に壊した場合には、261条の器物損壊罪が成立することになります。
では、本件少年Aの行為も「他人の物を損壊し」たとして、器物損壊罪が成立するのでしょうか。
判例・通説によると、刑法261条にいう「損壊」とは、財物の物理的な損壊までは必ずしも必要なく、財物の効用を害する一切の行為をいうと解されています。
判例上、食器に放尿する行為や窓ガラス等に多数のビラを貼付する行為なども、同条の「損壊」に当たるとされています。
そして、本件のような他人の自転車に体液を付着させる行為も、これにより心理的に財物の利用を困難にさせる点で財物の効用を害する行為といえ、少年Aの行為に器物損壊罪が成立することになります。
なお、本罪は刑法264条により親告罪とされていることにも注意を要します。
~少年事件における早期接見の重要性~
逮捕段階においては、家族等による面会は基本的に認められていません。
したがって、刑事訴訟法39条1項によって接見交通権を認められている弁護士による接見が、逮捕されてしまった者とコミュニケーションを採るための重要な手段となります。
少年事件では、いまだ精神的にも未成熟な少年に対する迅速なケアが必要不可欠です。
少年と接見するに当たっては、このような少年の発達段階に配慮したコミュニケーションが弁護士側に求められることになります。
つまり、個々の少年の特性を踏まえた上で、少年の成長・発達の過程に即した言葉や態度を適切に駆使する必要があります。
また、少年は成人と比しても法律の知識のみならず、常識の範疇に属する知識を欠いていることも少なくないことから、よりきめ細かな弁護活動が必要です。
特に捜査官の取調べに対する対応には十分に注意する必要があり、少年事件の経験を十分に積んだ弁護士による弁護活動を受けるメリットは大きいといえます。
捜査官による取調べは、時に威圧的であったり誘導的であったりするため、早期接見により少年への不利益を最小限化することが重要です。
なお、少年事件では、中学や高校・大学等といった教育機関に在籍している者も多いため、これらの学校生活への影響も最小限にとどめる弁護活動が求められることになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、器物損壊事件などの少年事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
少年事件の経験が豊富な弁護士が、迅速な接見や弁護活動を行ってまいります。
器物損壊事件で逮捕されてしまった少年のご家族等は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。
担当の者が早期接見の実現に向けて迅速に対応いたします。
恐喝で逮捕・少年審判への対応は少年事件に弁護士
少年が恐喝の疑いで逮捕された事例を題材に、少年事件特有の手続等に関して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
埼玉県羽生市に住む少年A(18歳)は、Vに対し「金を渡さないと生き埋めにするぞ」などと脅迫し、Vに現金を交付させた。
埼玉県羽生警察署の警察官は、少年Aを恐喝の疑いで逮捕した。
少年Aが逮捕されたとの知らせを受けた家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~恐喝罪と強盗罪の区別~
刑法249条1項では、「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」として、(1項)恐喝罪が定められています。
同罪は、「第三十七章 詐欺及び恐喝の罪」の中に定められており、財産犯の中でも詐欺罪と同じく交付罪として位置付けられます。
さらに、恐喝罪は、詐欺罪のみならず、強盗罪との区別が重要となります。
というのも、恐喝罪における「(人を)恐喝して」とは、暴行・脅迫を意味するものとされており、これは236条における強盗罪の「暴行又は脅迫」と手段として共通するからです。
もっとも、いずれの罪も暴行・脅迫を手段とするものの、恐喝罪では人を畏怖させる程度で足りるのに対し、強盗罪では人の反抗を抑圧する程度にまで達している必要があります。
つまり、本件における脅迫行為が人の反抗を抑圧する程度といえる場合には、恐喝罪よりも重い強盗罪が成立する可能性があるのです。
(暴行・)脅迫が反抗を抑圧するに足りる程度といえるかは、社会通念をもとに客観的に判断されることになりますが、その際には(暴行・)脅迫行為の危険性が重要な判断要素となると解されています。
本件では、「生き埋めにするぞ」と殺害を予告するような言動の脅迫行為が行われています。
しかし、この脅迫行為に際しては、凶器やそれに類する物が使われているわけではなく、脅迫行為それ自体の危険性はさほど高くないと考えられます。
したがって、原則として本件脅迫行為のみでは、人の反抗を抑圧する程度の脅迫行為とまではいえないと考えるのが通常です。
他方で、人を畏怖する足りる程度の脅迫行為とはいえることから、この脅迫行為によって現金をおどし取った行為には、恐喝罪が成立することになると考えられるのです。
~少年事件における処分~
少年事件においては、刑事処分ではなく、保護処分によって対処がされることが原則になります。
保護処分とは、刑罰ではなく少年の健全育成を目的とする処分のことをいいます。
保護処分には、保護観察や少年院送致、児童自立支援施設又は児童養護施設送致が含まれます。
どのような保護処分が相当であるかは家庭裁判所の審判によって判断されることから、弁護士としては、そもそも審判開始が不相当であることや保護処分の必要がないこと(不処分)などの主張も含め少年の要保護性を考慮した弁護活動を行うことになります。
このように、成人の刑事事件と少年事件では手続や処分が大きく異なることから、少年事件の経験を十分に積んだ弁護士による弁護活動が極めて重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、恐喝事件を含む少年事件・刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
少年事件においては、少年事件の手続を十分に理解した弁護士でなければ十全な弁護活動を行うことは難しく、専門性を有する弁護士に依頼するメリットは大きいといえます。
恐喝事件で逮捕されてしまった少年のご家族等は、24時間対応の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までまずはご相談ください。
もうすぐ成人というときの刑事事件
年齢切迫少年について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
千葉県香取市に住む大学生のA(19歳)は、大学に行くために電車を利用していました。
電車は混みあっており、Aの近くには女性が立っていました。
そこで、Aの手が女性の臀部に触れてしまい、我慢できなくなったAは、そのまま女性の臀部を触り続けました。
女性の異変に気付いた周囲の乗客がAを取り押さえ、Aは痴漢の疑いで千葉県香取警察署で取調べを受けることになりました。
Aは逮捕されることはなく、事件は在宅事件で進行していくことになりましたが、2か月たっても事件の進行がなく、Aはもう少しで20歳になってしまうと焦り出しました。
今後どうすべきか迷ったAは、両親と共に刑事事件に強い弁護士の無料法律相談へ行くことにしました。
(この事例はフィクションです)
~年齢切迫少年~
20歳未満の者が刑事事件を起こしてしまった場合、少年事件として成人とは異なった流れで事件は進行していき、基本的には家庭裁判所で審判を受けることになります。
少年審判で受ける保護観察や少年院送致といった処分については前科とはなりません。
しかし、いわゆる逆送という制度があり、一定の重大事件や審判の終了までに成人を迎えてしまった場合などは事件が検察庁へ戻され、成人と同じ手続きで裁判が行われ、刑事罰に問われる可能性があるのです。
今回の事例のAはもうすぐ20歳を迎えてしまうということで、年齢超過により逆送されてしまう可能性があります。
このように、もうすぐ20歳になるという少年は年齢切迫少年と呼ばれます。
年齢超過による逆送については以下のように規定されています。
少年法第19条第2項
「家庭裁判所は、調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したときは、決定をもって、事件を管轄する地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない」
少年法第23条第3項
「第19条第2項の規定は、家庭裁判所の審判の結果、本人が20歳以上であることが判明した場合に準用する」
原則として逆送された事件については起訴されてしまうことになります。(少年法第45条5号)が、年齢超過で逆送された場合はこの規定は準用されておらず、不起訴となる可能性があります。(少年法第45条の2)
~年齢切迫少年の弁護活動~
年齢切迫少年が刑事事件を起こしてしまった場合、弁護士は少年審判による事件解決を目指します。
まず、刑事事件では事件の進行の速度は事件毎に大きく異なってきます。
逮捕されて、身体拘束を受けている、いわゆる身柄事件では、拘束期間などに法律上の規定があるため、事件の進行は早くなります。
しかし、今回の事例のように身体拘束を受けずに事件が進行していくいわゆる在宅事件では一般的に身体拘束を受けている事件よりも事件の進行は遅くなってしまいます。
在宅事件では、極端にいえば、時効までに手続きを終えればよいので、担当する警察署の状況によっては、1年以上事件が進行しない、ということも考えられるのです。
そこで、年齢切迫少年の弁護活動を依頼された弁護士は、警察や検察といった捜査機関や家庭裁判所に対して、催促や確認を頻繁に行っていくことで、なんとか少年が20歳を迎えるまでに事件が終了するように活動していきます。
年齢切迫の状況では弁護士の活動が重要となりますので、無料法律相談や初回接見で弁護士の見解を聞くようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件、少年事件に強い弁護士が多数在籍しています。
無料法律相談、初回接見のご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
少年が強盗致傷で逮捕・裁判員裁判における弁護活動
少年事件で逆送になった場合やその後の裁判員裁判を見越した弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
大阪府柏原市に住む少年A(18歳)は、Xらとともに、顔見知りのVを呼出し、殴る蹴るの暴行を加えて現金などの所持品を無理やり奪った。
そしてVは、この暴行により、全治2週間の怪我を負った。
大阪府柏原警察署の警察官は、少年Aらを強盗致傷の疑いで逮捕 した。
少年Aが逮捕されたとの知らせを受けた家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~少年事件でも裁判員裁判?~
少年AはXらと共謀して、Vの所持品を奪い怪我まで負わせてしまっています。
本稿では、「強盗が、人を負傷させたとき」(刑法240条前段 )として、強盗致傷(強盗傷人)罪が成立しうるケースを想定して、その後少年Aが少年事件・刑事事件として手続上どのように扱われることになるのかについて解説したいと思います。
少年事件は通常、家庭裁判所送致を経て、少年審判などの少年法が定める特別の手続に服すことになります。
他方で少年法は、検察官送致 (いわゆる逆送)について定めています(少年法20条)。
同条2項は、被害者を死亡させた事件については原則家裁からの逆送をしなければならない旨を定めていますが、1項は「刑事処分を相当と認めるとき」にも逆送しなければならないと定めています。
したがって、まず弁護士としては、本件の逆送を回避するための弁護活動を行うことが考えられます。
なぜならば、裁判員法2条1項1号は「無期の懲役」を裁判員裁判対象事件と定めていることから、「無期」の「懲役」を含む強盗致傷事件(刑法240条前段)は、原則として裁判員裁判として行われることになります。
これは少年にとって大きな負担であり、逆送されなければ、 家裁の少年審判等に付されるため、裁判員裁判という市民を含んだ裁判という形で裁かれることはないため逆送を回避する弁護活動が重要になるのです。
仮に逆送された場合には、基本的に成人の刑事事件と同じ手続を辿ることになります。
そして本件は、逆送されることも十分考えらえるケースであることから、以下では裁判員裁判を見越した重要な手続についても解説いたします。
~逆送後の弁護士の弁護活動等について~
裁判員裁判実施に先立つこと3年半、2005年末から刑事裁判においてはこれに勝るとも劣らない重要な手続・制度が導入・実施されてします。
それは、公判前整理手続(刑事訴訟法316条の2以下)と呼ばれる争点や証拠を事前に整理するため手続です。
一般的にはあまり耳馴染みのない手続・制度と思われますが、弁護士(弁護人)・被告人にとっては特に重要な制度に他なりません(元来は2つの制度は密接不可分のものだったのですが、後者は現在では独立した重要性を有するに至っています。ここではその経緯等の詳細な解説は省きます)。
そして、弁護士(弁護人)側にとって、公判前整理手続において最も重要と考えられているのが、証拠開示の制度です。
これまで、強制的な捜査権限を行使できる検察官側と、そのような権力・権限を持たない弁護士(弁護人)側では証拠収集能力の点であまりにも大きな格差があるといわれてきました。
この点、公判前整理手続では、請求によって類型証拠や主張関連証拠等といった証拠が事前に弁護士(弁護人)側に開示されることが法定された点で画期的といえます。
本件が逆送された場合、裁判員裁判対象事件であることから、義務的に公判前整理手続に付されることになります(裁判員法49条)。
したがって、弁護士としては裁判員裁判に備えて、かかる手続・制度を十全に活用することにより少年の不利益を最小限化するための弁護活動を行っていくことになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、逆送事件も含む少年事件など刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
強盗致傷事件で逮捕されてしまった少年のご家族等は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお電話ください。
少年が遺失物横領で逮捕・弁護士による勾留回避活動
少年が遺失物横領(占有離脱物横領)で逮捕された事例を題材に、弁護士による勾留回避活動等ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
神戸市灘区に済む少年A(17歳)は、Vが電車を利用するために駅近くの路上に止めていた電動自転車(鍵を取り忘れており、そのまま走行可能)を発見し、そのまま所有者Vに無断で利用していた。
Aに職務質問をし防犯登録を確認した兵庫県灘警察署の警察官は、Aを遺失物横領(占有離脱物横領)の疑いで逮捕した。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。
~少年は窃盗犯か横領犯か~
少年Aは他人の自転車を無断で利用し、警察官に逮捕されています。
本件では、そもそも何故窃盗罪ではなく横領罪が問題になるのか疑問を持たれるかもしれません。
そこで、まず横領罪についての刑法の条文(第38章)を見てみましょう。
刑法は252条以下に横領罪についての規定を置いており、典型的な単純横領罪(252条)や業務上横領罪(253)などについて定めています。
本件では、「自己の占有する他人の物」を横領したケースではないため、これらについては当てはまらず、問題となるのは次の254条の規定です。
254条は、「遺失物、漂流物その他 占有を離れた他人の物を横領した者」を「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」旨を定めています。
ここにいう「遺失物」や「漂流物」は「占有を離れた他人の物」の例示だと考えられており、結局は「占有を離れた他人の物を横領した者」を処罰する規定だといえます。
つまり、窃盗罪(235条)が他人の占有を侵害した者を処罰する規定であるのに対し、遺失物等横領罪(以下、占有離脱物横領罪)は占有が失われている以上所有権そのもの保護する規定であることになります。
したがって、窃盗罪が成立するのかあるいは占有離脱物横領罪が成立するのかについては、客体である物に被害者の占有が認められるかどうかが大きな分水嶺となるのです。
判例実務上、占有を有無は、占有の事実および占有の意思があるかどうかによって判断されると解されています。
そしてこの占有の有無は、Aが他人の物を無断で利用を開始した時点において判断されることになります。
本件では、Vは電動自転車を駐車場・駐輪場等ではなく路上に止めていたこと、その場所は駅の近くでありVは電車を使い一定以上の遠方に移動していると思われることから、もはやVの占有を離れてしまったものとみることが可能と考えられます。
このように考えた場合、上記少年Aの行為は、所有者でなければできないような態様の「横領」行為といえ、占有離脱物横領罪が成立することになります。
~少年事件における勾留回避の弁護活動~
通常逮捕された被疑者は、その後検察官に送致され、勾留というプラス10日間(延長を含めると最大20日間)の身体拘束がされるかどうかの判断がなされることになります。
少年事件では、早速この段階で通常の刑事事件とは異なる対応・判断が必要になってきます。
勾留の要件については刑事訴訟法60条1項(207条1項が準用)に規定がありますが、少年事件ではこの要件に加えて「やむを得ない場合」(少年法43条3項)でなければ、検察官による勾留請求は認められません。
特に本件のような比較的軽微な事件については、この要件を含め勾留要件該当性を争うことによって勾留回避を目指すことになります。
したがって、素早く検察官に面談するなどして、少年の身体拘束期間の最小化を図る弁護活動が重要になるのです。
また、少年事件では早期に家庭裁判所送致がされることもあることから、この点などに関してもケアする必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、遺失物横領(占有離脱物横領)事件を含む少年事件を専門的に取り扱っている法律事務所です。
遺失物横領(占有離脱物横領)事件で逮捕された少年のご家族は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。
名誉毀損で取調べ・少年事件における取調べ対応は弁護士に相談
少年が名誉毀損で取り調べられることになった事例を題材に,取調べに対する対応などについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
京都府向日市に住む少年A(17歳)は、友人から聞いた噂話を鵜呑みにして、著名人Vが犯罪に関わっているとの書き込みをSNSで繰り返していた。
Vが被害届を提出したことを契機に捜査を開始した京都府向日町警察署の警察官は、少年Aを名誉毀損の疑いで取り調べることにした。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~インターネット上の名誉毀損~
昨今、インターネット上の名誉毀損などに端を発した様々な事件・ニュースが取り沙汰されています。
そのような状況ですから、名誉毀損行為が民事上の責任のみならず、場合によって刑事責任まで負うことになるということは多くの人がご存知でしょう。
そして、このような名誉毀損的な行為は、ネット社会の発達に伴い未成年者が行うことも少なくありません。
では、どのような場合に刑事上の責任を負うのか、上記のインターネット上の投稿事例から考えてみたいと思います。
まず、刑法は230条1項において、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」ことを規定しています。
「公然」とは、不特定または多数人が認識できる状態をいいと解されています。
インターネット上の書き込み等は基本的には全世界の人間が閲覧可能であり、また少数から多数へ一挙に伝播する可能性があるというインターネットの性質に鑑みても、これに当たることが原則になると思われます。
「事実を摘示し」とは、本条項が保護する名誉(社会的名誉)を侵害しうる程度に具体的である必要があるとされています。
本件では、少年AはVという特定人に対して犯罪に関わっている旨をSNSに投稿しています。
この投稿が具体的な犯罪事実を特定している等の具体性を有するものであれば「事実を摘示」したといえるため、231条に規定されている侮辱罪とは区別されることになります。
また、「その事実の有無にかかわらず」という点も、見逃してはならないポイントです。
よくありがちがな誤解として、本当のことを指摘している場合には名誉毀損罪には該当しないというものがあります。
しかし、この文言を見れば分かる通り、そのようなことはありません。
上述のように本条項が保護するのは社会的名誉(外部的名誉)であり、その摘示した事実が虚偽か真実であるかは原則として問題とならないのです。
なお、同条2項は、「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない」としており、対象者が「死者」の場合には、虚偽の事実による名誉毀損のみが犯罪として成立することになる点に注意が必要です(逆に言えば、2項の存在からも1項の名誉毀損が虚偽であるか真実であるかを問わない規定であることは明らかであるといえるでしょう)。
本件では、噂話であり虚偽の可能性が高いとも考えられますが仮にこれが真実であったとしても、本罪の成立は妨げられません。
したがって、本罪では社会的名誉を侵害する抽象的な危険さえあれば「名誉を毀損した」といえる以上、Aの行為には刑法230条1項の罪が成立する可能性が高いといえるでしょう。
なお、次条の230条の2において、名誉毀損における犯罪の成立阻却事由が定められています。
しかし、この事実やその錯誤が認められる可能性は低いと言わざるを得ず、弁護士と相談する際にも一考に値しますが、あまり甘い見通しを持つことは禁物です。
~少年事件における取調べ~
少年事件における捜査官による取調べは、成人の刑事事件と基本的に変わるところはありません。
したがって、少なくとも捜査段階では少年であろうが、法律上は成人と同じ犯罪の「被疑者」(容疑者)であり、時には苛烈な取調べを受ける可能性もあります。
しかし、「少年」とは「20歳に満たない者」(少年法2条1項)であり、まだまだ人間として発展過程の未熟な存在と言わざるを得ません。
そのような少年に正確な法律知識があることなどほとんど皆無に等しく、取調べに対し適切に対応できる可能性もまた極めて乏しいといえます。
したがって、本件のように罪を犯した疑いで警察に呼び出された場合などは、実際に取調べを受ける前に、必ず専門家である弁護士のアドバイスを仰ぐべきです。
少年事件では、上記のような事情に加えて、特に捜査段階以降は少年法特有の手続が適用されることから、専門家たる弁護士それも少年事件の経験が豊富な弁護士に相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件の経験が豊富な弁護士が多数在籍する刑事事件専門の法律事務所です。
名誉毀損事件で取調べを受けることになってしまった少年のご家族等は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までお早目にお問い合わせください。
少年が同級生を傷害・正当防衛主張の弁護活動
同級生に怪我を負わせてしまい傷害事件で少年が逮捕されてしまった事件を題材に、少年事件における正当防衛の主張などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
福岡県北九州市に住む少年AとVはともに同じ高校に通っていたが、常日頃からそりが合わなかった。
ある日の放課後、人のまばらな校内において、少年AはVを高さ約2メートルの階段の下の踊り場に突き落とし、足などを骨折する怪我を負わせた。
福岡県小倉南警察署の警察官は、少年Aを傷害の疑いで逮捕した。
もっとも、これはVが校内にあった金属製の棒で少年Aに殴りかかろうとしたことから、これをかわした少年Aが反撃行為として行ったものであることが発覚した。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~少年同士の喧嘩で正当防衛が成立?~
少年AはVを階段下に突き落とすという傷害行為(傷害罪:刑法204条)によって逮捕されてしまっています。
もっとも、これはVからの攻撃に対し、少年Aによる反撃行為にすぎません。
このような場合に、少年AのVに対する行為に正当防衛が成立する余地はないのでしょうか。
結論めいたことから書いてしまうと、少年Aの行為に正当防衛が成立する可能性は必ずしも高くないと言わざるを得ません。
刑法第1編第7章(「犯罪の不成立及び刑の減免」)には、36条1項の正当防衛の他にも、より成立要件の厳しい緊急避難(刑法37条1項)などの犯罪の成立阻却事由が規定されています。
にも関わらず、諸外国などと比べてもわが国における正当防衛成立のハードルは非常に高いと言われています。
勿論、弁護士としては少年の利益に鑑み、正当防衛の主張も視野に入れつつ弁護活動を行っていくことになります。
他方で、36条は2項において「情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」と、いわゆる過剰防衛の規定を置いています(ただし、少年事件の場合には原則として刑が科されるわけではないため、審判などの際の考慮事項と位置付けられることにもなるでしょう)。
したがって、36条1項が成立するか否かだけでなく2項の対象となり得るかという点でも、正当防衛の成立要件を検討することは非常に重要です。
本件ではVの方から少年Aに殴りかかっていること等から、少年Aの行為が「急迫不正の侵害」に対して「自己……の権利を防衛するため」の行為であったことは、あまり問題とはならないでしょう。
問題は、少年Aの行為が「やむを得ずにした行為」であるかどうかです。
「やむを得ずにした行為」といえるためには、防衛行為として必要最小限(最判昭和44年12月4日参照)であることが求められます。
ここで問題となるのは行為(手段)であり、結果の比較ではないことに注意が必要です。
これを本件についてみるに、Vの行為は金属製の器具での攻撃であり極めて危険な行為であることは間違いありません。
しかし、少年AにはVの攻撃をかわす余裕があり(ただし、正当防衛者には回避義務があるわけではありません)、Vの攻撃から身を守るのにVを階段下に突き落とす必要まであったかは争点とならざるを得ないでしょう。
したがって、少年Aの防衛行為は、必要最小限度であったとまではいえない可能性も十分あります。
もっとも、その場合でも少年Aの行為は「やむを得ずにした」行為とはいえないだけであり、この要件を満たさずとも36条2項によって過剰防衛が成立します。
~退学処分等の回避のための弁護活動・学校への対応~
少年事件で逮捕されてしまった場合、少年が在籍している学校から退学処分等の不利益を受けることを回避することが極めて重要になってきます。
本件もそうですが、高校以降はいわゆる義務教育ではないことから、退学等の処分を受ける可能性は義務教育段階と比べ高くなってしまいます。
つまり、逮捕されてしまった事件そのものに関する処分以外の不利益を避けるための弁護活動も、少年事件では大きなウェイトを占めるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
傷害事件で逮捕されてしまった少年のご家族等は、24時間365日対応のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお電話ください。
少年が窃盗目的の建造物侵入で逮捕・少年事件における特色
少年が建造物侵入で逮捕されてしまった事例を題材に、少年事件における特色等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
東京都墨田区に住む少年A(19歳・男性)は、自身が入会していたスポーツジムの女子更衣室に無断で立ち入った。
警視庁向島警察署の警察官は、少年Aを建造物侵入の疑いで逮捕した。
なお、この少年Aの立ち入りは、室内にある女性の衣服を窃取する 目的で行われたものだった。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~窃盗目的での更衣室への侵入~
本件では、スポーツジムから警察への通報を受け、少年Aの逮捕に至ったものと思われます。
たしかに少年Aの行為は、無断で女子更衣室に立ち入るものであり、かつ窃盗目的を有する点で違法な行為であることは、法律に明るくない方でも直感的に理解できるのではないでしょうか。
もっとも、刑法犯それも建造物侵入罪が成立するという点で、違和感を持たれた方もいるかもしれません。
この点に関して、刑法130条をみると、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と、住居侵入罪を含め一定の立ち入り行為を処罰する旨を定めています。
このように刑法は、一つ条文に複数の構成要件(犯罪類型)を定めており、問題となる行為がどの構成要件に当たるのかを正確に把握する必要があります。
本件では、少年Aの更衣室への立ち入りが、「人の看守する……建造物……に侵入し」た行為といえるか、という点で建造物侵入罪の成否が問題となるのです。
本件施設が「人の看守する……建造物」に当たる点に争いはないと考えられ、問題となる余地はないでしょう。
そして本件更衣室も、かかる建造物の一部であり、客体としての「建造物」 に当たることもまた争いはないと思われます。
そこで本件行為が、刑法130条前段における中核的要件である「侵入」といえるかが問題となります。
判例及び通説的見解によると、「侵入」とは、管理権者(や住居権者)の意思に反する立ち入りをいうと解されています。
これを本件についてみると、たしかに、少年Aは侵入した更衣室を有する施設(スポーツジム)の会員ではあります。
しかし、男性として施設に入会している少年Aが、女性会員が使う女子更衣室にまで立ち入ることが許されていると考えることは困難でしょう。
しかも、少年Aの立ち入りは女性会員の衣服や下着を盗む目的で行われており、本施設の管理権者の意思に反する立ち入りであることは比較的明らかな事例といえます。
したがって、少年Aの立ち入り行為には、建造物侵入罪が成立することになります。
なお、本件は上述のとおり、少年Aは下着などの衣服の窃盗目的で更衣室に侵入しています。
例えば、仮に本件が盗撮のための機器を設置する目的での侵入であったとしても、管理権者の意思に反する侵入であることに変わりはない以上、建造物侵入罪が成立することは論を俟たないでしょう。
~少年事件と全件送致主義~
成人であれば通常の刑事事件として、逮捕後に勾留などを経て、起訴されるかどうかつまり刑事裁判となるかどうかが検察官によって判断されることになります。
これに対し、少年事件では、全件家裁送致主義(少年法41、42条)が採られており、通常の刑事事件における起訴・不起訴の段階に相当する場面において、原則として家庭裁判所に事件が送られることになっていることに注意が必要です。
通常の刑事事件では検察官の起訴裁量は大きいものとされており、同様の原則は採られていません。
このように、少年事件では成人と同じ罪を犯した場合であっても、通常の成人の刑事事件とは異なる事件処理が行われることに最大限の注意を払う必要があるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
建造物侵入事件で逮捕されてしまった少年のご家族等は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。
少年が詐欺や文書偽造で警察署で取調べ・弁護士によるケア活動
少年が詐欺事件等に関わってしまった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
東京都三鷹市に住む少年Aは、家電量販店において、とあるゲーム機器など欲しさから反社会的勢力のBから借りたクレジットカードで、同ゲーム機器などを購入した。
購入の際には、利用伝票にも上記Bの名前を書き、同店員に渡していた。
警視庁三鷹警察署の警察官は、少年Aを詐欺などの疑いで署まで同行し、取調べを行った。
少年Aとその家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~少年による詐欺事件で警察が取調べ~
本件では他人のクレジットカードを使って商品を購入した行為に犯罪が成立するのかが問題となるわけですが、その前提として利用伝票を偽造した行為も見逃せません。
刑法は159条1項後段にて、「行使の目的で」「偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者」を、有印 私文書偽造罪として処罰することを定めています。
したがって、少年Aが利用伝票をBと他人の名前を使用し偽造した行為に同罪が成立することになります。
さらに、これを実際に「行使した者」は、同行使罪(刑法161条)が成立することにも注意が必要です。
次に、少年AがBのクレジットカードを使って商品を購入したことが246条1項の詐欺罪とならないかが問題となります。
刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者」を詐欺罪とすると、上記の文書偽造罪とは打って変わってシンプルな規定になっています。
では、この条文を参照しながら、少年Aに詐欺罪が成立するのか検討していきましょう。
とはいえ、法解釈をするまでもなく、少年Aが自らをBと偽ってクレジットカードを使って商品を購入したことは明らかでしょう。
しかし、ここからが問題で、少年AはBからクレジットカードを盗んだわけでもなく、借りたにすぎません。
このような場合にも、少年Aは店側の「人を欺」いた(欺く行為)といえるのでしょうか。
つまり、財産犯であるはずの詐欺罪なのに、少なくとも店側には何ら損害は生じていないということもできるのです。
この点、詐欺罪にいう欺く行為は、「交付の判断の基礎となる重要な事項」 (最決平成22年7月29日参照)を偽ったか否かによって判断されています。
本件のような家電量販店でも、支払能力などの点においてクレジットカードを使用する者が本人であるかどうかの確認が行われており、このような確認を偽る行為は重要事項を偽るものとして、欺く行為があったものと考えられます。
したがって、「人を欺」いた(欺く行為)により、店員を錯誤に陥れた上でゲーム機器等の商品を「交付させた」ものとして、少年Aの行為に詐欺罪が成立することになるでしょう。
~少年事件と更生~
少年事件に関わってしまった人間というと、学校などでも反社会的であり、比較的犯罪性向が高い人間が多いと思われがちかもしれません。
たしかに、本件の少年Aも反社会的勢力と関わり合いを持った人物でした。
しかし、犯罪に関わってしまった少年には、当然初犯の人間や非粗暴犯も少なくありません。
したがって、少年事件では、保護処分あるいは不処分など一定の終着点を見定めつつ、どう少年をケアしていくかも重要な課題となってきます。
特に仮に初犯であっても、一度少年事件と関わり何らかの処分・手続の対象となってしまうと、普通の社会からドロップアウトしてしまい、暴力団や反社会的勢力等との関係を断ち切れなくなってしまうケースも少なくないからです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件を含む少年事件を専門に扱っている法律事務所です。
詐欺等で少年事件に関わってしまった少年およびそのご家族は、通話料などがかからない弊所フリーダイヤル(0120-631-881)に いつでもお電話ください。
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