少年が窃盗目的の建造物侵入で逮捕・少年事件における特色

2021-01-08

少年が建造物侵入で逮捕されてしまった事例を題材に、少年事件における特色等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

東京都墨田区に住む少年A(19歳・男性)は、自身が入会していたスポーツジムの女子更衣室に無断で立ち入った。
警視庁向島警察署の警察官は、少年Aを建造物侵入の疑いで逮捕した。
なお、この少年Aの立ち入りは、室内にある女性の衣服を窃取する 目的で行われたものだった。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~窃盗目的での更衣室への侵入~

本件では、スポーツジムから警察への通報を受け、少年Aの逮捕に至ったものと思われます。
たしかに少年Aの行為は、無断で女子更衣室に立ち入るものであり、かつ窃盗目的を有する点で違法な行為であることは、法律に明るくない方でも直感的に理解できるのではないでしょうか。
もっとも、刑法犯それも建造物侵入罪が成立するという点で、違和感を持たれた方もいるかもしれません。

この点に関して、刑法130条をみると、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と、住居侵入罪を含め一定の立ち入り行為を処罰する旨を定めています。
このように刑法は、一つ条文に複数の構成要件(犯罪類型)を定めており、問題となる行為がどの構成要件に当たるのかを正確に把握する必要があります。
本件では、少年Aの更衣室への立ち入りが、「人の看守する……建造物……に侵入し」た行為といえるか、という点で建造物侵入罪の成否が問題となるのです。

本件施設が「人の看守する……建造物」に当たる点に争いはないと考えられ、問題となる余地はないでしょう。
そして本件更衣室も、かかる建造物の一部であり、客体としての「建造物」 に当たることもまた争いはないと思われます。
そこで本件行為が、刑法130条前段における中核的要件である「侵入」といえるかが問題となります。
判例及び通説的見解によると、「侵入」とは、管理権者(や住居権者)の意思に反する立ち入りをいうと解されています。
これを本件についてみると、たしかに、少年Aは侵入した更衣室を有する施設(スポーツジム)の会員ではあります。
しかし、男性として施設に入会している少年Aが、女性会員が使う女子更衣室にまで立ち入ることが許されていると考えることは困難でしょう。
しかも、少年Aの立ち入りは女性会員の衣服や下着を盗む目的で行われており、本施設の管理権者の意思に反する立ち入りであることは比較的明らかな事例といえます。
したがって、少年Aの立ち入り行為には、建造物侵入罪が成立することになります。

なお、本件は上述のとおり、少年Aは下着などの衣服の窃盗目的で更衣室に侵入しています。
例えば、仮に本件が盗撮のための機器を設置する目的での侵入であったとしても、管理権者の意思に反する侵入であることに変わりはない以上、建造物侵入罪が成立することは論を俟たないでしょう。

~少年事件と全件送致主義~

成人であれば通常の刑事事件として、逮捕後に勾留などを経て、起訴されるかどうかつまり刑事裁判となるかどうかが検察官によって判断されることになります。
これに対し、少年事件では、全件家裁送致主義(少年法41、42条)が採られており、通常の刑事事件における起訴・不起訴の段階に相当する場面において、原則として家庭裁判所に事件が送られることになっていることに注意が必要です。
通常の刑事事件では検察官の起訴裁量は大きいものとされており、同様の原則は採られていません。
このように、少年事件では成人と同じ罪を犯した場合であっても、通常の成人の刑事事件とは異なる事件処理が行われることに最大限の注意を払う必要があるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
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