少年が遺失物横領で逮捕・弁護士による勾留回避活動

2021-01-29

少年が遺失物横領(占有離脱物横領)で逮捕された事例を題材に、弁護士による勾留回避活動等ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

神戸市灘区に済む少年A(17歳)は、Vが電車を利用するために駅近くの路上に止めていた電動自転車(鍵を取り忘れており、そのまま走行可能)を発見し、そのまま所有者Vに無断で利用していた。
Aに職務質問をし防犯登録を確認した兵庫県灘警察署の警察官は、Aを遺失物横領(占有離脱物横領)の疑いで逮捕した。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。

~少年は窃盗犯か横領犯か~

少年Aは他人の自転車を無断で利用し、警察官に逮捕されています。
本件では、そもそも何故窃盗罪ではなく横領罪が問題になるのか疑問を持たれるかもしれません。
そこで、まず横領罪についての刑法の条文(第38章)を見てみましょう。

刑法は252条以下に横領罪についての規定を置いており、典型的な単純横領罪(252条)や業務上横領罪(253)などについて定めています。
本件では、「自己の占有する他人の物」を横領したケースではないため、これらについては当てはまらず、問題となるのは次の254条の規定です。
254条は、「遺失物、漂流物その他 占有を離れた他人の物を横領した者」を「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」旨を定めています。
ここにいう「遺失物」や「漂流物」は「占有を離れた他人の物」の例示だと考えられており、結局は「占有を離れた他人の物を横領した者」を処罰する規定だといえます。
つまり、窃盗罪(235条)が他人の占有を侵害した者を処罰する規定であるのに対し、遺失物等横領罪(以下、占有離脱物横領罪)は占有が失われている以上所有権そのもの保護する規定であることになります。
したがって、窃盗罪が成立するのかあるいは占有離脱物横領罪が成立するのかについては、客体である物に被害者の占有が認められるかどうかが大きな分水嶺となるのです。

判例実務上、占有を有無は、占有の事実および占有の意思があるかどうかによって判断されると解されています。
そしてこの占有の有無は、Aが他人の物を無断で利用を開始した時点において判断されることになります。
本件では、Vは電動自転車を駐車場・駐輪場等ではなく路上に止めていたこと、その場所は駅の近くでありVは電車を使い一定以上の遠方に移動していると思われることから、もはやVの占有を離れてしまったものとみることが可能と考えられます。
このように考えた場合、上記少年Aの行為は、所有者でなければできないような態様の「横領」行為といえ、占有離脱物横領罪が成立することになります。

~少年事件における勾留回避の弁護活動~

通常逮捕された被疑者は、その後検察官に送致され、勾留というプラス10日間(延長を含めると最大20日間)の身体拘束がされるかどうかの判断がなされることになります。
少年事件では、早速この段階で通常の刑事事件とは異なる対応・判断が必要になってきます。
勾留の要件については刑事訴訟法60条1項(207条1項が準用)に規定がありますが、少年事件ではこの要件に加えて「やむを得ない場合」(少年法43条3項)でなければ、検察官による勾留請求は認められません。
特に本件のような比較的軽微な事件については、この要件を含め勾留要件該当性を争うことによって勾留回避を目指すことになります。
したがって、素早く検察官に面談するなどして、少年の身体拘束期間の最小化を図る弁護活動が重要になるのです。
また、少年事件では早期に家庭裁判所送致がされることもあることから、この点などに関してもケアする必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、遺失物横領(占有離脱物横領)事件を含む少年事件を専門的に取り扱っている法律事務所です。
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