名誉毀損で取調べ・少年事件における取調べ対応は弁護士に相談

2021-01-22

少年が名誉毀損で取り調べられることになった事例を題材に,取調べに対する対応などについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

京都府向日市に住む少年A(17歳)は、友人から聞いた噂話を鵜呑みにして、著名人Vが犯罪に関わっているとの書き込みをSNSで繰り返していた。
Vが被害届を提出したことを契機に捜査を開始した京都府向日町警察署の警察官は、少年Aを名誉毀損の疑いで取り調べることにした。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~インターネット上の名誉毀損~

昨今、インターネット上の名誉毀損などに端を発した様々な事件・ニュースが取り沙汰されています。
そのような状況ですから、名誉毀損行為が民事上の責任のみならず、場合によって刑事責任まで負うことになるということは多くの人がご存知でしょう。
そして、このような名誉毀損的な行為は、ネット社会の発達に伴い未成年者が行うことも少なくありません。
では、どのような場合に刑事上の責任を負うのか、上記のインターネット上の投稿事例から考えてみたいと思います。

まず、刑法は230条1項において、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」ことを規定しています。
「公然」とは、不特定または多数人が認識できる状態をいいと解されています。
インターネット上の書き込み等は基本的には全世界の人間が閲覧可能であり、また少数から多数へ一挙に伝播する可能性があるというインターネットの性質に鑑みても、これに当たることが原則になると思われます。
「事実を摘示し」とは、本条項が保護する名誉(社会的名誉)を侵害しうる程度に具体的である必要があるとされています。
本件では、少年AはVという特定人に対して犯罪に関わっている旨をSNSに投稿しています。
この投稿が具体的な犯罪事実を特定している等の具体性を有するものであれば「事実を摘示」したといえるため、231条に規定されている侮辱罪とは区別されることになります。

また、「その事実の有無にかかわらず」という点も、見逃してはならないポイントです。
よくありがちがな誤解として、本当のことを指摘している場合には名誉毀損罪には該当しないというものがあります。
しかし、この文言を見れば分かる通り、そのようなことはありません。
上述のように本条項が保護するのは社会的名誉(外部的名誉)であり、その摘示した事実が虚偽か真実であるかは原則として問題とならないのです。
なお、同条2項は、「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない」としており、対象者が「死者」の場合には、虚偽の事実による名誉毀損のみが犯罪として成立することになる点に注意が必要です(逆に言えば、2項の存在からも1項の名誉毀損が虚偽であるか真実であるかを問わない規定であることは明らかであるといえるでしょう)。
本件では、噂話であり虚偽の可能性が高いとも考えられますが仮にこれが真実であったとしても、本罪の成立は妨げられません。
したがって、本罪では社会的名誉を侵害する抽象的な危険さえあれば「名誉を毀損した」といえる以上、Aの行為には刑法230条1項の罪が成立する可能性が高いといえるでしょう。

なお、次条の230条の2において、名誉毀損における犯罪の成立阻却事由が定められています。
しかし、この事実やその錯誤が認められる可能性は低いと言わざるを得ず、弁護士と相談する際にも一考に値しますが、あまり甘い見通しを持つことは禁物です。

~少年事件における取調べ~

少年事件における捜査官による取調べは、成人の刑事事件と基本的に変わるところはありません。
したがって、少なくとも捜査段階では少年であろうが、法律上は成人と同じ犯罪の「被疑者」(容疑者)であり、時には苛烈な取調べを受ける可能性もあります。
しかし、「少年」とは「20歳に満たない者」(少年法2条1項)であり、まだまだ人間として発展過程の未熟な存在と言わざるを得ません。
そのような少年に正確な法律知識があることなどほとんど皆無に等しく、取調べに対し適切に対応できる可能性もまた極めて乏しいといえます。
したがって、本件のように罪を犯した疑いで警察に呼び出された場合などは、実際に取調べを受ける前に、必ず専門家である弁護士のアドバイスを仰ぐべきです。
少年事件では、上記のような事情に加えて、特に捜査段階以降は少年法特有の手続が適用されることから、専門家たる弁護士それも少年事件の経験が豊富な弁護士に相談することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件の経験が豊富な弁護士が多数在籍する刑事事件専門の法律事務所です。
名誉毀損事件取調べを受けることになってしまった少年のご家族等は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までお早目にお問い合わせください。

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