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少年の殺人未遂事件における弁護活動

2020-01-05

少年の殺人未遂事件における弁護活動

今回は、少年が殺人未遂事件を起こしてしまった場合における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

中学生のAくん(15歳)は、東京都台東区に住む同級生のVの胸をナイフで刺し、殺害しようとした疑いで警視庁本富士警察署に現行犯逮捕されてしまいました。
Vに対する怨恨が動機のようです。
Aくんの親は大変ショックを受けましたが、Aくんの将来に悪影響を与えないように弁護士を依頼することを検討しています。
少年事件で弁護士を頼むメリットとして、どのようなものがあるのでしょうか。(フィクションです)

~殺人未遂事件について~

殺人の実行に着手したものの、これを遂げなかった場合に、殺人未遂罪が成立します。
殺害しようとしたが、相手を傷つける前に犯行を止められた、あるいは、相手を傷つけてしまったが、相手は死亡しなかった、という場合が典型例となります。

ケースのAくんは、殺意を持ってVの胸を刺し殺害しようとしたが、これを遂げなかった、というものです。
このような場合に殺人未遂罪が成立する可能性は極めて高いと思われます。

~少年事件の手続~

Aくんは20歳に満たない少年ですから、少年保護事件として手続が進行します。
そのため、殺人未遂事件を起こした場合であっても、原則として刑罰を受けることはなく、必要に応じて保護処分を言い渡されることにより、事件が終了することになります。
最終的にAくんに言い渡される可能性のある処分については、後述します。

(捜査段階)
少年保護事件であっても、捜査段階において逮捕・勾留されうるという点は、成人と同じです。
捜査中は、Vを殺害しようとするに至った動機、犯行態様などについて詳しく聞かれることになります。

(家庭裁判所への送致)
捜査機関での捜査が終わると、家庭裁判所に送致されます。
送致後、家裁が「観護措置」を行うか否かを検討します。
この段階までに勾留がついていると、観護措置がとられる可能性が高いです。

観護措置がとられると、2週間身体拘束を受けることになります。
この期間は1回更新することができ、殺人未遂などの重い事件で証人尋問の決定などをして、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、さらに2回を限度として更新することができます。
以上を合計すると、最大8週間、観護措置として身体拘束を受ける可能性がある、ということになります。

観護措置を受けると、少年鑑別所に収容され、Aくんの心身の調査などが行われます。
この調査の結果は、後の少年審判に役立てられます。

(気をつけるべき処分)
少年法第20条1項は、
「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない」
としています。
これを「検察官送致」、「逆送」と呼びます。

先ほど、「原則として刑罰を受けない」と記載しましたが、上記の処分がなされると、成人と同様に刑事裁判にかけられ、刑事罰を受けなくてはならなくなる可能性が極めて高くなります。
また、公開の法廷で審理が行われるので、Aくんの負担も大きくなります。
本件は、殺人未遂事件として手続が進めば裁判員裁判となりますので、Aくんの負担はさらに大きなものとなるでしょう。
Aくんの将来を考えると、この処分は回避したいところです。
弁護士は、罪質は実際のところ傷害でありそれほど重くはないことや、検察官送致を行うことによってAくんに生じる不利益について、家庭裁判所の裁判官に説明し、上記処分の回避に努めます。

(審判)
保護処分には、①保護観察処分、②少年院送致、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致があります。
Aくんには、少年院送致が言い渡される可能性が高いでしょう。
少年院では、身体拘束を伴うなど、Aくんにとって負担になりうる処遇がなされますが、少年院はAくんの改善更正を重視している施設ですから、必ずしもAくんの将来のためにならないわけではありません。

少年事件では、Aくんの将来を踏まえ、真摯に内省を促し、改善更正を目指していくことが重要な目的となります。
どのように取り組むかにより、Aくんの改善更生を大きく左右します。

少年法に詳しい弁護士のアドバイスを受けながら、事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が殺人未遂事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(無料法律相談のご予約はこちら

校内を自転車で走り回り逮捕

2019-12-31

校内を自転車で走り回り逮捕

今回は、少年の建造物侵入事件につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

東京都八王子市在住のAくんは、14歳の中学2年生です。
日頃から共にイタズラなどをして遊んでいる仲間数名を誘い、深夜、通学先である中学校の校舎内を自転車で走り回るなどしました。
防犯装置を作動させてしまったらしく、しばらくすると警備員と警察官が中学校に駆け付け、Aくんらは建造物侵入の疑いで警視庁高尾警察署に現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~少年の建造物侵入事件~

Aくんらが行った行為は、建造物侵入罪を構成する可能性の高い行為です。
ただし、Aくんは14歳の「少年」なので、少年法の適用があり、逮捕後も、原則として刑罰を受けることはありません。
その代わり、少年保護事件として手続が進行することになります。

少年が犯罪を犯すと、少年院などに行く場合がある、ということはよく知られています。
ですが、少年院送致は、家庭裁判所で言い渡される保護処分の一つにすぎず、少年院送致以外の処分が言い渡されることもあります。

保護処分には、前述の①少年院送致、②保護観察処分、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致があります。
家庭裁判所がAくんに保護処分を言い渡す場合、Aくんの犯罪傾向、家庭環境、交友関係などを考慮し、保護処分の種類を決定します。

~今後の手続~

少年が非行を行った場合、直ちに上記の保護処分が言い渡されるわけではありません。
ケースの場合に想定される手続を大まかに説明すると、
警察や検察などの捜査機関による捜査→家庭裁判所への送致→少年の調査→少年審判→保護処分等の決定
という流れになると思われます。

(捜査段階)
原則として刑罰を受けることはない、と述べましたが、捜査段階においては刑事訴訟法の適用があるので、成人と同じく、逮捕・勾留される可能性があります。
現に、Aくんは現在、現行犯逮捕されています。
この段階で、Aくんのためにどのようなことができるでしょうか。

逮捕直後であれば、勾留を避ける活動を行うことが検討されます。
逮捕され、さらに勾留がつくと、最長23日間も身体拘束を受けることになります。
弁護士は、少年を長期間勾留することの悪弊、逃亡や罪証隠滅のおそれがなく勾留の要件を満たしていないことなどを検察官や裁判官に主張し、勾留をしないよう求めることができます。

勾留されてしまった後は、勾留決定に対する不服申立制度を活用し、勾留の取消を求めて活動することが考えられます。

(家庭裁判所への送致)
上記の身柄解放活動が功を奏し、在宅事件として手続が進行する場合も、勾留された状態で手続が進行する場合も、検察官は最終的に、Aくんを家庭裁判所に送致しなければなりません。
家裁に送致された後は、24時間以内に「観護措置」をとるか否かが決められます。
観護措置がとられると、少年鑑別所に収容され、Aくんの資質、性格などが、様々な専門的方法により調査されます。
観護措置がとられなければ、そのまま家に帰ることができます。

(審判開始決定)
審判を開始する決定がなされると、非公開の少年審判が開かれます。
ここで、冒頭に記載した保護処分やその他の決定(不処分など)が言い渡されることになります。

~目指すべき到達点~

Aくんの家庭環境に大きな問題がある(育児放棄がなされているなど)場合でなければ、ケースの場合、裁判官による訓戒のみで処分を下さない不処分や、保護観察処分が言い渡される可能性が高いでしょう。

少年院送致が言い渡された場合は施設に収容され、特別の場合を除いては外出することができないのに対し、保護観察処分の場合は、在宅で改善更正を図ることができます。
不処分の場合は、審判をもって終わりとなります。
Aくんの犯罪傾向がそれほど進んでおらず、また、家庭環境に問題がないのであれば、A君の負担を少なくするために、不処分ないし保護観察処分を獲得すべきです。

そのためには、家庭裁判所の裁判官に、Aくんが在宅でも改善更正できており、処分は必要ないことを納得させなければなりません。
そのためには、審判に先立ち、共犯者である仲間との交際の態様を見直しながら、Aくんをとりまく環境を調整していく必要があります。
少年事件を専門とする弁護士のアドバイスが大いに役立つと思います。
弁護士のアドバイスを受けながら、事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が建造物侵入事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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少年が特殊詐欺事件で窃盗未遂罪に

2019-12-21

少年が特殊詐欺事件で窃盗未遂罪に

特殊詐欺に関与して窃盗未遂罪を疑われた少年事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

少年A(19歳)は,Xの指示により,いわゆる受け子(被害者から被害品を受け取る役)を担うことになっていた。
Xは架け子(被害者に電話をかけて騙す役)として,V(埼玉県越谷市在住)に対し「あなたのキャッシュカードが悪用されている」「これから警察がチェックしにお宅に伺う」等の嘘をついてVを騙した。
XとAは,この後,数時間以内にAがV宅に赴き,キャッシュカードをチェックする振りをして,カード状のものとすり替え持ち去るという計画を立てていた。
計画通りV宅に向かっていたAだったが、不審さを感じた埼玉県越谷警察署の警察官は,職務質問を開始し,その後,少年Aを窃盗未遂罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~少年と特殊詐欺の受け子~

本件は,近年社会問題となっている(主に高齢者を被害者とする)特殊詐欺の中でも「すり替え詐欺」と呼ばれているものの一種です。
もっとも,特殊詐欺の一部とされているものの,本件では窃盗未遂罪によって逮捕されています。
では,なぜ詐欺未遂罪ではなく窃盗未遂罪が成立すると考えられているのでしょうか。

詐欺罪とは「交付罪」と呼ばれる類型に分類されます。
条文上も「人を欺いて財物を交付させた者」(刑法246条1項)を詐欺罪とする旨定めており,詐欺罪の成立には被害者の意思に基づく「交付」が必要になることが分かります。
これに対し,窃盗罪(刑235条)は奪取罪と呼ばれる類型であり,被害者の意思に反して財物の占有を取得する犯罪と位置づけられています。
したがって,窃盗罪詐欺罪は,被害者の意思に基づく交付行為があったか否かによって区別されることになると考えられています。
本件では,Vの隙を見てカードの入った封筒を持ち去るつもりであることから,Vによる「交付」行為は予定されていないことになります。
したがって,詐欺罪ではなく窃盗罪が成立するか否かを検討すると考えられます。

なお,本件で重要な事実として,Aは被害者宅に到着することなく逮捕されてしまったことが挙げられます。
このような場合,まだAはVに対し何も行っていないのですから,窃盗未遂罪が成立する余地はないように思われるかもしれません。
しかし本件では,多くの特殊詐欺事案と同じように,首謀者たる架け子がすでにVを電話で騙しています。
未遂罪は「犯罪の実行に着手」(刑法43条本文)することで成立するものであり,架け子による電話が実行の着手と評価される余地があります。
そうなると、犯行計画を立てるなどして架け子と共謀(刑法60条参照)を遂げたAにも窃盗未遂罪が成立する可能性があるのです。

~少年事件における刑事弁護士の活動~

少年事件では、通常の刑事事件と異なり,原則として全ての事件を家庭裁判所に送ることになっています(全件送致主義)。
一般に、少年は少年法によって過剰に保護されているなどといった印象をお持ちの方も多いかもしれません。
しかし,上記のような点から鑑みれば,むしろ少年法は少年に対し厳格な手続を採っているともいえるのです。
たとえば、成人であれば微罪処分不起訴処分が予想される軽微な事件でも、少年事件では原則どおり家庭裁判所に送致することが求められるからです。
もっとも、基本的に少年事件であっても、逮捕されてから家裁に送致されるまでの間は通常の刑事事件と変わるところはありません。
したがって、弁護士による接見によって、正確な刑事手続に関する知識を与え、安易に捜査官の取調べに流されないように勇気づける等のアプローチをすることが極めて重要になってくるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を含む刑事事件を専門とした法律事務所です。
弊所は刑事事件を専門としているため、少年事件の経験も豊富な弁護士が多数所属しています。
窃盗事件逮捕された少年のご家族等は、フリーダイヤル(0120-631-881)まで早急にお問い合わせください。
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証拠隠滅罪と少年事件の流れ

2019-12-16

証拠隠滅罪と少年事件の流れ

少年による証拠隠滅事件の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ ケース ~

このところ、テレビなどでは「大阪府箕面市内のコンビニXに強盗が押し入り、金属棒で店員を殴りつけ逃走した」というニュースが連日報道されていました。
同市に住むA君(19歳)は、ある日、先輩のB(20歳)から呼び出され、上記事件の犯人がBであることを打ち明けられました。そして、A君は、Bから犯行に使用した金属棒を隠すよう言われました。A君は犯行にかかわりたくないと思いながらも、過去にBから様々お世話になったことを思い出し、Bの頼みを聞き入れることにしました。そして、A君はBに言われたとおり、金属棒を捨てたところ、大阪府箕面警察署の警察官の職務質問をされました。そして、A君はこれまでの経緯を警察に説明したところ、証拠隠滅罪で逮捕されました。また、その後、Bも強盗致傷罪で逮捕されました。
(フィクションです。)

~ 証拠隠滅罪 ~

証拠隠滅罪は刑法104条に規定されています。

刑法104条

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

「他人の」とは、行為者以外の者をいいます。
この点、「自己の」とされていない点に注意が必要です。
つまり「自己の」刑事事件に関する証拠を隠滅しても証拠隠滅罪は成立しません。
これは、罪を犯した犯人自身にこうした行為に出ないことについて期待することが難しいという考えに基づきます。

「刑事事件」とは、現に裁判中に限らず、捜査中の事件も含まれます。また、少年法により将来刑事処分を受ける可能性がある少年保護事件も含まれると解されています。
「証拠」とは、物にかぎらず、人(被害者、目撃者など)も含まれます。
「隠滅」とは、物理的に滅失させるだけではなく、証拠の顕出を妨げ、その価値を減失・減少させるすべての行為を含むと解されています。

なお、今回、A君はBの強盗への関与は認められませんが、仮に関与が認められる場合(たとえば、犯行中に見張りをした、犯行の準備段階で金属棒を貸したなどの場合)は強盗致傷罪の共犯者となる余地が出てきます。
共犯者となった場合、金属棒は「他人の」刑事事件に関する証拠と同時に自己の刑事事件に関する証拠にもなります。
この場合における証拠隠滅罪の成否について、最高裁判所の見解は明らかにされておらず、他の裁判所では肯定も否定もありうるところです。

~ 事件認知後の少年事件の流れ ~

少年の場合も、事件が認知されれば、家庭裁判所送致までは基本的には成人と同様の流れとなります。
逮捕勾留され身柄を拘束されることもありますし、在宅被疑者として警察から出頭の要請に応じるべき場合もあります。
一方、必要な捜査がひととおり終わり家庭裁判所へ送致された後は、専門職員による調査・面会、家庭裁判所調査官による調査・面会などを受けることになります。送致の段階で勾留により身柄を拘束されている場合は、観護措置を取られ少年鑑別所に収容されます。
各機関なの調査・面会が終わると、必要に応じて少年審判が行われます(審判不開始により受ける必要がない場合もあります)。
少年審判では、保護観察少年院送致などの保護処分や、検察官送致(いわゆる逆送)の決定が下されます。
少年審判の結果不処分とされることもありえますが、多くの場合は上記の処分に付されると考えて差し支えないでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

高校生の脅迫事件で不処分決定を目指す

2019-12-11

高校生の脅迫事件で不処分決定を目指す

今回は、少年の脅迫事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

兵庫県小野市に住む高校生(16歳)のAくんは、友人Vに含むところがあり、VのSNSのコメント欄に「調子に乗るなよ。家に火をつけようか。熱いだろうな」などと書きこんでしまいました。
Vは恐怖し、親に相談したところ、親は激怒して兵庫県小野警察署に被害届を提出しました。
ある日、Aくんの自宅に少年係の警察官が現れ、「SNSのことで聞きたいことがある」と告げ、A君は任意同行されてしまいました。
Aくんはその晩帰宅できましたが、今後どうなってしまうのか不安です。
Aくんの両親から相談を受けた弁護士は、脅迫罪に当たる可能性があることを指摘したうえで、不処分を目指すことを提案しました。(フィクションです)

~Aくんには何罪が成立するか?~

脅迫罪を構成する可能性が高いと思われます。
脅迫罪は、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫」する犯罪です(刑法第222条1項)。

「自宅に火をつけようか」と申し向ける行為は、上記の害悪の告知に該当する可能性が高いと思われます。

実際に火をつける訳ではなくても、「自宅に火をつけようか」と申し向けること自体が「脅迫罪」を構成する可能性があるということです。
仮に実際にVの自宅に火をつけた場合には、別途「現住建造物等放火罪」(刑法第108条)に問われることになるでしょう。

~Aくんの事件はどう解決すべきか?~

(特殊な少年手続)
Aくんは少年なので、脅迫罪を構成しうる行為を行ったとしても、原則として刑罰に問われることはありません。
その代わり、少年保護事件として手続が進み、必要に応じて家庭裁判所により保護処分を言い渡されることになります。

(大まかな手続の流れ)
現在、在宅事件として捜査が行われているので、警察の出頭要請に応じて出頭し、取調べを受けることになります。
在宅捜査中、Vに腹いせをしたり、口封じなどを試みた場合、罪証隠滅のおそれがあると判断され、逮捕されてしまう可能性が高まります。
事件が解決するまでは、不必要にVと接触しない方が賢明でしょう。
また、出頭要請には、特段の事情が無い限り、応じた方が良いと思われます。
決まった出頭日に出頭しない場合、逃亡のおそれがあると判断され、やはり逮捕されてしまう可能性を高めてしまうことになります。

捜査機関が捜査を遂げると、Aくんは家庭裁判所に送致され、非行事実の確認やAくんの人物像などの調査が行われることになります。
その際、調査を円滑に行うために「観護措置」を行うかどうかを検討されます。
観護措置が行われると、少年鑑別所に収容されて調査を受けることになります。

これまで在宅で捜査がなされてきた場合であっても、観護措置決定がなされ、少年鑑別所に収容されることはありえます。
少年鑑別所に収容されてしまうと、2週間の身体拘束を受けることになります。
期間は、1回更新することができ、さらに、要件を満たす場合は、さらに2回を限度として更新することができます。
今回のケースで観護措置決定がなされた場合、一般的な傾向に照らせば4週間収容されると見込まれます。
身体拘束の期間が長引くと、Aくんにとって不利になります。
なるべく早い段階で弁護士に依頼し、観護措置決定がとられないように活動してもらいましょう。

(審判)
調査の結果、審判を開始するのが相当であると認めるときは、審判開始決定がなされます。
少年審判では、必要に応じて、①保護観察処分、②少年院送致、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致といった、保護処分が言い渡されます。
これに対し、いずれの保護処分にも付する必要がないと認められれば、何らの処分も行わない不処分決定がなされます。

少年審判が開始された場合において、Aくんにもっとも負担がかからないのは、不処分決定を獲得することです。
不処分決定を獲得するためには、審判開始決定がなされる前から、Aくんに真摯な内省を促し、家庭環境を調整するなどして、Aくんの監護態勢を整えておく必要があります。
どのようにすれば説得的な環境調整ができるのか、という点については、少年事件を専門とする弁護士の助言が大いに役立つでしょう。
お子様がケースのような事件を起こしてしまった場合には、なるべく早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が脅迫事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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少年の傷害事件で正当防衛を主張

2019-12-06

少年の傷害事件で正当防衛を主張

少年事件における傷害事件ついて正当防衛が成立するか,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

京都府福知山市に住む少年A(17歳)(と友人B)は,従前から些細なトラブルのあった少年Vから呼び出され,近くの公園に向かった。
当初は口論に終始していたが,突如としてVが殴りかかってきたことから,BがVを羽交い締めにした。
それでもVが抵抗をやめないため,AはBの身にも危険が及ぶと感じたことからVを数回殴打し,Vが怪我を負うに至った。
京都府福知山警察署の警察官は,Aを傷害罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。

~傷害事件と正当防衛~

本件では,AはVを数回殴打し怪我を負わせていることから,逮捕された罪である傷害罪(刑法204条)が成立するようにも思われます。
もっとも,本件ではVの方から,殴りかかってきたという事情があります。
したがって,A(およびB)に,刑36条1項が定める正当防衛(「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」)が成立する可能性があります。
正当防衛が成立すれば,Aの傷害行為には違法性が認められず,犯罪が成立しないことになります。
また,仮に正当防衛が成立せず犯罪が成立したとしても,防衛行為がやりすぎたものと認められる場合については,過剰防衛として刑の減免の可能性があります(36条2項参照)。

もっとも,その正当防衛(あるいは過剰防衛)が成立する前提として,「急迫不正の侵害」が認められる必要があります。
この点については,近年判例によって新たな解釈が示されています。
最高裁平成29年(2017年)4月26日決定は,「刑法36条は,急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに,侵害を排除するための私人による対抗行為を例外的に許容したものである」と,まず正当防衛の根拠・趣旨に言及しています。
これに続き「したがって,行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,侵害を予期していたことから,直ちにこれが失われると解すべきではなく」と,相手方の侵害を予期していたとしても直ちに正当防衛が否定されるわけではないことを改めて確認しています。
そして,「急迫不正の侵害」が認められるかどうかに関しては,「対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべき」とし,侵害の予期や,侵害の事前回避に関する事情を中心に様々な事情を総合的に考慮した上で決すべきものとしました。
この判例に照らしてみると本件では,たしかにAやBは従前からVとのトラブルを抱えており,Vから何らかの暴力等を振るわれることも予期していた(できた)といえます。
しかし,AやBは何の武器や凶器等も用意しておらず,この機会にVを痛めつけようなどという気まではなかったと考えられます。
また,従前もあくまで少年同士の些細なトラブルがあったにすぎず,少年に警察等を呼ぶなどの事前回避の義務があったというのは酷でしょう。
したがって,Aの反撃行為が相当(「やむを得ずにした行為」)と言えるならば正当防衛が,仮に相当といえない場合にも過剰防衛が成立することになると考えられます。
なお,正当防衛(および過剰防衛)の成立には,防衛の意思(「防衛するため」の行為であること)も必要と解されています。
これが否定されるケースというのは,たとえば先述のように正当防衛の名を借りて相手方を痛めつけようとした場合です。
少なくとも本件においては,防衛の意思は否定されないと思われます。

~正当防衛に関する弁護活動~

上記判例が示したように,現在の判例・実務では,正当防衛の判断に当たってはかなり細かな事情までも判断材料とし,その成否を決する傾向があります。
したがって,被疑者の正当防衛を主張する弁護士としては,現場の状況や目撃証言などから,上記「急迫不正の侵害」があったことなどを詳細な事実をもとにして主張する必要があるといえるでしょう。
少年事件では,まだ中学校や高校などの中等教育課程に在籍している者も多く,少年の将来のためにもその不利益は最小限に抑える必要性が極めて高いと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,少年事件を含む刑事事件専門に扱う法律事務所です。
傷害事件でお子様等が逮捕されてしまったご家族は,24時間対応可のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお電話ください。

少年の器物損壊事件

2019-12-01

少年の器物損壊事件

今回は、少年の器物損壊事件における手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

高校3年生のAくん(17歳)は、受験勉強のストレスを発散するために、福岡県直方市内の駐車場に駐車されていた他人の自動車のタイヤをパンクさせるなどのイタズラをして楽しんでいました。
ある日、パンク被害に遭ったVが福岡県直方警察署に相談し、警察が連続器物損壊事件として捜査したところ、駐車場の監視カメラなどの映像から、犯人をAくんと特定しました。
ある日、Aくんの家に捜索差押許可状を持った警察官が現れ、パンクさせるのに用いた千枚通しなどを押収していきました。
捜索の後、Aくんは器物損壊罪の疑いで警察署にて取調べを受けています。
Aくんの親は不安に思い、弁護士に相談することにしました。(フィクションです)

~少年の器物損壊事件~

器物損壊罪とは、他人の物(建造物や特定の内容の文書を除く)を損壊し、又は傷害する犯罪です。
「物」の「傷害」とは、他人が飼っている動物を傷つけるケースが想定されています。
法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となっていますが、A君は20歳未満の少年ですから、原則としてこれらの刑罰を受けることはありません。
それでは、Aくんには何のお咎めもないのでしょうか。

少年法によれば、家庭裁判所は、少年審判を開始した事件につき、一定の場合を除き、保護処分を行わなければならない、としています(少年法第24条)。

保護処分には、
・保護観察処分
・少年院送致
・児童自立支援施設又は児童養護施設送致
の3種類があります。

一方、保護処分が行われない場合として、
・調査の結果、児童福祉法の規定による措置を相当と認めるとき(少年法第23条1項・18条1項)
・死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき(少年法第23条1項・20条1項)
・審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるとき(少年法第23条2項)
・審判の結果、本人が二十歳以上であることが判明した場合(少年法第23条3項)
があります。

~Aくんは今後どうなるか?~

捜査段階では、刑事訴訟法が適用されるので、捜査機関の取調べを受ける点、場合によって、逮捕勾留されうる点においては成人と同様です。

しかしながら、成人の刑事手続が起訴便宜主義(検察官に起訴・不起訴を決める裁量が認められる)を採っているのに対し、少年事件の場合は、全件送致主義(少年法第42条1項・審判に付すべき事由が認められる限り、原則として少年を家庭裁判所に送致しなければならない)が採られているため、不起訴処分を目指した弁護活動は想定されません。
したがって、非行事実の存否を争う場合などを除いては、家庭裁判所へ送致された後の対策をも検討しなければならないことになります。

~家庭裁判所へ送致されたあと~

家裁に送致された後、それまでは在宅で捜査されてきた場合であっても、「観護措置」により、少年鑑別所に収容される場合があります。
家裁送致された後は、少年の性格、生育歴、家庭環境、交友関係などが調査され、その結果が審判の資料として利用されることになります。

~審判が開始されたら~

審判が開始されてしまった場合、Aくんに対し上記の保護処分を言い渡される可能性があります。
保護処分が言い渡される場合は、一般的に保護観察処分少年院送致のいずれかが言い渡される可能性が高いと言えます。
また、中間処分として試験観察に付され、社会内で更生できるか見究められたうえで、改めて保護処分が言い渡されることもあります。

少年院では、基本的に施設の中での生活を強いられ、特別の場合を除いては外出できません。
これに対し、保護観察処分においては、保護観察官や保護司の指導・監督を受けるものの、在宅で更生を目指すことができます。
本件において、Aくんは受験を控えた重要な時期にあります。
このような時期に、少年院に送致されてしまうと、Aくんの将来に多大な悪影響を与えることが予想されます。
したがって、保護観察処分を獲得し、在宅で改善更正を目指していくのが良いでしょう。

~弁護士と共に保護観察処分の獲得を目指す~

家庭裁判所が保護観察処分を言い渡す場合は、Aくんが在宅でも改善更正しうる、と考えている場合です。
非行を行いがちな者との付き合いがある場合や、家庭での指導監督が期待できない場合、Aくん自身に強い犯罪傾向が認められる場合は、保護観察処分の獲得は難しくなります。

弁護士と力を合わせて、Aくんに真摯な反省を促し、家庭での指導・監督態勢を充実させ、不健全な交友関係を断ち切っていくことが、より軽い処分獲得への近道です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が器物損壊事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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事実否認の少年事件②

2019-11-21

事実否認の少年事件②

東京都文京区の学校では、高校生D君(16歳)が不登校になったことから、D君に対するいじめ暴力問題(D君は加療約1か月の傷害)が浮き彫りになっていました。そうしたところ、同級生のA君は、同じB、Cから呼び出しを受けました。そして、A君は、B、Cから「お前もあの場にいたから同罪だよな?」「お前が全部やったように言えよ。」「でないとどうなるか分かっているんだろうな。」と脅しを受けたのです。A君は、その後の学校の調査で「僕がやりました。」などと嘘をつき、事態を重く見た学校から警察へ通報されてしまいました。そして、A君は、警視庁大塚警察署傷害罪逮捕されました。A君は警察官や接見に来た弁護士に「やったのは僕ではありません。」「B、CがD君を叩いているのをその場で見ていただけです。」などと話しています。

~ 前回のおさらい ~

前回の「事実否認少年事件」では、

・少年事件では罪の擦り付けが行われる可能性があること
・事実を否認した方が逮捕される可能性が高いこと
・事実を否認する場合の弁護士の対応

などについてご説明しました。
本日は、

否認事件における家庭裁判所送致後の弁護士の対応

などについてご説明します。

~ 家庭裁判所送致後 ~

少年(20歳に満たない者)事件では、警察、検察での捜査が終わると、事件は家庭裁判所へ送致されます。家裁送致前に警察署の留置施設に拘束されている場合は、通常、家裁送致後、観護措置決定により少年鑑別所に身柄を移されるでしょうし、家裁送致前から少年鑑別所に収容されている場合は、そのまま少年鑑別所に収容されることになるかと思います。

少年鑑別所は少年の身柄を確保しつつ心身の鑑別を行う施設です。家裁送致後の観護措置により収容された場合、はじめに「2週間」拘束されます。しかし、ほとんどの場合期間が更新されますから、拘束期間は「4週間」が通常と考えていた方がよいでしょう(なお、特別な事情がある場合は更に2回まで更新することができます(つまり、収容期間は最大で「8週間」となります)。
その間、少年鑑別所の技官や家庭裁判所調査官による調査を受けます。調査の結果は少年審判などに活用されます。

~ 弁護士の対応(不処分獲得を目指す) ~

少年が犯罪事実を否認したものの、家庭裁判所に事件を送致された場合、少年審判において少年の無実を明らかにすることになります。少年事件では、事件が家庭裁判所に送致されれば、弁護士は事件記録のすべてを原則として見ることができます。弁護士はその記録や少年から聴き取った話の内容を基に証拠や主張を固め、裁判官に対して、非行事実(犯罪事実)がないことを伝える意見書を提出します。少年事件では、事件が家庭裁判所に送られた時に、捜査機関が持っていた事件記録がすべて家庭裁判所に送られます。そのため、早い段階で弁護士が少年の主張を伝えなければ、裁判官が事件記録から少年には非行事実があるのではないかという印象を持ってしまいます。
さらに、少年審判においては、成人の刑事裁判のように証人に対する尋問、少年に対する質問などが行われていきます。少年審判では、証人の証言の矛盾点を暴き出し、少年の供述に不合理、不自然な点はないかなどを明らかにする必要があります。
なお、否認事件の少年審判は1回で終わることはほとんどありません。

そして、少年審判で、裁判官によって「非行事実がない」と認められた場合は、不処分決定を受けます。
不処分決定とは、保護観察少年院送致などの保護処分を受ける必要がない旨の決定のことをいいます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。

高校生の強制わいせつ事件

2019-11-06

高校生の強制わいせつ事件

高校生の強制わいせつ罪と事件の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

高校1年生のAくん(16歳)は、同級生のVを人気のない公園(埼玉県本庄市所在)に呼び出し、暴行や脅迫を用いてVの胸を弄ぶなどのわいせつな行為を行いました。
Vが泣き出したので、Aはわいせつ行為をやめ、AとVはその場で別れました。
その後、Aくんの自宅に埼玉県児玉警察署から連絡があり、「同級生の子の件で聞きたい話がある」とのことでした。
Aくんの親は、Aくんの話から強制わいせつ罪の疑いをもたれていると考え、取調べに先立ち弁護士に相談することにしました。(フィクションです)

~少年事件の特色~

少年法は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする法律です(少年法第1条)。
AくんがVに対して行った行為は、暴行や脅迫を手段とするわいせつな行為であることから、強制わいせつ罪に該当すると考えられます。
Aくんは少年法における「少年」(20歳未満の者)ですから、成人の場合におけるような刑事手続ではなく、少年法の定める「少年保護事件」として手続が進行することになります。

「少年保護事件」の手続は、非行があるとされる少年について非行事実の有無を確定し、非行のある少年に対して、その性格、環境の問題点に応じて、少年院送致等の保護処分かその他の処分かを選択することを内容とします。
ケースの場合はどのように手続が進行していくのでしょうか。

~Aくんに想定される少年保護事件手続~

まずは警察に出頭し、取調べを受けることになります。
逮捕されずに在宅で捜査が行われる場合は、取調べが終了した後、帰宅することができます。

警察での捜査が熟した後は、検察庁に事件が送致(送検)され、検察官の取調べを受けることになります。
成人の刑事事件の場合、検察官には被疑者を起訴するか、あるいは不起訴にするかという点について裁量が認められており、被疑事実を裁判で立証できる証拠を有している場合であっても、被疑者を不起訴起訴猶予)処分とすることができます。
しかし、少年法においては、少年の健全育成を図る観点から「全件送致主義」が採られており、成人の刑事事件のような裁量が認められていません。
したがって、原則として家庭裁判所に送致されることになります。

逮捕され、その後に勾留勾留延長がなされた場合、捜査段階において最長23日間身体拘束を受けることになります。
この場合も、検察官に起訴・不起訴を決める裁量はなく、原則として少年を家庭裁判所に送致します。

~家庭裁判所へ送致された後~

家庭裁判所へ送致された後は、Aくんに対し、「観護措置」を行うかどうかが検討されます。
観護措置」がとられると、基本的にAくんは少年鑑別所に送致されることになり、観護措置の下でAくんの性格や資質などについて調査が行われます。
観護措置の期間は2週間を超えることができず、とくに継続の必要があるときに1回に限り更新できます。
ただ、実務上は更新が殆ど常態化しており、多くの場合4週間近く少年鑑別所に収容されることが見込まれます。
また、一定の重大な事件など特別更新の要件を満たす場合は、さらに2回を限度として更新することができます。
以上に対し、観護措置がとられない場合は在宅で調査が行われます。

~少年審判~

調査の結果、審判が開かれると、「保護処分」、「不処分」などの決定がなされます。
不処分」は、①保護処分に付することができないとき(非行の事実が認定できない、少年の所在不明など)、②保護処分に付す必要がないときになされます。
ケースのように強制わいせつ罪に当たる非行事実が認定できる場合、事件の重大性は否定できないことから、一般的に不処分の獲得は難しいかもしれません。

保護処分」とは、①少年院送致、②保護観察処分、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致をいいます。
このうち③は(親による虐待などからの)保護の色彩が強く、ケースのような場合は少年院送致保護観察処分がなされる可能性が高いと思われます。
少年院では特別な場合を除き外出できませんが、保護観察処分の場合、在宅で少年の改善更正を図ります。
Aくんの将来へ及ぼす影響を考えると、なるべく在宅で改善更正を行いたいところです。
そのためには、Aくんに深く内省を促し、性に関する認識を改めさせ、家庭における監護態勢を見直し、在宅であってもAくんが改善更正しうることを家庭裁判所に納得してもらわなければなりません。
保護観察をはじめとするAくんに最適な処分を獲得するために、弁護士のアドバイスを受けながら環境を調整していきましょう。

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お子様が強制わいせつ事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所無料法律相談をご利用ください。

保護観察中に万引きで少年院?

2019-10-27

保護観察中に万引きで少年院?

兵庫県宝塚市に住む高校生のA君(16歳)は、過去にスーパーで万引き窃盗罪)をした件で、現在、保護観察中です。ところが、A君は、今度はコンビニでお菓子3点を盗む万引きをして店員に見つかり、兵庫県宝塚警察署に通報されて逮捕されてしまいました。逮捕の通知を受けたA君の父親は、今度こそ少年院に送られることを覚悟しつつも、何とか少年院送致を回避できないかと思い、少年事件に強い弁護士に相談を持ちかけました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

~ 少年院とは ~

少年院は、少年の健全な育成を図ることを目的とした矯正教育、社会復帰支援等を行う法務省所管の施設です。

~ どんな人が収容されるの? ~

少年院について規定した少年院法ではその3条で、少年院を「次に掲げる者を収容し、これらの者に対し矯正教育その他の必要な処遇を行う施設」としています。

・保護処分の執行を受けるもの
・少年院において懲役又は禁錮の刑(略)の執行を受ける者

なお、保護処分は少年審判時に言い渡されます。保護処分には、

・保護観察
・児童自立支援施設又は児童養護施設への送致
・少年院送致

の3種類があります。

~ どこに、どんな種類の少年院があるの? ~

少年院法4条では少年院

・第一種少年院 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの
・第二種少年院 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
・第三種少年院 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの
・第四種少年院 少年院において刑の執行を受ける者

の4種類に区分しています。
そして、

・北海少年院(北海道千歳市) 第1種少年院
・多摩少年院(東京都八王子市) 第1種少年院
・浪速少年院(大阪府茨木市) 第1種少年院
・広島少年院(広島県東広島市) 第1種少年院

などと、各少年院ごとにその種類が指定されています。どの種類の少年院に収容されるかは、家庭裁判所の少年審判時に決定されます。

~ 少年院ではどんなことが行われるの? ~

少年院では、少年の特性に応じた矯正プログラムが策定され、それに沿った矯正教育が行われます。矯正教育は、

・生活指導:善良な社会人として自立した生活を営むための知識・生活態度の習得
・職業指導:勤労意欲の喚起,職業上有用な知識・技能の習得
・教科指導:基礎学力の向上,義務教育,高校卒業程度認定試験受験指導
・体育指導:基礎体力の向上
・特別活動指導:社会貢献活動,野外活動,音楽の実施

に区分されます。

また、矯正指導のみならず、少年の円滑な社会復帰を目的とした、就労支援、帰住先の確保などに関する社会復帰支援も行われています。

~ 少年院送致を回避するには ~

少年院は、少年に対する矯正教育を施し、少年の自発的な更生を促し、円滑な社会復帰を手助けするための施設です。
したがって、少年院送致が全て少年にとってマイナスというわけではありません。
しかし、少年院送致となると、一定期間拘束され、その間自由な生活を送れなくなります。社会内で少年の更生が期待できる場合は、少年院送致を回避すべきでしょう。

保護処分を決める少年審判では、少年に「要保護性」があるかどうかが重要な鍵となります。要保護性がある場合は少年院送致となる可能性が大きくなります。要保護性とは、少年が将来、非行に及ぶ危険があることをいいます。

要保護性の有無は、

・少年の性格や環境に照らして将来再び非行に陥る危険性があるか否か(再非行の危険の有無)
・保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性があるか否か(矯正可能性の有無)
・少年の保護の相当性が認められるか否か(保護相当性の有無)

の3つの要素を考慮して判断されます。
したがって、少年院送致を回避するには、上記3つの可能性を少しでも解消するための努力、活動が必要となります。

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