少年が特殊詐欺事件で窃盗未遂罪に

2019-12-21

少年が特殊詐欺事件で窃盗未遂罪に

特殊詐欺に関与して窃盗未遂罪を疑われた少年事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

少年A(19歳)は,Xの指示により,いわゆる受け子(被害者から被害品を受け取る役)を担うことになっていた。
Xは架け子(被害者に電話をかけて騙す役)として,V(埼玉県越谷市在住)に対し「あなたのキャッシュカードが悪用されている」「これから警察がチェックしにお宅に伺う」等の嘘をついてVを騙した。
XとAは,この後,数時間以内にAがV宅に赴き,キャッシュカードをチェックする振りをして,カード状のものとすり替え持ち去るという計画を立てていた。
計画通りV宅に向かっていたAだったが、不審さを感じた埼玉県越谷警察署の警察官は,職務質問を開始し,その後,少年Aを窃盗未遂罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~少年と特殊詐欺の受け子~

本件は,近年社会問題となっている(主に高齢者を被害者とする)特殊詐欺の中でも「すり替え詐欺」と呼ばれているものの一種です。
もっとも,特殊詐欺の一部とされているものの,本件では窃盗未遂罪によって逮捕されています。
では,なぜ詐欺未遂罪ではなく窃盗未遂罪が成立すると考えられているのでしょうか。

詐欺罪とは「交付罪」と呼ばれる類型に分類されます。
条文上も「人を欺いて財物を交付させた者」(刑法246条1項)を詐欺罪とする旨定めており,詐欺罪の成立には被害者の意思に基づく「交付」が必要になることが分かります。
これに対し,窃盗罪(刑235条)は奪取罪と呼ばれる類型であり,被害者の意思に反して財物の占有を取得する犯罪と位置づけられています。
したがって,窃盗罪詐欺罪は,被害者の意思に基づく交付行為があったか否かによって区別されることになると考えられています。
本件では,Vの隙を見てカードの入った封筒を持ち去るつもりであることから,Vによる「交付」行為は予定されていないことになります。
したがって,詐欺罪ではなく窃盗罪が成立するか否かを検討すると考えられます。

なお,本件で重要な事実として,Aは被害者宅に到着することなく逮捕されてしまったことが挙げられます。
このような場合,まだAはVに対し何も行っていないのですから,窃盗未遂罪が成立する余地はないように思われるかもしれません。
しかし本件では,多くの特殊詐欺事案と同じように,首謀者たる架け子がすでにVを電話で騙しています。
未遂罪は「犯罪の実行に着手」(刑法43条本文)することで成立するものであり,架け子による電話が実行の着手と評価される余地があります。
そうなると、犯行計画を立てるなどして架け子と共謀(刑法60条参照)を遂げたAにも窃盗未遂罪が成立する可能性があるのです。

~少年事件における刑事弁護士の活動~

少年事件では、通常の刑事事件と異なり,原則として全ての事件を家庭裁判所に送ることになっています(全件送致主義)。
一般に、少年は少年法によって過剰に保護されているなどといった印象をお持ちの方も多いかもしれません。
しかし,上記のような点から鑑みれば,むしろ少年法は少年に対し厳格な手続を採っているともいえるのです。
たとえば、成人であれば微罪処分不起訴処分が予想される軽微な事件でも、少年事件では原則どおり家庭裁判所に送致することが求められるからです。
もっとも、基本的に少年事件であっても、逮捕されてから家裁に送致されるまでの間は通常の刑事事件と変わるところはありません。
したがって、弁護士による接見によって、正確な刑事手続に関する知識を与え、安易に捜査官の取調べに流されないように勇気づける等のアプローチをすることが極めて重要になってくるのです。

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弊所は刑事事件を専門としているため、少年事件の経験も豊富な弁護士が多数所属しています。
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