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(事例紹介)電車に鍵をかけた威力業務妨害罪の疑いで少年を逮捕

2023-08-23

(事例紹介)電車に鍵をかけた威力業務妨害罪の疑いで少年を逮捕

今回は、電車のドアに鍵をかけて運行を遅らせたとして、威力業務妨害罪の疑いで17歳の少年が逮捕された報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。

・参考事例

鉄道グッズ店で購入した専用の鍵を使ってJR埼京線の電車のドアを施錠し運行を遅らせたとして、警視庁少年事件課は29日までに、威力業務妨害の疑いで、東京都内の高校2年の男子生徒(17)を逮捕した。

電車の撮影が趣味で「かつて運転士にハイビームにされて撮れなかったことがあり、仕返ししたかった」と容疑を認めている。

捜査関係者によると、生徒は都内の店舗で鍵を購入し、恵比寿―大崎間を走行中の車内で同じ車両の片側のドア3カ所を施錠したとみられる。
大崎駅に到着した電車のドアが開かず、約10分の遅延が生じた。
防犯カメラの捜査から浮上した。
(※2023年7月29日に『dmenuニュース』で配信された記事の内容を引用しています。)

・威力業務妨害罪とは

今回の事例で逮捕された少年の行為は、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。
威力業務妨害罪については、刑法第234条で以下のように規定されています。

  • 刑法第234条(威力業務妨害)
    威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

条文に記載されている「前条」とは、刑法第233条の信用毀損罪・業務妨害罪(偽計業務妨害罪)を指しています。

  • 刑法第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

威力業務妨害罪の条文で「前条の例による」と規定されているので、威力業務妨害罪が成立した場合は、信用毀損罪・偽計業務妨害罪と同様に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金で処罰されることになります。

威力業務妨害罪が成立するための要件としては、威力」を用いて「人の業務」を「妨害」していることが必要です。

「威力」とは、人(被害者)の意思を制圧するに足りる勢力を使用することを指します。
店内で暴れる行為や従業員に対して過剰なクレームをする行為も「威力」に該当します。

「人の業務」とは、人が社会生活において継続・反復して行う仕事を指します。
業務には、一般的な仕事以外にも、ボランティア活動や学校の授業なども該当します。
ただし、警察官などが強制力を行使する公務については、業務ではありません。
公務を妨害した場合は、威力業務妨害罪ではなく、公務執行妨害罪が成立します。

「妨害」については、実際に業務を妨害される行為だけでなく、業務を妨害するに足りる行為であればよいとされています。

今回の事例でAが行った電車のドアを施錠する行為は、運転手(人)の電車を運行するという意思を制圧して電車運行を遅らせているため、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

・お子様が威力業務妨害罪で逮捕されたら弁護士へ

少年事件と成人事件では、刑事事件を起こした場合の流れが少し異なります。
少年事件の場合は、警察から検察に送致された事件の全てが原則家庭裁判所に送られます。
また、身柄を拘束する必要がある場合の手続きも成人事件と異なる措置が取られる場合もあります。

少年事件に関する事件の流れを理解している人は多くはありません。
まして、お子様が逮捕されたと急に警察から連絡が来ると、気が動転してしまい、今後どうなるのか不安に感じてしまう方がほとんどです。
なので、お子様が事件を起こして逮捕されてしまった場合は、弁護士に弁護活動を依頼することをお勧めします。

弁護士に弁護活動を依頼すれば、弁護士から少年事件の詳しい流れや、お子様の今後の見通し、現在お子様が置かれている立場・状況などを詳しく丁寧に説明してくれるので、不安な気持ちを一人で抱え込まずに対処することができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、威力業務妨害罪はもちろん、様々な少年事件の弁護活動を担当した実績を持つ刑事事件・少年事件に特化した法律事務所です。
少年事件の弁護活動について、詳しく知りたいという方は、まずは24時間受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご相談ください。

(事例紹介)建造物損壊罪と威力業務妨害罪で少年ら3人を逮捕

2023-08-02

(事例紹介)建造物損壊罪と威力業務妨害罪で少年ら3人を逮捕

警察署に対する建造物損壊罪と威力業務妨害罪で、20歳未満の少年ら3人が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。

・参考事例

18~19歳の少年3人が、東京都にある警視庁昭島警察署の玄関前で、消火器の消火剤を噴射し、複数回打ち上げ花火を発射。

消火器を投げつけ、玄関扉の強化ガラス1枚(約27万円相当)を破壊したとして、同署は少年らを建造物損壊罪威力業務妨害罪の容疑で逮捕しました。

警察からの取調べに対し、少年らは「仲間が逮捕された仕返しをした」と容疑を認めています。
(※2023年5月30日に『朝日新聞デジタル』で掲載された記事の内容を一部変更しています。)

・威力業務妨害罪とは

今回の事例で、少年らが警視庁昭島警察署に対して行った行為は、威力業務妨害罪が成立しています。
威力業務妨害罪については、刑法第234条で以下のように規定されています。

  • 刑法第234条(威力業務妨害)
    威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

上記条文に記載されている「前条の例」とは、刑法第233条で規定されている信用毀損罪・偽計業務妨害罪と同様の罰則であることを指しています。

  • 刑法第233条(信用及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

つまり、威力業務妨害罪は、威力を用いて人の業務を妨害した者に対し、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の罰則を与える罪ということです。

「威力」とは、人の意思を制圧するに足る勢力の使用を指し、今回の事例で考えると、警察署の玄関で消火器を噴射したり打ち上げ花火を発射させる行為は、警察署に出入りしようとする人を制圧する行為に該当するため、少年らの行為は威力業務妨害罪が成立するということになります。

ちなみに、「警察署に対する業務妨害は公務執行妨害罪ではないのか?」と思った方もいるのではないでしょうか。

公務執行妨害罪が成立する行為は、公務員が職務を執行しているときに暴行・脅迫を加える行為です。

今回の事例で考えると、少年らの行為は、公務員である警察官ではなく警察署に対する行為だったため、公務執行妨害罪ではなく威力業務妨害罪が成立するということです。

・建造物損壊罪とは

今回の事例で、少年らは前述した威力業務妨害罪とは別に、建造物損壊罪の容疑もかけられています。
建造物損壊罪については、刑法第260条で以下のように規定されています。

  • 刑法第260条(建造物等損壊及び同致死傷)
    他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

建造物損壊罪が指す「損壊」の定義とは、建造物の本来の効用を滅却あるいは減損させる一切の行為とされています。

少年らは、警察署の玄関扉に消火器を投げつけ、玄関扉の強化ガラス1枚を破壊しているので、建造物である警察署の効用を減損させたとして、建造物損壊罪が成立します。

・少年事件の流れ

今回の事件で逮捕されたのは、18~19歳の少年です。

刑事事件において、20歳未満の者は「少年」として扱われ、成人が刑事事件を起こした場合に行う刑事手続きとは違う手続きが行われます。

警察が逮捕・取調べをして検察に送致するまでは成人も少年も同じ流れですが、少年の場合は、検察に送致された後は原則全ての事件が家庭裁判所に送致されます。

家庭裁判所に送致後は、送致された少年の法的調査と社会調査を行い、調査の結果を踏まえて、裁判官が審判(=少年事件における裁判のこと)にかけるかどうかを判断し、審判にかける場合は少年に対する最終的な処遇を決定します。

少年事件の詳しい流れについては、以下の記事でより詳しく解説しています。

少年事件・少年犯罪の流れ

・子どもが威力業務妨害罪・建造物損壊罪による少年事件を起こしてしまった方へ

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件に特化している専門の弁護士事務所です。

威力業務妨害罪や建造物損壊罪はもちろん、様々な少年事件の弁護活動・付添人活動を数多く行ってきた実績を持つ弁護士が多数在籍しています。

子どもが少年事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
初回無料の法律相談や、逮捕されている場合の初回接見サービスを提供していますので、ご予約の際は24時間受付中のフリーダイヤル(0120-631-881)までご連絡ください。

(事例紹介)威力業務妨害罪により少年が家庭裁判所へ送致

2023-07-19

(事例紹介)威力業務妨害罪により少年が家庭裁判所へ送致

今回は、回転寿司店における威力業務妨害の非行事実により少年が家庭裁判所へ送致された報道につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

・ケース

山口地検は27日、回転ずしチェーン「はま寿司」の山口県内の店舗で、レーン上のすしにわさびを勝手にのせる動画を拡散させたとして、威力業務妨害の疑いで書類送検された少年1人を家裁送致した。

今年1月、県内のはま寿司の店舗で、他の客が注文したとみられるレーン上のすしにわさびをのせる動画が交流サイト(SNS)上で拡散。
はま寿司が5月に被害届を提出し、山口県警が今月6日、はま寿司の業務を妨害したとして威力業務妨害の疑いで書類送検していた。
Yahoo!JAPANニュース6月27日「迷惑動画で少年を家裁送致 はま寿司、山口地検」より引用)

・飲食店における客の迷惑行為

今年に入ってから、飲食店における客の迷惑行為について注目が集まっており、以前ではあまり見られなかった、強い対応をとる企業も増えてきているようです。
冒頭で紹介した記事がその一例といえます。

・家庭裁判所送致とは?

少年事件ではない刑事事件においては、警察、検察が事件を捜査した後、検察官が起訴、不起訴の別を決定するのが通常です(軽微な事件では警察限りで事件が終了する場合もあります)。
前述の刑事手続においては、被疑者を裁判にかけるか否かについて、検察官が裁量を有していることになります。

これに対し少年事件では全件送致主義がとられており、家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合には、すべての事件を家庭裁判所に送致することが捜査機関に義務付けられています(少年法第41条、42条)。

・家庭裁判所に送致された後は?

家庭裁判所に送致された後は、非行事実のほか、少年の生い立ち性格家庭環境などが調査されます。
調査は在宅で行われる場合もあれば、少年鑑別所に少年を収容した上で実施される場合もあります。

調査の後に審判が開かれた場合、家庭裁判所は必要に応じて保護処分を決定したり(少年院送致,保護観察処分など)、刑事処分が相当であると判断すれば、検察官送致(逆送)を決定することになります。

また、特に処分の必要がないとして不処分とする場合もあります。

・最後に

少年法では、少年の年齢によって異なる処分を予定していることがあり、その内容はかなり複雑です。
少年事件を有利に解決するためには、少年事件に熟練した弁護士のアドバイスが役立ちます。

お子様が少年事件の被疑者となった場合や、家庭裁判所の審判を受けることになってしまい、どうすればよいかわからない、という場合には、少年事件に詳しい弁護士のアドバイスを受け、今後の対応を検討することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
少年事件に関してお悩みの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)少年が電車内で起こした威力業務妨害事件

2023-06-21

(事例紹介)少年が電車内で起こした威力業務妨害事件

少年が電車内で起こしたとされる威力業務妨害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。

・参考事例

電車内で唐辛子成分入りのスプレーを噴射したとして、警視庁は大学生の男(19)=東京都…区=と建設作業員の男(19)=同=を威力業務妨害容疑で逮捕し、1日発表した。
大学生は「大騒ぎになると思わなかった」と供述。
建設作業員は「やっていない」と話し、いずれも容疑を否認しているという。

下谷署によると、2人は共謀して5月4日午後11時45分ごろ、上野―入谷駅間を走行中の東京メトロ日比谷線の電車内で、スプレーを噴射し、入谷駅員らに点検などを行わせて業務を妨害した疑いがある。
署によると、スプレーは量販店で売られていた防犯用で、唐辛子成分が含まれていたという。乗客の男女5人が体調不良などを訴えていた。
(以下、略)

(朝日新聞デジタル令和5年6月1日(木)13時30分配信「日比谷線内で唐辛子成分入りスプレー噴射した疑い 19歳2人を逮捕」より引用)

・威力業務妨害罪

参考事件の19歳の少年2人は、威力業務妨害容疑で逮捕されています。
威力業務妨害罪の条文は以下のとおりです。

(威力業務妨害罪)
刑法234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

前条とは、偽計業務妨害罪・信用毀損罪を指します。

刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法233条では、「虚偽の風説」「偽計」のいずれかを用いることが前提となり、「人の信用を毀損し」た場合には信用毀損罪が、「業務を妨害した」場合には偽計業務妨害罪が、それぞれ成立すると定めています。
偽計業務妨害罪、信用毀損罪、威力業務妨害の法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

刑法234条における威力とは暴行・脅迫、社会的・経済的地位を利用した威迫、集団での力の誇示、物の損壊、騒音などの多くが含まれ、「人の意思を抑圧するに足りる勢力」が威力とされています。
この威力の行使は、被害者の目の前で行われている必要はありません。
威力を用いた結果として、それさえなければ遂行されたはずの本来の業務ができなくなったのであれば、威力業務妨害罪は適用されます。

・少年事件の対応

参考事件で事件を起こしたのは共に19歳の少年です。
被疑者(罪を犯したとして疑われている者)が20歳未満の場合、少年事件の手続きとして進められます。
但し、少年事件の手続きで進められている過程で20歳の誕生日を迎えた場合、原則として成人の刑事事件に切り替わりますので、注意が必要です。

14歳以上で20歳未満の少年が罪を犯したとして捜査され、結果として非行事実が認められた場合、その処分は上述した罰金や服役ではなく、少年院送致や保護観察などの少年法に則った保護処分が下される可能性があります。
保護処分を課すか課さないかを検討する際に重要になるのは少年の「要保護性」と呼ばれるものです。
要保護性とは将来の再非行の可能性を意味し、要保護性が高いということは少年院送致を含めた保護処分が必要であり、要保護性が低い(ない)ということは、少年の性格や生活環境を鑑みて再非行のおそれが低いということになります。

少年院送致や児童自立支援施設送致といった保護処分を言い渡されて施設処遇を受けることで、少年が更生に向かう場合もあります。
他方で、社会から一定の距離を置くことによる心理的負担や、少年のその後の人生を考えた時にいわば空白期間が生じるおそれがあります。
弁護士としては、少年の付添人という立場で、少年にとってどのような保護処分が必要か(あるいは不要であるか)を検討し、お子さんにも保護者の方にも然るべき指導をしつつ、家庭裁判所等に対して適切な主張を行っていく必要があります。

20歳未満のお子さんが威力業務妨害罪などの刑事事件で逮捕され、家庭裁判所に送致され保護処分を受ける可能性があるという場合、すぐに少年事件・刑事事件の弁護活動が豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。

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