(事例紹介)少年が電車内で起こした威力業務妨害事件

2023-06-21

(事例紹介)少年が電車内で起こした威力業務妨害事件

少年が電車内で起こしたとされる威力業務妨害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。

・参考事例

電車内で唐辛子成分入りのスプレーを噴射したとして、警視庁は大学生の男(19)=東京都…区=と建設作業員の男(19)=同=を威力業務妨害容疑で逮捕し、1日発表した。
大学生は「大騒ぎになると思わなかった」と供述。
建設作業員は「やっていない」と話し、いずれも容疑を否認しているという。

下谷署によると、2人は共謀して5月4日午後11時45分ごろ、上野―入谷駅間を走行中の東京メトロ日比谷線の電車内で、スプレーを噴射し、入谷駅員らに点検などを行わせて業務を妨害した疑いがある。
署によると、スプレーは量販店で売られていた防犯用で、唐辛子成分が含まれていたという。乗客の男女5人が体調不良などを訴えていた。
(以下、略)

(朝日新聞デジタル令和5年6月1日(木)13時30分配信「日比谷線内で唐辛子成分入りスプレー噴射した疑い 19歳2人を逮捕」より引用)

・威力業務妨害罪

参考事件の19歳の少年2人は、威力業務妨害容疑で逮捕されています。
威力業務妨害罪の条文は以下のとおりです。

(威力業務妨害罪)
刑法234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

前条とは、偽計業務妨害罪・信用毀損罪を指します。

刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法233条では、「虚偽の風説」「偽計」のいずれかを用いることが前提となり、「人の信用を毀損し」た場合には信用毀損罪が、「業務を妨害した」場合には偽計業務妨害罪が、それぞれ成立すると定めています。
偽計業務妨害罪、信用毀損罪、威力業務妨害の法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

刑法234条における威力とは暴行・脅迫、社会的・経済的地位を利用した威迫、集団での力の誇示、物の損壊、騒音などの多くが含まれ、「人の意思を抑圧するに足りる勢力」が威力とされています。
この威力の行使は、被害者の目の前で行われている必要はありません。
威力を用いた結果として、それさえなければ遂行されたはずの本来の業務ができなくなったのであれば、威力業務妨害罪は適用されます。

・少年事件の対応

参考事件で事件を起こしたのは共に19歳の少年です。
被疑者(罪を犯したとして疑われている者)が20歳未満の場合、少年事件の手続きとして進められます。
但し、少年事件の手続きで進められている過程で20歳の誕生日を迎えた場合、原則として成人の刑事事件に切り替わりますので、注意が必要です。

14歳以上で20歳未満の少年が罪を犯したとして捜査され、結果として非行事実が認められた場合、その処分は上述した罰金や服役ではなく、少年院送致や保護観察などの少年法に則った保護処分が下される可能性があります。
保護処分を課すか課さないかを検討する際に重要になるのは少年の「要保護性」と呼ばれるものです。
要保護性とは将来の再非行の可能性を意味し、要保護性が高いということは少年院送致を含めた保護処分が必要であり、要保護性が低い(ない)ということは、少年の性格や生活環境を鑑みて再非行のおそれが低いということになります。

少年院送致や児童自立支援施設送致といった保護処分を言い渡されて施設処遇を受けることで、少年が更生に向かう場合もあります。
他方で、社会から一定の距離を置くことによる心理的負担や、少年のその後の人生を考えた時にいわば空白期間が生じるおそれがあります。
弁護士としては、少年の付添人という立場で、少年にとってどのような保護処分が必要か(あるいは不要であるか)を検討し、お子さんにも保護者の方にも然るべき指導をしつつ、家庭裁判所等に対して適切な主張を行っていく必要があります。

20歳未満のお子さんが威力業務妨害罪などの刑事事件で逮捕され、家庭裁判所に送致され保護処分を受ける可能性があるという場合、すぐに少年事件・刑事事件の弁護活動が豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。

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