少年事件と全件送致主義

2019-06-14

少年事件と全件送致主義

高校生のA君は、運転免許を持たないのに、興味本位で親名義の車を運転したところ、自損事故を起こしてしまいました。近くの人がA君が運転する車にかけより、A君の無事を確認して110番通報しました。そして、A君は、現場に来た警視庁東大和警察署の警察官に無免許運転の疑いで事情を聴かれることになりました。警察の調べでは、A君がこれまで繰り返し無免許運転していたことが判明しました。その後、A君の事件(道路交通法違反)は警察から検察庁、検察庁から家庭裁判所へと送られました。
(フィクションです。)

~ 全件送致主義 ~

少年(20歳に満たない者)の事件は,警察,検察での捜査が終わると,例外的な場合を除き家庭裁判所へ送致されます。これを全件送致主義といいます。少年法にその根拠がありますので、一応、その条文を載せておきます。

少年法41条
 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があると思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

少年法42条1項
 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第45条第5号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

なお、検察官を経由せずに、司法警察員から直接家庭裁判所へ送致される事件は「直送事件」とも呼ばれています。「罰金以下の刑にあたる犯罪」とは、その罪の法定刑に罰金刑、拘留、科料の刑が定められている犯罪をいいます。具体的には、軽犯罪法の各号に定められる罪、各都道府県が定める青少年育成条例の自撮り画像要求行為に関する罪(都道府県によっては定められていないところもあります)などがあります。

~ どうして全件送致主義?? ~

成人(20歳以上の者)事件の場合、検察官の裁量によって、事件を不起訴処分、つまり裁判所の審判を仰ぐ必要のない判断をすることができます。では、なぜ、少年事件は、基本的に事件を裁判所へ送致する「全件送致主義」が取られているのでしょうか?これは一見すると、成人事件より少年事件の方が取扱が厳しいのではないかとの見方をすることもできます。

それは、一言でいうと、少年法が

少年の健全な育成

をも目的としている(少年法1条)からだといえます。
少年事件の場合、犯罪の嫌疑がある場合はもちろん、犯罪の嫌疑がない場合であっても、そう疑われるに至った経緯・背景には様々あると思います。そうした経緯・背景には、少年自身の性格、少年の取り巻く環境(家庭、学校、交友関係など)などに関する問題が影響しているのです。そこで、そうした問題を一つ一つ丁寧に調査し、少年の性格を矯正し、少年を取り巻く環境を整備することで健全な大人へと育っていってもらうことを少年法は期待していると考えられます。また、そうした調査や、少年への働きかけ、少年を取り巻く環境調整は、警察や検察の捜査機関が行うには限界があります。少年や少年を取り巻く環境の問題を調査し、それを少年の更生に繋げるのは捜査機関よりも家庭裁判所の方が適しています。そこで、全件送致主義が取られているのです。

~ おわりに ~

少年事件を担当する弁護士は、少年法が全件送致主義を採用している趣旨を組んで、少年が抱える問題に真摯に向き合いながら弁護活動を行います。お困りの方は、弊所の弁護士までご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件少年事件専門の法律事務所です。少年事件でお困りの方はフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見(有料)を24時間受け付けております。

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