盗品等無償譲受罪での少年審判

2020-02-12

盗品等無償譲受罪での少年審判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。 

~ 事例 ~

神奈川県大和市に住む高校生A(16歳)は、友人からもらったバイクに乗っていたところ。、神奈川県大和警察署の警察官に職務質問されました。
そこでバイクが盗品であることが判明し、Aは,盗品等無償譲受罪で逮捕され(その後釈放)ましたが、Aはバイクを譲り受けた時点では盗品とは知りませんでした。
Aは,少年審判で無実を訴えたいと考えています。
(フィクションです)

~ 盗品等無償譲受罪(刑法256条) ~

盗品等無償譲受とは、盗品その他財物に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けることで、刑法第256条で「3年以下の懲役」の罰則が規定されています。
盗品その他財物に対する罪とは、窃盗罪や横領罪によって不法領得した財物は当然のこと、詐欺罪や恐喝罪によって不正に取得した財物も対象になります。

また、財産罪によって領得された財物が盗品等となるのですが、ここにいう犯罪行為は、構成要件に該当する違法行為であれば足り、必ずしも有責であることを必要としません。
つまり財産罪を犯した犯人が、刑事未成年者であったり、親族間の犯罪に関する特例の適用によって刑の免除を受たりしている場合や、本犯の公訴時効が完成している場合でも、盗品等無償譲受けの罪は成立してしまうのです。
財産罪の実行行為に加担していた者は、財産罪の共犯となるので、盗品等の罪の主体にはなり得ませんが、財産罪の教唆者や幇助者は、財産罪の実行行為を分担するのではないので、盗品等の罪の主体となり得ます。

盗品等無償譲受罪は故意犯です。
この罪が成立するには、行為者に盗品であることの認識がなければなりません。
この認識は、いかなる財産罪によって取得した物なのか、犯人や被害者が誰なのか等の詳細まで必要とされませんが、その財物が何らかの財産犯によって領得された物であることの認識は必要です。
ただ、Aのように盗品とは全く知らなかったという場合には、盗品等に関する罪の故意を欠き、盗品等無償譲受罪が成立しない場合もあるのです。

~ 少年事件の流れ ~

・逮捕

少年事件であっても逮捕の要件を満たし、逮捕の必要がある場合は、成人被疑者と同様に逮捕されます。
警察に逮捕された後は、留置の必要が無くならない限りは警察署の留置場に留置されることとなります。

・送致後(勾留・観護措置等)
逮捕から48時間以内に釈放されなければ、少年は、検察庁に送致されます。
送致を受けた検察官は、裁判所に対して勾留請求、又は家庭裁判所に観護措置を請求若しくは少年を釈放します。

・勾留
逃走のおそれや、証拠を隠滅するおそれがあり、引き続き捜査の必要がある場合、裁判官は勾留を決定する可能性があります。
勾留の期間は10日から20日間で、基本的には、その期間中、捜査を担当する警察署の留置場に収容されることとなります。
ただし少年法で、検察官は、少年の被疑事件においてはやむを得ない場合でなければ裁判官に勾留請求できない旨が明記されています。
そのため裁判官が、勾留に代わる観護措置という決定をすることがあります。

・勾留に代わる観護措置
勾留に代わる観護措置とは、名称こそ観護措置となっていますが、この期間中には警察等捜査当局による取調べなどの捜査が行われるので実質的には勾留と差異はありません。
勾留に代わる観護措置は、10日間の満期後に、新たに裁判官の判断をあおぐことなく、自動的に観護措置が決定してしまうので、勾留後に観護措置が認められなかった場合に比べると、身体拘束期間が長くなるという大きなデメリットがあります。

・観護措置
主に家庭裁判所に送致された少年審判を円滑に進めたり、少年の処分を適切に決めるための検査を行ったりするために、少年を少年鑑別所に一定期間収容することです。
観護措置は、検察から送致を受けた家庭裁判所の裁判官が決定し、その期間は一般的に4週間です。
上記勾留や、勾留に代わる観護措置の後に観護措置が決定する他、これらの手続きを経ることなく、観護措置が決定して少年鑑別所に収容されることもあります。

~ 少年審判で無罪を主張 ~

少年審判は、少年に対する非行(犯罪)事実が認められるか、認められるとして少年に対する処分(保護観察、少年院送致などの保護処分等)をいかなるものにするかを決める手続きです。

したがって、少年事件が少年審判に付された場合、少年審判で犯罪の成立を争うことになります。
仮に、少年審判で、非行(犯罪)事実が認められない(非行なし)、つまり「保護処分に付することができない」(少年法23条2項)と判断された場合は、少年に対し「不処分」決定が下されます。
これは成人事件でいう「無罪」判決に相当します。

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