(事例紹介)建造物損壊罪と威力業務妨害罪で少年ら3人を逮捕

2023-08-02

(事例紹介)建造物損壊罪と威力業務妨害罪で少年ら3人を逮捕

警察署に対する建造物損壊罪と威力業務妨害罪で、20歳未満の少年ら3人が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。

・参考事例

18~19歳の少年3人が、東京都にある警視庁昭島警察署の玄関前で、消火器の消火剤を噴射し、複数回打ち上げ花火を発射。

消火器を投げつけ、玄関扉の強化ガラス1枚(約27万円相当)を破壊したとして、同署は少年らを建造物損壊罪威力業務妨害罪の容疑で逮捕しました。

警察からの取調べに対し、少年らは「仲間が逮捕された仕返しをした」と容疑を認めています。
(※2023年5月30日に『朝日新聞デジタル』で掲載された記事の内容を一部変更しています。)

・威力業務妨害罪とは

今回の事例で、少年らが警視庁昭島警察署に対して行った行為は、威力業務妨害罪が成立しています。
威力業務妨害罪については、刑法第234条で以下のように規定されています。

  • 刑法第234条(威力業務妨害)
    威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

上記条文に記載されている「前条の例」とは、刑法第233条で規定されている信用毀損罪・偽計業務妨害罪と同様の罰則であることを指しています。

  • 刑法第233条(信用及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

つまり、威力業務妨害罪は、威力を用いて人の業務を妨害した者に対し、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の罰則を与える罪ということです。

「威力」とは、人の意思を制圧するに足る勢力の使用を指し、今回の事例で考えると、警察署の玄関で消火器を噴射したり打ち上げ花火を発射させる行為は、警察署に出入りしようとする人を制圧する行為に該当するため、少年らの行為は威力業務妨害罪が成立するということになります。

ちなみに、「警察署に対する業務妨害は公務執行妨害罪ではないのか?」と思った方もいるのではないでしょうか。

公務執行妨害罪が成立する行為は、公務員が職務を執行しているときに暴行・脅迫を加える行為です。

今回の事例で考えると、少年らの行為は、公務員である警察官ではなく警察署に対する行為だったため、公務執行妨害罪ではなく威力業務妨害罪が成立するということです。

・建造物損壊罪とは

今回の事例で、少年らは前述した威力業務妨害罪とは別に、建造物損壊罪の容疑もかけられています。
建造物損壊罪については、刑法第260条で以下のように規定されています。

  • 刑法第260条(建造物等損壊及び同致死傷)
    他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

建造物損壊罪が指す「損壊」の定義とは、建造物の本来の効用を滅却あるいは減損させる一切の行為とされています。

少年らは、警察署の玄関扉に消火器を投げつけ、玄関扉の強化ガラス1枚を破壊しているので、建造物である警察署の効用を減損させたとして、建造物損壊罪が成立します。

・少年事件の流れ

今回の事件で逮捕されたのは、18~19歳の少年です。

刑事事件において、20歳未満の者は「少年」として扱われ、成人が刑事事件を起こした場合に行う刑事手続きとは違う手続きが行われます。

警察が逮捕・取調べをして検察に送致するまでは成人も少年も同じ流れですが、少年の場合は、検察に送致された後は原則全ての事件が家庭裁判所に送致されます。

家庭裁判所に送致後は、送致された少年の法的調査と社会調査を行い、調査の結果を踏まえて、裁判官が審判(=少年事件における裁判のこと)にかけるかどうかを判断し、審判にかける場合は少年に対する最終的な処遇を決定します。

少年事件の詳しい流れについては、以下の記事でより詳しく解説しています。

少年事件・少年犯罪の流れ

・子どもが威力業務妨害罪・建造物損壊罪による少年事件を起こしてしまった方へ

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