(事例紹介)乳児の死体遺棄事件で逮捕された19歳の母親を逆送

2023-07-26

(事例紹介)乳児の死体遺棄事件で逮捕された19歳の母親を逆送

生後間もなく死亡した男児をそのまま遺棄したとして、死体遺棄罪の疑いで逮捕された19歳の母親が、家庭裁判所に送致された後に逆送が決定されたという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。

・参考事例

広島県東広島市で生後間もない男児の遺体が見つかった事件で、広島家裁は、死体遺棄の疑いで逮捕、家裁送致された母親でベトナム国籍の技能実習生の女A(19)の少年審判を開き、検察官送致(逆送)を決定しました。

決定などによると、Aは実習先の寮で男児を出産。
間もなく死亡したため、自分のベッドに遺体を寝かせて生活を続けたが、出産の事実が周りに知られると、帰国させられるかもしれないと考え、近くの空き地に穴を掘って遺体を埋めて遺棄したとされています。

裁判官は決定理由で「わが子の死体を敬う意識を欠くなど責任を軽視することはできない」と指摘し、日本語の会話能力が著しく低いため「保護処分による更生を援助することも困難」などとして、刑事処分が相当としました。
(※6月1日に掲載された『Yahoo!ニュース』記事の一部を変更しています)

・死体遺棄罪(死体損壊等罪)

死体遺棄罪とは、文字通り死体を遺棄したときに成立する犯罪で、刑法第190条で規定されている死体損壊罪の中に含まれています。

  • 刑法第190条(死体損壊等)
    死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

「死体」とは死亡した人の身体を指し、「遺棄」とは通常の埋葬と認められない方法で死体を放棄することを指します。

今回の事例では、Aは出産したことが周囲に知られると帰国させられるかもしれないと思い、死亡した男児を近くの空き地に穴を掘って埋めています。

この行為は、死亡した人の身体を通常の埋葬と認められない方法で放棄しているため、死体遺棄罪が成立することになります。

・逆送(検察官逆送)とは

逆送とは、14歳以上20歳未満の少年が刑事事件を起こした際に行われる特別な手続きを指します。

少年事件では、警察から検察に送致された後、原則全ての刑事事件が検察から家庭裁判所に送致されます。

家庭裁判所に送致された後、少年に対する調査が行われ、調査結果を踏まえた上で、裁判官が審判を行うかどうかの判断や、審判を行う場合の最終的な処遇を決定します。

本来、少年事件は処罰を与えることより更生させることに重きを置いているため、刑事処罰ではなく保護処分を課すことが優先されます。

ただ、家庭裁判所の審判において、少年に対し刑事処罰が相当であると判断されると、事件が家庭裁判所から検察官に戻されることになります。

このように、刑事処罰が相当であると審判で判断された少年事件が家庭裁判所から検察官に送致されることを逆送(検察官逆送)と言います。

逆送には、以下2つの種類があります。

1.年齢超過による逆送

少年事件が家庭裁判所に送致され、調査・審判を行っている段階で、少年の年齢が20歳以上と判明したことにより、事件を成人と同様の刑事手続きに戻すために行われる逆送です。

20歳以上かどうかの判断は、事件当時ではなく、家庭裁判所に送致されて調査・審判が行われている時点で判断されます。

2.刑事処分が相当であることによる逆送

死刑、懲役又は禁固に当たる事件について、家庭裁判所による調査の結果、罪質及び情状に照らして、家庭裁判所が刑事処分が相当であると認めることにより行われる逆送です。

事件当時16歳以上の少年で、故意の犯罪行為で被害者を死亡させた事件や、犯罪行為時18~19歳の特定少年で、死刑、無期又は短期1年以上の懲役、禁固に当たる事件に関しては、原則逆送されます。

今回の事例で考えると、Aは事件当時19歳の特定少年であり、死体遺棄罪の罰則は3年以下の懲役刑のみであること、Aの日本語会話力が著しく低く保護処分による更生を援助することが困難であることから、裁判官は逆送を決定したということになります。

・逆送を防ぐためには弁護士へ依頼を

逆送されてしまえば、成人の刑事事件と同様の刑事手続きが行われます。

また、逆送されると、ほとんどの少年は刑事処分を受けることになるため、未然に逆送を防ぐためには、少年事件に強い専門の弁護士に付添人活動を依頼することが重要です。

弁護士に依頼すれば、弁護士が少年の付添人として、裁判官に対して刑事処分が相当であると判断させないために、少年が保護処分で更生できること等を主張し、逆送を防ぐために尽力します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件に特化した専門の弁護士事務所です。
お子さんが事件を起こし、逆送されないか不安を抱えている方は、24時間受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)お問い合わせメールよりご連絡ください。

 

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