少年の事後強盗致傷事件

2020-05-29

今回は、高校生が事後強盗致傷事件を起こしてしまった場合における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

横浜市保土ヶ谷区に住む高校2年生のAくん(17歳)は、スーパーでお菓子を万引きし店外に出たところ、警備員に肩を掴まれたので、これを振り払いました。
すると、振り払ったAくんの手の爪が警備員の顔に当たってしまい、擦過傷を負わせてしまいました。
揉みあいの末、Aくんは警備員に取り押さえられ、通報により駆け付けた神奈川県保土ヶ谷警察署の警察官により、事後強盗致傷の疑いで引致されることになってしまいました。(フィクションです)

~Aくんが疑われている事後強盗致傷罪を解説~

刑法第238条は、「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる」と規定しています。
これによれば、軽微な万引きをした場合であっても、①逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、②暴行又は脅迫を行うと、事後強盗事件として取り扱われ、強盗罪と同じ法定刑で処罰されることになります(ケースの場合は少年事件なので、原則として刑罰を受けることはありません)。

さらに、刑法第240条は「強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する」としています。
刑法第240条の「強盗」には、事後強盗犯も含まれます。
したがって、事後強盗犯が暴行又は脅迫を行い、人を死傷させた場合においては、事後強盗致死傷罪が成立することになります。
こうなると万引きでは済まされず、深刻な事態となります。

~今後の弁護活動~

(早期の身柄解放活動)
少年事件においても、成人の刑事事件と同様に、逮捕・勾留される可能性があります。
身元引受人(主にAくんの親や、親族など)を用意するなどして、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがないことを説得的に主張することが必要です。

(罪名を軽くする弁護活動)
もし、嫌疑が事後強盗致傷ではなく、窃盗、傷害事件に変更されればどうでしょうか。
この場合、罪名が軽くなったといえるので、最終的にAくんになされる処分が軽くなることが期待できます。

ケースのAくんは万引き後、自身の肩を掴む警備員の手を振り払ったにすぎません。
ところが、刑法第238条の「暴行又は脅迫」の程度は、相手の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要します(大審院昭和19年2月8日判決)。

Aくんが警備員の手を振り払った行為は、刑法第238条の暴行に該当しない、と主張することが考えられます。

捜査機関がこれに納得すれば、嫌疑が事後強盗致傷から、窃盗、傷害に落ちることが期待できます。

~家庭裁判所の審判~

警察、検察での捜査が終われば、Aくんは家庭裁判所に送致されることになります。
送致後、Aくんについて「観護措置」をとるか否かが決定されます。
観護措置をとられてしまうと、少年鑑別所に収容され、Aくんの心身の調査などが行われることになります。
在宅でも調査ができることを訴え、少年鑑別所に収容されずにすむよう働きかける必要があります。

~有利な処分の獲得~

少年審判が開始されると、必要に応じてAくんに保護処分が言い渡されることになります。
非行事実が事後強盗致傷である場合、少年院送致を含む重い処分が言い渡される可能性があります。

しかし、前述の通り、窃盗・傷害の非行事実に落とすことができれば、保護観察処分不処分など、かなり有利な処分を獲得できる可能性が高まります。

早期に適切な弁護活動を開始し、有利な事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
高校生のお子様が事後強盗致傷事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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