放火,失火
現住建造物等放火罪の法定刑は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役です(刑法第108条)。非現住建造物等放火罪の法定刑は,2年以上の懲役です(刑法第109条)。建造物等以外放火罪の法定刑は,1年以上10年以下の懲役です(刑法第110条1項)。 ただし,自己の所有にかかるものの場合は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金となります。失火罪の法定刑は,50万円以下の罰金となります。
放火,失火罪の解説
1 放火罪とは
「放火」とは,目的物の燃焼を惹起させる行為,あるいはそれに原因力を与える行為をいいます。 直接その目的物に点火して発火させる行為や,媒介物に点火して目的物に導火させる行為だけでなく,すでに火のついているところに油を注ぐ行為のように,既発の火力の勢いを助長し,増幅させる行為も「放火」に該当する可能性があります。 放火罪のうち最も重い法定刑が定められている現住建造物等放火罪が成立するためには,少年に,現に人が住んでいる又は現に人が存在する認識が必要となります。 したがって,ただの空き家だと思って放火してしまった場合には,現住建造物等放火罪は成立せず,非現住建造物等放火罪が成立するにとどまることになります。
2 失火罪とは
「失火」とは,過失により出火させることをいいます。 ここにいう過失とは,出火して客体を損傷するに至るような事情があり,このような事情を認識できたのに認識しなかったこと,あるいは出火の危険性がないと軽信して出火防止のために適切な手段を講じなかったことをいいます。
少年による放火,失火事件の対応方法
1 無罪を主張する場合
身に覚えがないにも関わらず、放火,失火の容疑を掛けられてしまった場合、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して、審判不開始又は不処分を獲得する余地があります。 アリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出することで、放火,失火を立証する十分な証拠がないことなどを主張していきます。 また,人が住んでいるとは思っていなかった(現住性に関する故意の否認)場合には,故意がなかったことを客観的証拠に基づいて指摘することで、現住建造物等放火罪を立証する十分な証拠がないことを指摘したりすることで処分が軽くなることを目指します。 放火,失火で警察に検挙・逮捕された少年の方は、本人の性格、不安や諦めの気持ち、友人・知人を庇うなど様々な原因から自分の主張を貫くことが困難になります。 弁護士が、少年本人と接見(面会)して言い分を丁寧に聞き取ってあげることで、放火,失火の詳細を把握し、少年本人の主張が通るように警察・検察などの捜査機関や家庭裁判所に働きかけていきます。 また、弁護士との接見(面会)によって少年を安心させ、支えてあげることで、少年の虚偽の自白を防いで真の更生につなげることが可能になります。
2 罪を認める場合
⑴ 謝罪,示談をする
被害者感情が重要視される昨今、少年による放火,失火事件においても、被害者の方と示談することは、重要な弁護活動です。 少年による放火,失火事件においても、示談をすることによって、より軽い処分を獲得する可能性を高めることができます。 少年による放火,失火事件では、被害弁償や示談の有無及び被害者の処罰感情が少年の処分に大きく影響することになるので、弁護士を介して迅速で納得のいく示談をすることが重要です。 また、示談をすることで少年が釈放される可能性もありますので、示談によって少年の早期の学校復帰・社会復帰を目指すことができます。
⑵ 環境を整える
暴走族や地元の不良仲間との交遊関係が非行の背景にある場合は、交遊関係の見直しを含めた生活環境の改善が必要となります。 生活環境を立て直すためにはご家族の協力が不可欠となることから,ご家族には日常生活の中で本人を監督してもらうことになります。
3 身柄拘束からの早期解放活動
少年が放火,失火事件で逮捕されても、適切な取り調べ対応と弁護活動によって留置場や鑑別所に入れられずに済む可能性があります。 放火,失火事件で逮捕された少年が早く留置場から出て鑑別所に行かずに済むためには、逮捕の後に勾留されないこと又は家庭裁判所による観護措置を回避することが大切です。 少年の勾留や観護措置を避けるためには、逮捕後の早い段階で、弁護士と面会して取り調べ対応を協議し、身元引受人の協力を得ることが大切です。 その上で、弁護士から検察官や裁判官に対して、少年の反省と二度と放火,失火事件を起こさない旨を主張し、釈放してもらうよう働きかけます。