前科を避けたい
1 前科とは
「前科」は,法律上の言葉ではなく,明確な定義があるわけではありません。
一般的に,前科とは,過去に受けた刑罰の経歴のことをいうとされています。
一般的な前科がついた場合の措置としては,罰金以上の刑に処せられた者が,検察庁の管理する前科調書に記載され,本籍地の市区町村で管理される犯罪人名簿に一定期間掲載されることなどがあげられます。
前科の有無・内容は裁判の際の量刑を大きく左右するとともに,前科の記録された市区町村の犯罪人名簿は,前科が一定の職業について資格取得の欠格事由になっていないかを確認したり,選挙権や被選挙権の有無を確認したりするために用いられます。
2 前科を付けないためには
成人の場合,前科をつけない為の有効な手段として,微罪処分,起訴猶予処分を獲得することが挙げられます。
微罪処分とは,警察が,罪を犯した成人の事件を検察に送致することなく,刑事手続を警察段階で終了させる刑事手続をいいます。
起訴猶予処分とは,公訴を提起せずに,検察段階で事件を終了させる手続きをいいます。
どちらも事件が軽微である場合に認められることが多いのが特徴です。
しかし,少年の場合には,成人の刑事事件と異なり,捜査機関が捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があると判断したときは,仮に事件が軽微であったとしても,すべての事件を家庭裁判所に送致することとされています(少年法第41条,42条)。
このことを全件送致主義といいます。
もっとも,少年事件・少年犯罪の場合,家庭裁判所による審判で手続きが終了すれば,前科はつかないことになります。
そこで,少年事件・少年犯罪の場合に前科を付けないための手段としては,刑事裁判が開かれないこと,すなわち,審判の結果,検察官に送致されること(このことを「逆送」といいます。)を防ぐことが重要となります。
3 逆送を防ぐためには
逆送を防ぐためには,家庭裁判所の裁判官に対し,少年の処分として刑事処分は適さないことを主張する必要があります。
具体的には,家庭裁判所による審判までの期間で,できる限り少年の内省を深め,少年を取り巻く環境を調整するとともに,調査官・裁判官と協議する等して,少年にとって保護処分等がふさわしいことを裁判所に対して強く主張し,逆送を回避する活動を行います。