少年が大麻所持の共犯事件で逮捕

2021-06-10

少年が大麻所持の共犯事件で逮捕されてしまった事件を題材に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

路上に停車中のB所有の自動車内に、少年Aを含めた少年ら3人が同乗していた。
不審に思った警察官が職務質問をすると、同車のダッシュボード内から大麻が発見された。
警察官は、Aらを大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕した。
なお、少年Aは車内に大麻があることは知らなかったとして容疑を否認している。
Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~少年らによる共犯事件~

まず、大麻取締法は24条の2において、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する」との規定を定めています。
本件では、同条の中でも大麻の「所持」が問題となりますが、ここにいう「所持」とはその存在を認識してこれを管理し処分し得る状態にあることをいうものと解されています。
もっとも、本件少年AはB所有の自動車内に大麻があることは知らなかったとして容疑を否認しています。
では、上記のように具体的な大麻の存在の認識がない場合にも、大麻所持罪が成立しうるのでしょうか。

刑法60条は「共同正犯」というタイトルの下、「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」旨の規定を置いています。
同条に該当する者は、「すべて正犯とする」と規定されていることから、正犯としての責任を負うことになります。
すなわち、仮に共犯者の一部が犯罪を実行した場合にも、他の共犯者は「すべて正犯」として第一次的な責任を負うことになるのです。
実務上、共同正犯が成立する要件としては、①共謀と②この共謀に基づく実行が必要であるとされ、①共謀とは意思連絡と正犯意思からなるものと解されています。
意思連絡とはいわば当該犯罪の実行に関する合意であり、判例によればこれは明示のものがなかったとしても黙示のものがあれば足りるとされています。
また、正犯意思としては、共犯者と目される者が自己の犯罪として関与したことが必要となります。
本件においては、仮にAに本件車内における大麻の所持の具体的な認識がなかったとしても、Bら他の共犯者との間の人的関係や薬物入手における役割、明示又は黙示の意思連絡などの存在を通して、共謀が認められうることに注意を要します。
したがって、Aと他の少年との間に共謀が認められる場合は、これに基づきB車内において大麻所持の実行がなされている以上は、Aにも大麻所持罪が成立することになります。

~少年事件と不起訴処分~

本件のような少年事件では、少年法が適用されることになりますが、逮捕から家庭裁判所送致に至るまでの流れは、基本的には通常の刑事事件と大きく異なることはありません。
他方で、少年事件の特色として、全件家裁送致主義(少年法41条、42条)が採られていることから、起訴猶予による不起訴(刑事訴訟法248条参照)となることはないことに注意が必要です。
もっとも、一般に不起訴事由とは起訴猶予に限られるわけではなく、少年法の適用のある少年事件においても嫌疑不十分等として家裁送致されない可能性はあります。
したがって弁護士としては、そもそも少年Aと他の者の間には共同正犯(刑法60条)の成立の前提となる共謀がなかったこと等、犯罪の成立の前提となる事情につき争うことも考えられます。

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