少年鑑別所と少年院

2020-07-31

少年鑑別所と少年院について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

~ 事例 ~

埼玉県深谷市に住むAさん(17歳)は,大型ショッピングストアの化粧品売り場で化粧品等5点を万引きした窃盗罪で埼玉県深谷警察署に逮捕されました。
その後,Aさんの身柄は検察官の元に送られ,検察官により勾留の請求をされましたが却下されました。
その代わり,Aさんは勾留い代わる観護措置により少年鑑別所に収容されてしまいました。
収容先を知ったAさんのご両親は,少年鑑別所がどういう役割の施設か分からず,少年事件に強い弁護士に尋ねてみることにしました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

少年院についてはご存知の方が多いかと思われますが,少年鑑別所の存在や役割についてはご存知の方は少ないようです。
そこで,今回は,少年鑑別所とはどんな施設で,少年院とはどのような違いがあるのかについてご紹介したいと思います。

~ 少年鑑別所 ~

少年鑑別所は,通常は,家庭裁判所等の求めに応じ,鑑別を行うこと,観護の措置の決定が執られて収容している者等に対して,観護処遇を行うこと,地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行うことを目的とする,法務省所管の施設です。

通常は,事件が家庭裁判所に送致された後に収容される施設ですが,本件のAさんのように家庭裁判所に送致される前に収容されることもあります。

* 家庭裁判所送致前の少年鑑別所 *

収容される施設自体には変わりありませんが,家庭裁判所送致前と送致後では,少年鑑別所に対し求められる役割が異なります。
すなわち,送致前は,いまだ捜査機関による捜査を受けている段階ですから,主に「罪証隠滅」あるいは「逃亡」を防止することを目的としています(収容期間は,検察官の請求があった日から10日間で,期間の延長は認められていません)。
他方で,送致後は,少年審判に向けて準備しなければなりませんから,先ほど冒頭でも申し上げたように,少年の非行,犯罪を防止するために鑑別等を行うことを目的としています(収容期間は,通常4週間です)。

= 鑑別 =

「鑑別」とは,医学,心理学,教育学,社会学などの専門的知識や技術に基づき,鑑別対象者について,その非行等に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上,その事情の改善に寄与するため,適切な指針を示すことをいいます。
少年鑑別所に所属する「法務技官」による面接や各種心理検査を受け,知能や性格等の資質上の特徴,非行に至った原因,今後の処遇上の指針を明らかにしていきます。

= 収容中の生活とその後 =

少年鑑別所少年院と異なり,少年に対する教育を目的とした施設ではありませんから,規則正しい生活は求められるものの,比較的自由な生活を送れているようです。
運動や読書の時間なども設けられ,少年によっては学校の教科書,教材等を持ち込んで勉強している少年もいるようです。
少年鑑別所で鑑別された結果は「鑑別結果通知書」として家庭裁判所に提出され,家庭裁判所はそれを少年審判などに活用します。

~ 少年院 ~

少年院は,家庭裁判所から保護処分として送致された者などを収容する施設で,その健全な育成を図ることを目的として矯正教育,社会復帰支援等を行う法務省所管の施設です。
少年鑑別所とは以下の違いがあります。

* 収容される時期の違い *

少年鑑別所は少年審判前に収容される施設,少年院は少年審判後に収容される施設です。

* 目的による違い *

少年鑑別所は少年審判に向けて,少年の性格や資質等を調査することを目的する施設,少年院は少年の矯正,教育を目的とした施設です。

* 収容期間の違い *

少年鑑別所での収容期間は通常4週間です。
少年院での収容期間は処遇の内容によって異なりますが,平均して1年と言われています。

* その他 *

少年院は少年の矯正・教育を目的としているため,少年鑑別所よりも制限が多く,生活は厳しいものとなるでしょう。

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