少年による特殊詐欺事件

2020-01-23

今回は、高校2年生の少年が、オレオレ詐欺グループの犯行に加担してしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

大阪府立高校2年生で16歳のAくんは、面識のない人物から、SNSのメッセージを通じ、「高収入アルバイト」があることを聞かされました。
その内容は、銀行員を装って、高齢男性から現金を受け取る、というものでした。
1回これに従事すれば、30万円の報酬がもらえるということだったので、Aくんは上記「高収入アルバイト」に参加し、ターゲットの高齢男性から現金300万円を受け取り、指定された場所で指示された人物にこれを引き渡しました。
後日、Aくんの自宅に大阪府淀川警察署の警察官が現れ、「前にやったアルバイトについて聞きたいことがある」とのことです。
Aくんの親は大変驚いています。
Aくんはどうなってしまうのでしょうか。
(フィクションです)

~Aくんにかけられている嫌疑~

Aくんには、詐欺の共犯の疑いがかけられていると思われます。
より具体的には、オレオレ詐欺などを行う犯罪グループと共謀し、その中でもいわゆる「受け子」という役割を遂行した、という嫌疑がかけられているでしょう。

詐欺罪は刑法典上の犯罪であり(刑法第246条1項)、法定刑は10年以下の懲役です。
Aくんが成人であれば、通常の刑事事件として手続が進行するのですが、ケースのAくんは16歳の少年ですから、原則として少年法の適用があり、少年保護事件として手続が進行することになります。
以下、手続の概要と、その状況に応じた弁護活動について、解説していきたいと思います。

~今後の手続~

(捜査段階)
ケースの段階では、まず警察に出頭を求められています。
出頭後は、「高収入アルバイト」に従事するに至った経緯、アルバイトの内容、グループの実態についてかなり厳しく追及されるものと思われます。
逮捕される可能性も十分あります。
ケースのような特殊詐欺事件の「受け子」としてお子様が警察に連れて行かれてしまった場合は、逮捕される可能性を十分踏まえ、早期に弁護士に相談しましょう。

逮捕され、留置された場合は、逮捕時から48時間以内にAくんの身柄が検察庁送致されます。

送致後は、検察官が取調べを行い、身柄を受け取った時から24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAくんの勾留を求めるか(勾留請求)、釈放して在宅で捜査を行うかどうかを決めます。

この段階での弁護活動としては、少年を勾留することの悪影響を訴えかけ、勾留をしないよう働きかけることが考えられます。
また、Aくんが詐欺グループと共謀した事実、詐欺の故意について否認している場合には、即時に釈放するように、あるいは、勾留せず、家庭裁判所にも送致しないよう働きかけることが考えられます。

(家庭裁判所への送致)
検察官は原則として、全ての少年保護事件を、家庭裁判所送致しなければなりません。
勾留されたまま家庭裁判所に送致されると、到着のときから24時間以内にAくんについて「観護措置」をとるかどうかが決定されます。
観護措置がとられると「少年鑑別所」に送致され、Aくんの心身の状況などが調査されます。

観護措置は原則2週間までとされていますが、特に継続の必要があるとされると、1回に限り更新することができます。
多くは更新されています。
特別な要件を満たす場合(少年法第17条4項参照)には、さらに2回を限度として更新することができます。

観護措置がとられると、基本的に4週間近くという長期間、身体拘束を受けることになるので、このような事態はできれば回避したいところです。
そのためには、捜査段階である勾留中に、観護措置をとるだけの必要性がないといえるだけの環境調整を行っていくことが必要です。
また、観護措置決定に対しては、異議申し立てをすることも可能です。

(少年審判)
少年審判において、保護処分の必要が認められると、「少年院送致」「保護観察処分」「児童自立支援施設又は児童養護施設送致」という処分が言い渡されます。
「不処分」という決定もありますが、ケースの場合において、詐欺罪が成立する場合には、あまり期待できない処分です。
ケースの場合は、少年院送致か、保護観察処分のいずれかが言い渡される可能性が高いと思われます。
どちらになるかは、Aくんの家庭環境、交友関係、生活態度、被害額などを考慮して決められます。
大切なのは、Aくんに真摯な内省を促し、家庭環境を整えるなどして、出来る限り保護観察処分の獲得を目指すことです。

まずは弁護士と相談し、よりAくんの将来に悪影響を及ぼさないような事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が特殊詐欺事件に加担した疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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