傷害致死で少年院送致
傷害致死と少年院送致について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
高校生のA君は、V君にお金を貸してくれと頼みましたがV君から拒まれたため、カッとなってV君の胸を押して後方に転倒させ、地面にあった石に頭を殴打させて意識不明の状態にしてしまいました。A君は110番通報により駆けつけた警察官に傷害罪で逮捕されましたが、それから数日後、V君が死亡したため、容疑を傷害罪から傷害致死罪に切り替えられてしまいました。
(フィクションです)
~傷害致死罪~
傷害致死罪は刑法205条に規定されています。
刑法205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
本罪は傷害罪(刑法204条)の結果的加重犯と言われています。
結果的加重犯とは、一定の基本となる犯罪(基本犯)の構成要件を実現した後、犯罪行為から行為者(Aさん)の予期しない重い結果が生じたときに、その重い結果について刑が加重される犯罪のことをいいます。
では、傷害致死罪の基本犯である傷害罪をみていきましょう。
同罪は、刑法204条に規定されています。
刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、他方で、傷害致死罪は「3年以上の有期懲役(上限は懲役20年)」ですから、確かに刑が加重されている(重くなっている)ことが分かります。
傷害罪が成立するためには(構成要件)、
①暴行行為(暴行の認識(故意))→②傷害→③、①と②との間の因果関係(パターン1)
あるいは、
①傷害故意(傷害の認識(故意))→②傷害→③、①と②との間の因果関係(パターン2)
が必要です。
傷害致死罪が成立するには、さらに、上記要件に加えて「予期しない重い結果(人の死)が生じたこと」が必要です。
「予期しない」という点がポイントで、予期していた場合は、殺人罪(刑法199条)が成立します。
刑法199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
予期していたか、予期していなかったかで法定刑に大きな開きがあることがお分かりいただけるかと思います。
また、傷害罪では、暴行行為や傷害行為と傷害との間に因果関係が必要とされましたが、傷害致死罪でも同様に、傷害と人の死との間に因果関係が必要とされます。
仮に、因果関係が認められない場合は、行為者に人の死についての責任を問うことはできませんから、傷害罪が成立するにとどまります
~少年院送致とは~
少年院送致は、家庭裁判所の少年審判において下される保護処分(少年院送致の他に、保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致があります)の一つです。少年審判では、少年をどの種類の少年院に送致するかまで決定されます(少年審判規則37条1項)。少年院の種類は以下のとおりです(少年院法4条1項1号から3号)。
第1種(1号)
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの(次号に定める者を除く。)
第2種(2号)
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの
第3種(3号)
保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの
少年院の収容期間は、大きく短期処遇と長期処遇にわけられます。
短期処遇は、さらに特修短期処遇と一般短期処遇にわけられ、「特修短期処遇」の場合、「4か月」以内、「一般短期処遇」の場合、「6か月」以内です。長期処遇については10か月から2年です。
少年審判では家庭裁判所から処遇に関する勧告が出されることがあります(少年審判規則38条2項)。ここで、家庭裁判所が特集短期処遇、一般短期処遇との勧告を出せば、少年院はこれに従うべきとされています(従う勧告)。また、長期処遇については、「比較的短期」の処遇勧告が出た場合、収容期間は10か月以内とされ、少年院はその勧告を尊重しなければならないとされています(尊重勧告)。しかし、長期処遇について何ら勧告がない場合は、少年院が1年から2年の範囲内で決めています。
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