職務質問からの公務執行妨害で逮捕・少年の勾留と観護措置

2020-12-25

警察官の職務質問に腹を立てたことをきっかけに公務執行妨害罪で少年が逮捕されてしまった事例を題材に、職務質問や公務執行妨害罪の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

神奈川県川崎市に住む少年Aは警察官Kの職務質問を受けていたが、その態度に腹を立て警察官Kの身体を強めに押し込んだ。
神奈川県川崎臨港警察署の警察官は、少年Aを公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕した。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~職務質問に腹を立て公務執行妨害で逮捕~

本件の逮捕は、警察官による職務質問が一つのきっかけとなっています。
警察官による「職務質問」とは、よく聞きますが(もしかしたら実際にされた方もいるかもしれません)、そもそも何なのでしょうか。
端的に言えば、俗にいう「職務質問」とは、「警察官職務執行法に基づく質問」であり、一般的に「職務質問」という言葉から抱くイメージとは異なるかもしれません。
実際に法律を見てみると、その根拠規定は警察官職務執行法(以下、警職法)2条1項にあります。

「警察官」は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断」して「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者」を「停止させて質問」することができる、これが職務質問の根拠規定です。
ざっくり言ってしまえば、警察官が何かあやしいなと思う人間を、「停止」させて「質問」することができるという法律です。
言い回しは難しいですが、職務質問ってそういうものかなという印象を抱かれる方もいるでしょう。
しかし、ここでいう「停止」という文言がくせ者なのです。

この「停止」には、警察官による有形力の行使等をもが含まれ、警職法2条3項が刑事訴訟法によらない限り身柄の拘束や意に反した連行を行ってはならないと規定しつつも、任意処分の名の下に「停止」という文言からは凡そ想像困難な行為まで行うことが常態化しています。
したがって、この条文を根拠に実際には警察官はかなりの行為まで行うことが可能となっているのです。
ここでは「職務質問」は、明らかに一般常識で考えられているような行為とは大きく異なる性質を有するものとなっているといっても過言ではないでしょう。

このように「職務質問」という行政警察活動を根拠に、警察官はかなりの行為までを令状なしに行えるわけですが、こういった行為にかっとなってしまうことは禁物です。
なぜなら、職務質問という「職務を執行」をする「公務員」たる警察官に対し、「暴行又は脅迫を加え」てしまうと、公務執行妨害罪(刑法95条1項)が成立してしまうからです。
「暴行」や「脅迫」を加える方が悪いじゃないかというのは確かに正論ですが、ここにいう「暴行」「脅迫」は広義の暴行・脅迫で足りるというのが確立した判例の立場です。
「暴行」を例に取るなら、差し押さえた証拠物を破壊するような「公務員」の身体等には向けられていない間接暴行でもここにいう「暴行」に該当するのです。
したがって、本件少年Aのような警察官への行為が、職務を執行を妨害するような「暴行」に当たると判断される可能性は十分にあるといえるでしょう。

~勾留と勾留に代わる観護措置~

本件のように少年が現行犯逮捕されれば、逮捕者が司法巡査などであれば司法警察員に引致された後、検察官に送致されるのが原則です。
もっとも、通常の刑事事件であれば、逮捕後には端的に勾留するかどうかが判断されることになるわけですが、少年の場合には少年法43条1項本文による勾留に代わる観護措置が採られる可能性があります。
法が少年の場合の勾留を「やむを得ない場合」(少年法43条3項、48条1項)に限っていることに鑑みれば、勾留に代わる観護措置の方がむしろ原則形態とも考えられます。
このように少年事件には,捜査弁護の初期段階から、通常の刑事事件には存在しない考慮事項が多数存在します。
したがって、逮捕後の早い段階から少年事件の知識をしっかり持った弁護士のアドバイスを仰ぐことが最重要となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
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