傷害事件と不処分

2019-08-03

傷害事件と不処分

京都府京都市伏見区の高校に通う高校2年生のA君(17歳)は、同級生のV君と些細なことでけんかとなり、V君の顔面を1発殴り、V君に加療3週間のけがを負わせました。A君は、傷害罪京都府伏見警察署逮捕され、10日間、伏見警察署の留置施設に拘束された後、事件をが京都家庭裁判所に送致され、観護措置決定により身柄を少年鑑別所に移されました。A君の母親は、家裁送致前に選任されていた国選弁護人の示談交渉が上手くいかなかったことから、家裁送致後は私選の付添人(弁護人)を選任して示談を成立させ、審判不開始、あるいは不処分決定を獲得したいと考えています。
(フィクションです)

~ 家裁送致後の拘束場所について ~

少年(20歳に満たない者)事件では、警察、検察での捜査が終わると、事件は家庭裁判所へ送致されます。家裁送致前に警察署の留置施設に拘束されている場合は、通常、家裁送致後、観護措置決定により少年鑑別所に身柄を移されるでしょうし、家裁送致前から少年鑑別所に収容されている場合は、そのまま少年鑑別所に収容されることになるかと思います。

なお、「観護措置」とは

・家庭裁判所調査官の観護に付する措置

・少年鑑別所に送致する措置

の2種類がありますが、実務で「観護措置」という場合、通常、後者(少年鑑別所に送致する措置)を意味します。

~ 家裁送致後の付添人 ~

家裁送致後に選任された弁護士は「弁護人」ではなく「付添人」と呼ばれます。ちなみに、付添人は、家庭裁判所の許可を受ければ少年の保護者でもなることができます。

家裁送致前の少年は、成人と同様「被疑者」という立場で捜査機関による取調べ等の捜査を受けます。したがって、身柄を拘束されている場合は、少年の権利・利益を保護する必要性が特に高いことから、国選でも弁護人が選任されることがあります。しかしながら、国選選任の効果は、家庭裁判所送致後までには及びません。
したがって、家裁送致後も引き続きその弁護人に付添人としての弁護活動を頼みたい場合は家裁送致前からその旨伝えておく必要がありますし(弁護人からも意思確認されるかと思います)、Aさんのように、別の弁護士に依頼したいという場合もその旨を伝えるとともに、私選で選任する場合は、新たな弁護士を探して契約を結んでおくとともに、その弁護士から家庭裁判所宛に選任届を提出してもらう必要があります。
なお、家裁送致後も国選の付添人制度がありますが、要件が定められており、必ず選任されるわけではないという点に注意が必要です。

~ 不処分決定 ~

不処分(決定)とは、家庭裁判所における少年審判の結果、保護処分に付することができないとき、又は保護処分に付するまでの必要がないと認めるときに、保護観察少年院送致等の保護処分に付さない旨の決定のことをいいます。

保護処分に付することができないとき」とは、非行事実の存在が認められない場合などが当たります。つまり、少年審判のきっかけとなった非行事実の存在について、合理的疑いを超える心証が得られない場合をいいます。成人でいえば「無罪判決」に相当します。「保護処分に付するまでの必要がないとき」とは、審判までに少年が更生し、要保護性がなくなった場合や試験観察期間中の少年の生活態度からさらに保護処分を行う必要がなくなった場合などが当たります。調査や審判の過程で、調査官などによる教育的な働きかけによって、少年の問題点が改善され、要保護性がなくなった場合をいいます。

~ 不処分決定を受けるための弁護活動 ~

付添人(弁護人)としては、調査の過程で、少年に対して教育的な働きかけを行っていき、少年の事件に対する反省を深めさせたり、生活環境を整えていったりしていきます。そして、その結果を、家庭裁判所調査官に書面などで報告します。家庭裁判所調査官は、その報告書や自ら調査した結果などをもとに、家庭裁判所に対し、処分に関する意見を上申することができます。

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