(制度紹介)少年事件の終局処分~「保護処分」とはどんな処分?

2022-11-02

(制度紹介)少年事件の終局処分~「保護処分」とはどんな処分?

少年事件では、最終的に家庭裁判所の審判によって保護処分が下されることが原則です。
その「保護処分」について、どういった処分の種類があるのか、その種類からどのように決められるのかといったことは、一般の方にはなかなか浸透していないのではないでしょうか。
今回の記事では、少年事件の終局処分の1つである、保護処分という処分について注目していきます。

~保護処分とは?~

そもそも、保護処分とはどういった処分なのかと不思議に思われる方もいらっしゃるでしょう。
少年事件は、原則としてそのすべてが家庭裁判所に送られ(全件送致主義)、保護処分が下されることとなっています。
保護処分は、大まかにいえば、少年事件を起こした少年を更生させるための処分です。
保護処分の種類としては、保護観察処分、児童自立支援施設・児童養護施設への送致、そして少年院への送致が挙げられます。

これらの保護処分は、先ほど触れた通り、あくまで少年を更生させるための処分であり、少年が犯罪をしたこと・犯罪に触れたことに対する罰(刑罰)ではありません。
そのため、例えば少年院送致となったとしてもそれはいわゆる「前科」ではありません。

どういった保護処分を受けるのかは、その少年のした犯罪の種類だけでなく、その少年の置かれた環境、少年の性格・資質などによって決められます。
一般的なイメージでは、「より悪質・重大な犯罪をした場合に少年院に行く」「少年院に行くことが重い処罰だ」というイメージかもしれません。
しかし、保護処分はあくまで少年の更生に資するように決められるため、単に犯罪の軽重だけで保護観察となるのか少年院送致となるのかが決まるわけではありません。
極端な話ですが、理論上、100円のお菓子を一度万引きしただけでも少年院に行く可能性はありますし、相手に重傷を負わせる傷害事件を起こしても保護観察となる可能性はあります。

これは、どういった保護処分を受けることが少年の更生に適切かということを重点に決められることによります。
例えば、少年が現在過ごしている環境そのものが少年の更生に適切でないと判断された場合には、一度その環境から離れ、生活環境の改善や指導を受けるために少年院に送致するといった判断がされるということです。

~保護処分とならない例外~

先ほどから触れている通り、原則として少年事件の終局処分は審判の後に保護処分が下されるものとなります。
しかし、少年事件では保護処分とはならない例外も存在します。

例えば、保護処分とするまでもなく、少年の更生に資する環境ができている、ないしは環境が整えられるだろうという場合には、審判の結果処分なしとなることもあります。
また、審判が始まる前から、少年の更生に十分な環境が整えられていたり、整えられるだろうことが分かっていれば、審判自体をしない(審判不開始)という判断になることもあります。

一方で、少年に要保護性がなく、刑事処分が適切であると判断された場合であったり、少年の年齢・してしまった犯罪などの条件を満たした場合では、審判の結果、検察へ逆送致されることもあります(いわゆる「逆送」)。
逆送された場合は、原則として起訴されることとなり、20歳以上の者同様に刑事裁判を受け、有罪・無罪や有罪の場合の刑罰の重さを決めることとなります。
この場合、有罪となって刑罰を受けることになれば、当然保護処分を受けることはなくなりますし、「前科」にもなります。

いずれにせよ、少年事件で最も重視される点の1つは、少年の更生に適切であるかどうかという点です。
少年の更生に適切な環境を整えることができれば、過剰な処分をせずとも更生を支えることができますから、適切な処分を目指すのであれば、早い段階から少年本人とご家族など周囲の方々で協力しながら環境調整や改善に取り組むことが望ましいといえるでしょう。
しかし、実際にそうした環境調整活動をしようとしても、当事者だけでは難しい部分もありますから、少年事件を取り扱う弁護士に相談するなどして、サポートを受けることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、通常の刑事事件だけでなく、少年事件も多く取り扱っています。
手続や処分が何に基づいて決められていくのか、どういった環境調整をしていくべきなのかということを把握するだけでも、少年事件の手続に対応していく不安が軽減されます。
まずはお気軽にご相談だけでもご利用ください。

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