高校生の住居侵入と窃盗
高校生の住居侵入と窃盗
~ケース~
神奈川県横浜市鶴見区に住む高校3年生のAくん(17歳)は、通学途中で出会った女性Vが気になったので、Vの後をつけ、家を特定しました。
Vの自宅にある私物に興味をもったので、Vのアパートに侵入し、Vの衣服を盗んでしまいました。
Vが犯人不明のまま神奈川県鶴見警察署に被害届を出したところ、警察による捜査が開始され、アパートの監視カメラにAくんがV宅に侵入していくのが映っていました。
ある朝、Aくんの自宅に警察官が数名現れ、Aくんは逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~住居侵入罪、窃盗罪について解説~
Aくんには住居侵入罪、窃盗罪が成立する可能性が高いです。
住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入する犯罪です(刑法第130条前段)。
法定刑は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
「人の住居」とは、人の起臥寝食、すなわち日常の生活に使用される場所をいいます。
Vが生活に使用するアパートの一室は明らかに「人の住居」に該当します。
「侵入」とは、「管理権者の意思に反する立ち入り」を意味します。
通常、無断かつ窃盗目的で赤の他人が他人の住居に立ち入ることは、管理権者(今回の場合はV)の意思に反する立ち入りと評価することができると考えられます。
そうすると、Aくんの行為が「侵入」に該当する可能性は極めて高く、住居侵入罪の成立が見込まれます。
また、窃盗罪は、他人の財物を窃取する犯罪であり(刑法第235条)、法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
Vに無断で衣服を持ち出したAくんの行為は、窃盗罪を構成する可能性が高いと思われます。
~今後Aくんはどうなるか?~
(捜査段階)
Aくんは少年なので、刑法などが規定する刑罰を科されるのではなく、少年法の適用により保護処分というものが行われます。
少年の資質や家庭環境などを考慮して適切な措置を行うことで、少年の更生と健全な育成を目指す趣旨です。
もっとも、捜査段階においては刑事訴訟法が適用されるので、成人と同じように逮捕・勾留される可能性があります。
そのため、警察段階で最長48時間、検察段階で最長24時間、勾留・勾留延長されると最長20日間(最長で逮捕から計23日間)身体拘束を受けることになります。
Aくんは高校生ですから、長期間学校を休むと、留年したり、あるいは停学・退学といった処分を受ける可能性が見込まれます。
そのため、早期の身柄解放を実現する必要があります。
弁護士に身柄解放活動を依頼し、なるべく勾留されないよう、あるいは、勾留された場合であっても、釈放されるように動くことが重要です。
勾留は、罪証(証拠)隠滅や逃亡のおそれなどの要件を満たしている場合でなければ行うことができません。
そこで、弁護士は、Aくんにそのようなおそれがないことを具体的に主張し、検察官、裁判官に対して勾留をしないよう働きかけます。
(保護処分)
家庭裁判所における審判(通常の刑事事件で言う裁判に相当するもの)が開始され、保護処分が相当であると判断された場合には、①少年院送致、②保護観察処分、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致のいずれかの処分が言い渡されます。
これらのうち、③の児童自立支援施設等送致は、主に虐待を受けているなど家庭環境に大きな問題がある少年に対して行われることが多いものです。
そのため、①の少年院送致、②の保護観察処分が言い渡される可能性が高いと考えられます。
少年院では、身体拘束を伴い、特別な場合を除き外出することはできません。
保護観察処分は、少年を社会内で生活させながら、保護司の指導監督を受けさせ、改善更正を図る処分です。
いずれも少年の健全な育成を目指すことには変わりありませんが、やはり少年院の方が負担が大きく、Aくんの学業、進路に対する影響も大きいと言えます。
ですので、Aくんの学業、進路に与える影響を少なくするには、保護観察処分を目指して行動することになるでしょう。
もっとも、住居侵入の上窃盗となると、非行化が相当進んでいると評価されやすいことは否定できません。
そこで,Aくんが社会内でも改善更正できることを家庭裁判所に納得させるには、説得的な主張を行うことが必要になります。
具体的には、少年が非行を犯したことにつき深く反省していること、家庭での教育・指導がきちんとできること、仕事や学校など将来像があること、などが考えられます。
Aくん深く反省を促し、加えて、自宅での指導プラン、学校には今まで通り通学できるか、そうした主張をきちんと行えるよう、弁護士と綿密に相談し、周囲の環境を調整していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
少年であるご家族が住居侵入、窃盗事件を起こし逮捕され、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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