少年が原則として刑罰を受けないのはなぜか

2020-06-26

今回は、少年が原則として刑罰を受けない理由について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

京都市に住む高校1年生で16歳のAくんは、友人3名と共謀し、公園の公衆トイレに呼び出した同級生の女子生徒Vと強制的に性交してしまいました。
Aくんらの犯行後、Vは被害を親に打ち明け、京都府下鴨警察署に被害届を提出しました。
翌日、Aくんらは自宅において、強制性交等罪の疑いで逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~少年が罪を犯すとどんな処罰を受けるか?~

よく知られていることですが、少年は「原則として」刑罰を受けることはありません。
それは、少年法が「保護主義」を理念として掲げており、少年の健全育成のために必要な保護処分を行う手続が予定されているからです。

(保護処分の種類)
保護処分は、少年審判の結果、必要に応じて家庭裁判所が言い渡します。
保護処分には、①保護観察処分、②少年院送致、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致があります。
Aくんが保護処分を受ける場合、①、②が言い渡される可能性が高いため、以下、①、②に絞って解説します。

保護観察処分は、保護観察官などの指導・支援を受けながら、在宅で更生を目指すものです。
施設に収容される少年院送致と比べて、少年本人や家族の負担が軽いといえます。

少年院送致とは、少年院に入って更正を目指す保護処分です。
特別の場合を除いて外出できないので、保護観察処分と比べて負担は重いです。

ケースの事件は、罪名、犯行態様共に悪質であり、保護処分を言い渡される場合においては、少年院送致が言い渡される可能性が十分考えられます。
反対に、犯行の悪質性、Aくんの年齢を考えると、③や不処分が言い渡される可能性はかなり低いものと思われます。

~少年が刑事罰を受ける可能性~

例外的に14歳以上の少年が刑事罰を受ける可能性はあります。

少年が刑事罰を受け得る場合として、
・死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき(少年法第20条1項)
・故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの(少年法第20条2項)
・審判時に少年が20歳以上に達している場合や、調査の結果、少年が20歳以上に達していることが判明したとき(少年法第19条2項、第23条3項)
が挙げられます。

1つめの場合は、事件が検察官に送致され、送致を受けた検察官は、原則として起訴を強制されることになります(少年法第45条5号)。
刑事裁判にかけられた結果、有罪判決を受けた場合、少年であっても刑罰を受けることになります。
ケースの事件は、「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件」に該当します。
複数の友人と共謀して同級生と強制的に性交した点で相当悪質であり、検察官送致の可能性は相当高いでしょう。

2つめの「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの」については、原則として検察官送致がなされます。
「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」には、「殺人罪」、「傷害致死罪」、「危険運転致死罪」などが含まれます。
単純な死亡人身事故を起こした場合に適用される「過失運転致死罪」はこの中に含まれません。

3つめについては、もはや少年法の適用対象ではないため、検察官送致が行われます。

~最後に~

少年事件はいずれも、事件を起こした少年の将来に関わる重大な問題といえます。
なるべく早期に弁護士を依頼し、最も少年にとって有利な事件解決を目指すことが重要といえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が強制性交等事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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