(事例紹介)嘱託殺人による少年院送致

2023-02-22

(事例紹介)嘱託殺人による少年院送致

相手から頼まれて殺害をする嘱託殺人で問題となる罪と少年が少年院送致される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。

・参考事例

名古屋市中区のホテルで2022年12月、当時20歳の女子大生が遺体で見つかった事件で、嘱託殺人の非行内容で家裁送致されていた19歳の大学生の女について、鳥取家裁は1月23日付で少年院送致の決定をしました。
 19歳の大学生の女は2022年12月、(中略)ホテルの客室で女子大生(当時20)に依頼され殺害した嘱託殺人の非行内容で名古屋家裁へ送致され、その後鳥取家裁に移送されていました。
 鳥取家裁は1月23日の少年審判で、大学生の女について少年院送致の保護処分にする決定を下し、収容期間は3年としました。
 決定理由について鳥取家裁は(中略)「若年の被害者の生命が失われており、結果は重大」などと指摘。
 しかし、「女子大生の意思を踏まえた共犯者の指示に基づくもので、悪質性は同種事案の中でも低い」と説明しています。
(東海テレビ 令和5年1月26日(木) 22時25分配信 「ホテルで女子大学生が遺体で見つかった事件 “嘱託殺人”の非行内容で家裁送致の19歳女 少年院送致が決定」より引用)

・少年院送致

上記の事例では少年が嘱託殺人罪少年院への送致が決定されており、嘱託殺人は下記の刑法202条に定められています。

刑法第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

刑法202条の前段が自殺関与罪(自殺教唆罪および自殺幇助罪)を規定しており、その後段が同意殺人罪(嘱託殺人罪および承諾殺人罪)を規定しています。
20歳以上の者がこれらの罪を犯した場合には「6月以上7年以下の懲役又は禁錮」の刑に処されます。
ですが参考事例では未成年者が罪を犯しているため、少年事件として少年法の適用により、保護処分を受けることになりました。
少年事件の審判では最終的に、不処分、保護処分、検察官送致(逆送)、児童福祉機関送致の中から処分などが決定されます。
保護処分はさらにそこから保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致、少年院送致が選択され、特に少年院送致は最も強力な施設収容です。

少年院は少年の年齢や特性に応じた生活訓練などを通して、内省を深めさせ社会復帰のための矯正教育などを行う施設です。
教育のために収容し、育て直すことが目的とされており、生活指導、教科指導、職業指導、体育指導などが行われ、少年は社会復帰支援を受けながら生活します。

少年審判で保護処分として少年院送致を言い渡された場合、原則として20歳に達するまで入院することになっています。
但し、すべての少年が20歳まで少年院に入所するのではなく、処遇区分が分かれていて、それぞれ
・一般短期 収容期間は原則として6か月
・特殊短期 収容期間は4か月
・長期   収容期間は原則として2年以内
と定められています。
なお、一般短期と長期の処遇は延長が認められていますが、特殊短期には延長が認められていません。

但し、処遇上の必要性があれば23歳、さらに医療上の特別な必要性があれば26歳まで家庭裁判所の審判により収容継続を決定することができます。

少年院は少年を更生を促し社会復帰を求めるための施設であり、刑罰を目的とする施設ではありません。
とはいえ、少年院に入院することで社会から隔離されてしまい、その後の社会生活に影響を及ぼすおそれがあることも事実です。、
少年院送致を避けるためには、少年を施設収容せずとも更生が可能な環境が整っていることを主張する等の付添人活動がカギを握ります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件専門の弁護士事務所です。
当事務所では、嘱託殺人罪などで少年院送致の可能性が極めて高い事件についても取り扱っています。
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