(事例紹介)美人局による「援交狩り」で強盗致傷罪の容疑

2023-01-18

(事例紹介)美人局による「援交狩り」で強盗致傷罪の容疑

~事例~

金沢西署と石川県警生活安全捜査課は27日、少女が誘い出した男性に暴行を加えて現金を奪ったとして、強盗致傷の疑いで、高校生を含む少年少女ら5人を逮捕したと発表した。同署などによると、5人は交流サイト(SNS)を使い、「美人局(つつもたせ)」の手口で標的となる男性を探していたとみられ、同署は事件の詳しい経緯や背景などを調べている。
(略)
 5人の逮捕容疑は共謀し、10月6日午後11時から翌7日午前0時半までの間、金沢市内の公園で、県内の男性=当時(25)=に暴行を加えてけがを負わせた上、「お前、金持ってないんか」と脅し、1万5千円を奪った疑い。男性は顔や頭の骨を折るなどの大けがを負った。
(略)
捜査関係者によると、男女が共謀して誘惑した男性から現金をゆすり取る「美人局」は、携帯電話やインターネットの普及に伴い手口が多様化している。出会い系サイトなどで援助交際の意思がありそうな男性を誘い出し、集団で金銭を奪う「援交狩り」などもあるという。
(※2022年12月27日16:00北國新聞配信記事より引用)

~美人局と強盗致傷罪~

今回取り上げた事例では、10代の少年少女らが、SNSを利用して呼び出した男性に対して暴行・脅迫して金を奪い、けがをさせたと報道されています。
こうした、いわゆる美人局と呼ばれる行為は、刑法の恐喝罪や強盗罪、ひいては強盗致傷罪となる可能性がある犯罪行為です。
まずはそれぞれの犯罪を規定する条文を確認してみましょう。

刑法第249条第1項(恐喝罪)
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

刑法第236条第1項(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

刑法第240条(強盗致傷罪)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

恐喝罪の「恐喝して」という部分は、大まかに言えば、「財物を交付させるために暴行・脅迫を行って財物を要求する」といった内容を指します。
つまり、恐喝罪強盗罪も、財物を目的とした暴行・脅迫が行われる犯罪であるといえます。

では、この2つの犯罪の違いはどういったところになってくるかというと、その1つは用いられる暴行・脅迫の強さの程度が挙げられます。
強盗罪が成立するために必要とされている暴行・脅迫の強さの程度は、「被害者の抵抗を抑圧する程度」の強さが必要であると考えられています。
対して、恐喝罪はそれに満たない強さの暴行・脅迫が行われた場合に成立すると考えられています。

美人局は、一般的には恐喝罪が成立するケースが多いとされています。
美人局では、被害者に対し、「女性に対して手を出そうとした」というようなことを脅し文句に金品を巻き上げる手口が多く、被害者の抵抗を押さえつけるほどの強さとならないことが多いのです。
しかし、その金品を巻き上げるという流れの中で、今回の事例のように暴行が加えられるというケースもあります。
そういったケースでは、凶器の有無や加害者の人数、犯行現場の状況などの事情から、被害者が抵抗できないほどの強い暴行・脅迫が用いられたと判断されることもあり、そうなると美人局であっても強盗罪が成立し得るということになります。
さらに、強盗罪の成立する態様での美人局の場で、暴行によって被害者が怪我をするということになれば、美人局から強盗致傷罪にも発展するということになるのです。

今回取り上げた事例では、逮捕された少年少女らは全員10代のようですが、18歳~19歳であれば「特定少年」として逆送される可能性も出てきますし、17歳以下であっても、強盗致傷罪のような重大犯罪をしてしまう環境下にあることが問題であると考えられ、少年院送致などの処分が下ることも考えられます。
少年事件は特殊な手続や制度も多く、当事者になった少年自身やその家族も先が見通せないということもあり得ます。
こうしたことを避けるためにも、少年事件の当事者となったらすぐに、弁護士の相談を受けることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件についても数多くのご相談・ご依頼をいただいています。
刑事事件についても取り扱っていますので、もしも逆送によって刑事手続へ移行することとなっても安心して弁護活動をお任せいただけます。
少年事件にお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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