(事例紹介)人を転落させて傷害罪 少年らが逮捕された事例

2022-09-07

(事例紹介)人を転落させて傷害罪 少年らが逮捕された事例

~事例~

広島県府中町の商業施設の立体駐車場で、男性会社員(19)を殴って現金を奪うなどしたとして、少年ら9人が逮捕された事件で、県警は5日、男性を立体駐車場から転落させたとして、6人(18~15歳)を傷害容疑で再逮捕した。
(中略)6人は6月30日午後8時5分頃から約5分間、立体駐車場の屋上(高さ約24メートル)で男性を殴る蹴るなどし、男性が屋上から飛び降りざるを得ない状況に追い込み、脳挫傷や大腿骨骨折などの大けがを負わせた疑い。
(中略)
主犯格の足場作業員の男(18)(広島市東区)が位置情報を他人と共有できるアプリや電話で近くにいた少年を集めたとみられ、屋上では男が「誰か1人に勝ったら許してやる」などと言い、その場にいた少年らが代わる代わる男性に暴行を加えたという。
(後略)
(※2022年9月6日12:16読売新聞オンライン配信記事より引用)

~転落させて傷害罪~

今回取り上げた事例では、すでに8月の時点で、少年らは強盗致傷罪や監禁罪の容疑で逮捕・捜査されていたようです(参考記事)。
しかし、その強盗致傷罪や監禁罪に加え、今回は被害男性を立体駐車場から転落させたということについて傷害罪の容疑がかけられ、再逮捕されたということのようです。

今回の事例では、報道の内容を見るところ、少年らは被害男性に対して暴行をふるっているものの、被害男性を立体駐車場から突き落としたというわけではないようです。
報道からは、被害男性が少年らの暴行から逃げようとして立体駐車場から飛び降りて転落してしまったのか、少年らが被害男性が立体駐車場から飛び降りるよう仕向けたのかは明らかではありませんが、いずれにせよ、少年らが物理的に被害男性を転落させたということではないようです。
ここで、被害男性が立体駐車場から転落して怪我を負ったことに対して、少年らに傷害罪が成立するのかという疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
特に前者のケースでは、少年らが立体駐車場から被害男性が転落して負った怪我の責任を傷害罪として負うことになるのかと不思議に思われるかもしれません。

しかし、過去の判例では、暴行を加えられていた被害者が現場から逃げた後に事故に遭って無くなってしまったという事例で、暴行と被害者の逃亡先の事故による死亡という結果に因果関係があるという判断が下されたものが存在します。
この判例では、暴行の被害者が現場から逃げる際、高速道路に侵入してしまい、交通事故に遭ってなくなってしまったという事情がありました。
裁判では、被害者の行動が、長時間激しくかつ執ような暴行を受け、極度の恐怖感を抱いて、必死に逃走を図る過程で、とっさに選択されたものであり、暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえないと判断され、暴行と被害者の死亡という結果に因果関係があるとして、傷害致死罪が成立すると判断されました。
(以上、最決平成15.7.16より)

つまり、今回の事例で、たとえ被害男性が少年らの暴行から逃れようとして立体駐車場から転落してしまったのだとしても、紹介した判例に照らせば、被害男性は少年らから先だって暴行を受けていたという事情もあることから、少年らの暴行と被害男性の転落・負傷の間には因果関係があるとして傷害罪が成立することも十分考えられるということになります。

また、少年らが被害男性に対して立体駐車場から飛び降りるように仕向けたというケースであっても、少年らは暴行をすることで被害男性が立体駐車場から飛び降りるしかない状況を作り出していることから、少年らが暴行を加えたことで被害男性が故意的に転落させられて怪我を負ったという経緯になり、少年らには傷害罪が成立しうるということになるでしょう。

今回の事例では、事件の加害者である少年が複数人いることや、容疑をかけられている罪名が強盗致傷罪など重大犯罪も含まれていること、被害男性の怪我が重いものであり一時意識不明にもなっていることなどから、少年らの身体拘束が長期間に及ぶことや処分が重くなることが予想されます。
少年事件の手続は成人の刑事事件の手続とは異なる部分も多く、行うべき活動も異なってくることもあります。
だからこそ、複雑な少年事件については早い段階で専門家である弁護士の力を借りることが望ましいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、成人の刑事事件だけでなく、少年事件についてのご相談・ご依頼も多く承っています。
強盗致傷罪や傷害罪などの暴力事件も含め、少年事件でお困りの際は一度弊所弁護士までご相談下さい。

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