万引きで示談するも家庭裁判所に

2019-08-28

示談するも家庭裁判所に

東京都町田市の高校に通うA君は、漫画本欲しさに市内の書店で漫画本3冊を万引きしたところ、その行為を一部始終見ていた保安員に逮捕されました。そして、A君は、通報を受け現場に駆け付けた警視庁南大沢警察署の警察官に引き渡されましたが、A君のご両親が南大沢警察署に身元引受人として出頭し、今後A君を厳重に監督していく旨誓約したことから釈放されさました。その後、A君のご両親はA君とともに書店へ行き店長に謝罪し、万引きした漫画本3冊の買い取りと、迷惑料として1万円を支払いました。ところが、後日、A君は南大沢警察署東京地方検察庁立川支部から呼び出しを受けたばかりか、万引きの件を東京家庭裁判所立川支部に送られた(家裁送致)と聞きました。A君やA君のご両親は、被害弁償が済んでいたのにどうして家裁送致されなければならないのか納得がいかず、少年事件に強い弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)

~ 少年事件は全件送致主義が原則 ~

※少年=20歳未満の者

一定の嫌疑がある限り、原則としてすべての少年事件が捜査機関から家庭裁判所へ送致される手続きのことを全件送致主義といいます。
全件送致主義は、少年法41条、42条に根拠があります。

少年法41条
 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

少年法42条1項
 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

~ 成人事件の場合、微罪処分、起訴猶予がある ~

他方、成人事件の場合、微罪処分不起訴処分(起訴猶予等)が認められています。

微罪処分とは、事件が警察から検察庁へ送致されることなく、被疑者への厳重注意、訓戒等で終了する手続きのことをいいます。
微罪処分を受けると検察庁へ送致されることはありませんから、検察庁から呼び出しを受けたり、何らかの刑事処分(起訴、不起訴)を受けるおそれはありません。もちろん、刑罰を科されることもありません。

また、不起訴処分は、検察官の刑事処分の一つで、起訴しない、つまり、裁判所に刑事裁判を求めない処分のことをいいます。
不起訴処分を受けると刑事裁判を受ける必要がなくなる、というわけです。

~ では、なぜ少年事件は全件送致主義なの? ~

成人事件の場合、今回のA君のご両親のように、被害者に被害弁償したり、あるいは被害者と示談を締結することができれば微罪処分不起訴処分を獲得できる可能性は高くなるでしょう。ところが、少年事件の場合、同様のことを行っても、事件は原則家裁送致されてしまいます。なぜでしょうか?

これは、少年法が

少年の健全な育成(1条)

という教育目標を掲げているからだ、といえます。

少年事件の場合、犯罪の嫌疑がある場合はもちろん、犯罪の嫌疑がない場合であっても、そう疑われるに至った経緯・背景には様々あると思います。そうした経緯・背景には、少年自身の性格、少年の取り巻く環境(家庭、学校、交友関係など)などに関する問題が影響しているのです。そこで、そうした問題を一つ一つ丁寧に調査し、少年の性格を矯正し、少年を取り巻く環境を整備するという教育的な働きかけを行っていくことで健全な大人へと育っていってもらう、ということを少年法は期待しているのであり、少年の時期であればまだ深く犯罪に根付いていない可能性が高いためそれが可能だと考えられます。

また、そうした調査や、少年への教育的な働きかけ、少年を取り巻く環境調整は、警察や検察の捜査機関が行うには限界があります。少年や少年を取り巻く環境の問題を調査し、それを少年の更生に繋げるのは捜査機関よりもむしろ家庭裁判所(家庭裁判所調査官、少年鑑別所の技官など)の方が適しているといえます。そこで、全件送致主義が取られている、というわけです。

~ 審判不開始、不処分もあり得る ~

ただ、全件送致主義が取られているからといって、少年の方が不利かといえばそうではありません。
何より少年手続きを通じて、少年の矯正、更生が期待できます。
また、少年の矯正、更生態度によっては、そもそも少年審判が開かれない審判不開始、保護処分を科されない不処分もあり得ます。その意味でははやめには被害者に被害弁償することなども全く無意味ではありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談初回接見サービスを受け付けております。

Copyright(c) 2021 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.