決定・判決の種類,処分・刑罰の種類
少年が罪を犯した場合,家庭裁判所による審判を経て保護処分となる場合もありますが,刑事処分が相当であると判断された場合には刑事裁判の手続きに移行され,刑罰が科されることになります。
したがって,少年に対する処分としては,審判による決定と刑事裁判による判決の二種類が考えられます。
1 少年審判の場合
⑴ 不処分
家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することができないと認めた場合,または保護処分に付する必要がないと認めるときは,その旨の決定をしなければならないとされており,この決定を,不処分決定といいます。
家庭裁判所が保護処分に付することが出来ないと認めた場合とは,非行事実の存在の蓋然性が認められない場合や,少年の所在が不明の場合などです。
家庭裁判所が保護処分に付する必要がないと認めた場合とは,調査・審判の過程で,関係者による働きかけが講じられた結果,要保護性が解消し,再非行の危険性がなくなった場合や,非行事実が極めて軽微な場合などです。
⑵ 保護処分
ア 保護観察
保護観察とは,少年を施設に収容することなく,社会の中で生活させながら,保護観察所の指導監督及び補導援護という社会内処遇によって,少年の改善更生を図ることを目的として行う保護処分のことをいいます。
イ 児童自立支援施設等送致
児童自立支援施設とは,不良行為をなし,または,なすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させまたは保護者のもとから通わせ,個々の児童に応じて必要な指導を行い,その自立を支援し,併せて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設です。
児童自立支援施設送致が選択される少年は,少年院送致が選択される少年と比べると,非行性が進んでおらず,少年自身の素養よりも保護者が養育を放棄していたり,少年を虐待していたりするなど家庭環境等に問題がある場合です。
ウ 少年院送致
少年院では,特別の場合以外は外出を許さず,非開放的な施設で生活させ,規律ある生活に親しませて生活訓練を行い,規律に違反した者に対しては懲戒を行うなどして,少年に対して矯正教育を授ける施設です。
少年院送致は,少年の自由を拘束する点で保護処分のうち,最も強力な処遇といえます。
⑷ 検察官送致(逆送)
家庭裁判所は,調査あるいは審判の結果,本人が20歳以上であることが判明したときは,事件を検察官に送致することになっています。これを年齢超過の逆送と呼んでいます。
これ以外にも①故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合,事件時16歳以上である者については原則逆送することになっているほか,②特定少年(18・19歳の少年)が,16歳以上のときに恋の犯罪行為により被害者を死亡させた場合(①との違いは,①は17歳でも適用される)③特定少年が,特定少年の時に死刑・無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件を起こした場合(たとえば,強盗や強制性交等罪,現住建造物放火等)にも原則逆送となっています。
検察官に送致されると,成人の刑事事件と同様の手続きとなります。
なお,刑事処分相当として検察官に送致された場合,検察官は,公訴提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思慮するときは起訴しなければならないとされており,成人事件における検察官の起訴裁量権は制限されています。
2 刑事裁判の場合
⑴ 判決の種類
刑事事件で逮捕・起訴され、裁判所での審理を経たのち、言い渡されるものが判決です。
判決には、大きく分けると「無罪判決」と、「有罪判決」に分けられます。
⑵ 刑罰の種類
ア 死刑
刑事施設内において、絞首して執行される刑です。
殺人罪(199条)、強盗致死罪(240条後段)、現住建造物等放火罪(刑法108条)などの罪で法定刑として定められています。
ただし,少年法の適用により,罪を犯した時に18歳未満であれば,死刑を科すことはできず,無期懲役にしなければなりません。
イ 懲役刑
刑事施設(刑務所)において拘置し身体の自由を拘束するもので、所定の作業(刑務作業)を行わせる刑であり,「無期」と「有期」に分けることができます。
「無期懲役」は、刑の執行の終わる時期が定められていないというものです。
なお,少年法の適用により,罪を犯した時に18歳未満であれば,無期刑を選択すべきときには,有期刑を選択することもできます。
「有期懲役」は、1月以上20年以下の期間で刑の長さが定められている懲役刑です。
もっとも、二つ以上の罪を犯し併合罪(刑法45条)となった場合には、長期について最長30年以下にまで延長することができます。
そして,少年法の適用により,判決言い渡し時に少年である者に対する処断刑が,有期の懲役または禁錮刑のときは,短期10年以下,長期は15年以下の範囲で不定期刑を言い渡さなければなりません(少年法第53条1項)。ただし,特定少年の刑事事件の場合には,不定期刑の言渡しはありません。
ただし,刑の執行猶予の言渡しをするときは,定期刑が言い渡されることになります。
ウ 禁錮刑
刑事施設(刑務所)において拘置し身体の自由を拘束する刑です。懲役刑とは異なり、所定の作業(刑務作業)を行わせるものではありません。
もっとも、刑務作業が義務ではないというものであって、受刑者が希望すれば刑務作業をすることもできます。
エ 罰金
一定の金額(1万円以上)のお金を支払わせることを内容とする財産刑の一つです。
罰金を支払う能力がない場合には,裁判で定められた1日当たりの金額が罰金の総額に達するまでの日数分、労役場に留置して所定の作業(封筒貼りなどの軽作業)を行わせることにより,罰金を支払ったことにする制度があり,これを労役場留置といいます。
ただし,判決言い渡し時に少年である者に対しては,教育的意義を有さず少年の情操を害する労役場留置を言い渡すことはできません(少年法第54条)。ただし,この規定も特定少年の刑事事件には適用がありません。
オ 拘留
1日以上30日未満の間、刑事施設(刑務所等)に拘束し身体の自由を拘束する刑です。
カ 科料
軽微な義務違反などについて、1000円以上1万円未満の金額のお金を支払わせることを内容とする財産刑の一つです。