恐喝罪,強盗罪
恐喝罪の法定刑は,10年以下の懲役です(刑法第249条)。
強盗罪の法定刑は,5年以上の懲役です(刑法第236条)。
強盗の機会に,人に怪我をさせた場合には強盗致傷罪として,人を死亡させた場合には強盗致死罪として重い法定刑が科せられます(刑法第240条)。
恐喝罪・強盗罪の解説
1 恐喝罪の解説
恐喝とは,相手方に対して,その反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫または暴行により相手方を怖がらせ,財物を交付させることや,財産上の利益を処分させることをいいます。いわゆる「かつあげ」も恐喝の一種です。
お金を貸しているからといって,社会通念上,許される方法以上の手段をもってお金を返させようとすると,刑事事件として恐喝罪が成立してしまうことから,注意が必要です。
具体的には,債権取り立てのために脅して金を回収する場合などがあります。
この場合,回収の手段が権利行使の方法として社会通念上一般に許容すべきものと認められる程度を逸脱した場合には,債権額にかかわらず回収額全額について恐喝罪が成立します。
2 強盗罪の解説
恐喝罪の法定刑が10年以下の懲役であるのに対し,強盗罪は5年以上の懲役と,強盗罪は恐喝罪に比べて重く処罰されています。
これは強盗が恐喝と比べて強い程度の暴行脅迫を用いているからです。
強盗と恐喝の違いは,暴行脅迫の程度の強弱です。
相手の反抗を抑圧するレベルに達していれば強盗で,それより弱ければ恐喝になります。
具体的には犯行の時刻場所,周囲の状況,被疑者と被害者の人数,年齢,性別,性格,体格,体力,精神状態,犯行態様などを総合考慮して判断されます。
なお,物を盗んで逃げている犯人が追ってきた被害者に対して強い程度の暴力をふるった場合を事後強盗といい,強盗罪として処理されるので罪が重くなります。
また,原動機付自転車等によるひったくりの際に,被害者を転倒させるなどしてけがを負わせた場合には,強盗致傷罪が成立し,無期又は6年以上の懲役に処せられる可能性があります。
少年による恐喝,強盗事件の対応方法
1 事実を争う場合
身に覚えがないにも関わらず,恐喝,強盗の容疑を掛けられてしまった場合,弁護士を通じて,警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して,審判不開始又は不処分を獲得する余地があります。
アリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出することで,恐喝,強盗を立証する十分な証拠がないことなどを主張していきます。
また,恐喝,強盗事件を起こしてしまった場合,相手方が反抗できないほどの暴行や脅迫がなされたかどうかが強盗罪の成否の重要なポイントとなるところ,暴行・脅迫の程度がそこまで強くない可能性があるのであれば,犯行態様,犯行時間,犯行場所,当事者の年齢や性別,体格などの事情を詳細に検討して,強盗罪よりも量刑の軽い恐喝罪や窃盗罪及び暴行罪として刑事処分がなされるよう弁護活動を行います。
恐喝,強盗で警察に検挙・逮捕された少年の方は,本人の性格,不安や諦めの気持ち,友人・知人を庇うなど様々な原因から自分の主張を貫くことが困難になります。
弁護士が,少年本人と接見(面会)して言い分を丁寧に聞き取ってあげることで,恐喝,強盗の詳細を把握し,少年本人の主張が通るように警察・検察などの捜査機関や家庭裁判所に働きかけていきます。
また,弁護士との接見(面会)によって少年を安心させ,支えてあげることで,少年の虚偽の自白を防いで真の更生につなげることが可能になります。
2 罪を認める場合
⑴ 謝罪,示談をする
被害者感情が重要視される昨今,少年による恐喝,強盗事件においても,被害者の方と示談することは,重要な弁護活動です。 警察に被害届が提出される前であれば,被害届の提出を阻止し,警察の介入を阻止して事件化を防ぐことができます。 警察に被害届が提出されてしまった後であっても,少年による恐喝,強盗事件においては,示談をすることによって,審判不開始や不処分,保護観察処分を獲得する可能性を高めることができます。
少年による恐喝,強盗事件では,被害弁償や示談の有無及び被害者の処罰感情が少年の処分に大きく影響することになるので,弁護士を介して迅速で納得のいく示談をすることが重要です。
また,示談をすることで少年が釈放される可能性もありますので,示談によって少年の早期の学校復帰・社会復帰を目指すことができます。
⑵ 環境を整える
非行グループの一員として事件を起こした場合は,そのような組織から完全に離脱することが必要です。
不良交友による荒れた生活が事件の引き金になった場合は,交遊関係の見直しを含めた生活環境の改善が必要となってくるでしょう。
生活環境を立て直すためにはご家族の協力が不可欠となることから,ご家族には日常生活の中で本人を監督してもらうことになります。
3 身柄拘束からの早期解放活動
少年が恐喝,強盗事件で逮捕されても,適切な取り調べ対応と弁護活動によって留置場や鑑別所に入れられずに済む可能性があります。
恐喝,強盗事件で逮捕された少年が早く留置場から出て鑑別所に行かずに済むためには,逮捕の後に勾留されないこと又は家庭裁判所による観護措置を回避することが大切です。
少年の勾留や観護措置を避けるためには,逮捕後の早い段階で,弁護士と面会して取り調べ対応を協議し,身元引受人の協力を得ることが大切です。
その上で,弁護士から検察官や裁判官に対して,少年の反省と二度と恐喝,強盗事件を起こさない旨を主張し,釈放してもらうよう働きかけます。