少年の殺人未遂事件における弁護活動
少年の殺人未遂事件における弁護活動
今回は、少年が殺人未遂事件を起こしてしまった場合における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
中学生のAくん(15歳)は、東京都台東区に住む同級生のVの胸をナイフで刺し、殺害しようとした疑いで警視庁本富士警察署に現行犯逮捕されてしまいました。
Vに対する怨恨が動機のようです。
Aくんの親は大変ショックを受けましたが、Aくんの将来に悪影響を与えないように弁護士を依頼することを検討しています。
少年事件で弁護士を頼むメリットとして、どのようなものがあるのでしょうか。(フィクションです)
~殺人未遂事件について~
殺人の実行に着手したものの、これを遂げなかった場合に、殺人未遂罪が成立します。
殺害しようとしたが、相手を傷つける前に犯行を止められた、あるいは、相手を傷つけてしまったが、相手は死亡しなかった、という場合が典型例となります。
ケースのAくんは、殺意を持ってVの胸を刺し殺害しようとしたが、これを遂げなかった、というものです。
このような場合に殺人未遂罪が成立する可能性は極めて高いと思われます。
~少年事件の手続~
Aくんは20歳に満たない少年ですから、少年保護事件として手続が進行します。
そのため、殺人未遂事件を起こした場合であっても、原則として刑罰を受けることはなく、必要に応じて保護処分を言い渡されることにより、事件が終了することになります。
最終的にAくんに言い渡される可能性のある処分については、後述します。
(捜査段階)
少年保護事件であっても、捜査段階において逮捕・勾留されうるという点は、成人と同じです。
捜査中は、Vを殺害しようとするに至った動機、犯行態様などについて詳しく聞かれることになります。
(家庭裁判所への送致)
捜査機関での捜査が終わると、家庭裁判所に送致されます。
送致後、家裁が「観護措置」を行うか否かを検討します。
この段階までに勾留がついていると、観護措置がとられる可能性が高いです。
観護措置がとられると、2週間身体拘束を受けることになります。
この期間は1回更新することができ、殺人未遂などの重い事件で証人尋問の決定などをして、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、さらに2回を限度として更新することができます。
以上を合計すると、最大8週間、観護措置として身体拘束を受ける可能性がある、ということになります。
観護措置を受けると、少年鑑別所に収容され、Aくんの心身の調査などが行われます。
この調査の結果は、後の少年審判に役立てられます。
(気をつけるべき処分)
少年法第20条1項は、
「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない」
としています。
これを「検察官送致」、「逆送」と呼びます。
先ほど、「原則として刑罰を受けない」と記載しましたが、上記の処分がなされると、成人と同様に刑事裁判にかけられ、刑事罰を受けなくてはならなくなる可能性が極めて高くなります。
また、公開の法廷で審理が行われるので、Aくんの負担も大きくなります。
本件は、殺人未遂事件として手続が進めば裁判員裁判となりますので、Aくんの負担はさらに大きなものとなるでしょう。
Aくんの将来を考えると、この処分は回避したいところです。
弁護士は、罪質は実際のところ傷害でありそれほど重くはないことや、検察官送致を行うことによってAくんに生じる不利益について、家庭裁判所の裁判官に説明し、上記処分の回避に努めます。
(審判)
保護処分には、①保護観察処分、②少年院送致、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致があります。
Aくんには、少年院送致が言い渡される可能性が高いでしょう。
少年院では、身体拘束を伴うなど、Aくんにとって負担になりうる処遇がなされますが、少年院はAくんの改善更正を重視している施設ですから、必ずしもAくんの将来のためにならないわけではありません。
少年事件では、Aくんの将来を踏まえ、真摯に内省を促し、改善更正を目指していくことが重要な目的となります。
どのように取り組むかにより、Aくんの改善更生を大きく左右します。
少年法に詳しい弁護士のアドバイスを受けながら、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が殺人未遂事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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