少年事件と不処分
少年事件と不処分
埼玉県比企郡に住むA君(16歳)は,試験勉強や部活の成績が不調であることなどでストレスが溜まっていました。そして,ある日,A君は学習塾の先生Vさんからテストの結果が悪かったことを指摘されたことに憤慨し、Vさんの顔面を手拳で数回殴る暴行を加えました。A君は、さらにVさんに殴りかかろうとしたところ、周囲の人に制止され、埼玉県小川警察署に通110番報され、暴行罪で逮捕されてしまいました。その後、Vさんは加療約3週間の怪我を負ったことが判明し、A君に対する容疑は暴行罪から傷害罪へ切り替わりました。
(フィクションです)
~ 逮捕後の流れ ~
少年(20歳に満たない者)事件として逮捕されると留置場に留置(収容)されます。
その後、勾留決定が出た場合は警察の留置場に、勾留に代わる観護措置決定が出た場合は少年鑑別所に収容されます。前者の拘束期間は、勾留請求のあった日から最大で20日間、後者の場合は10日間です。
収容中に、警察、検察の捜査を受けます。警察,検察での捜査が終わると,事件は家庭裁判所へ送られます(家庭裁判所送致)。
身柄を拘束されている場合は通常,少年鑑別所に収容され(留置場に収容されていた場合は移送され),そこで、少年の性格などを鑑別するための担当技官による面接や心理検査などを受けます。また,同時に家庭裁判所調査官の調査も受けます。調査の結果は家庭裁判所に報告され,少年審判などに活かされます。
少年審判では、少年が非行を犯したかどうか、犯したと認められる場合にどんな処分を科すのが適当かを判断されます。
ただし,少年審判は必ず開かれるとは限りません(審判不開始決定)。また,仮に開かれたとしても保護処分(保護観察,少年院送致等)が下されない場合もあります(不処分決定)。以下,ご紹介いたします。
~ 審判不開始決定 ~
審判不開始決定とは,少年鑑別所や家庭裁判所調査官による調査の結果,審判に付することができず,又は審判に付するのが相当でないと認めるときに,少年審判を開始しない旨の決定をいいます。
「審判に付することができず」とは,非行事実の存在の蓋然性がない場合や少年の所在が不明であり,審判することができない場合などが当たります。「非行事実の存在の蓋然性がない場合」とは,少年の行為が非行の構成要件に該当しない場合や証拠上非行事実の存在の蓋然性すら認められない場合,すなわち,成人でいえば「嫌疑なし」の場合をいいます。この場合は,少年自身を少年事件の手続から解放する必要がありますし,少年に適切な処分を下すことができないからです。
「審判に付するのが相当ではない場合」とは,事案が軽微であったり,家庭裁判所に送致された段階では少年が十分に反省していて要保護性(矯正施設による保護の必要性)がなくなったりしている場合をいいます。少年審判の一番の目的は「少年の更生」にありますから,審判開始前に少年が更生していると認められる場合は少年審判を開くことは不要であるからです。
~ 不処分決定 ~
不処分(決定)とは,家庭裁判所における少年審判の結果,保護処分に付することができないとき,又は保護処分に付するまでの必要がないと認めるときに,保護処分に付さない旨の決定のことをいいます。
「保護処分に付することができないとき」とは,非行事実の存在が認められない場合などが当たります。「非行事実の存在が認められない場合」とは,少年の非行事実の存在について,合理的疑いを超える心証が得られない場合をいいます。成人でいえば「無罪判決」に相当します。
「保護処分に付するまでの必要がないとき」とは,審判までに少年が更生し,要保護性がなくなった場合や試験観察期間中の少年の生活態度からさらに保護処分を行う必要がなくなった場合などが当たります。調査や審判の過程で,調査官などによる教育的な働きかけによって,少年の問題点が改善され,要保護性がなくなった場合をいいます。
~ 審判不開始決定,不処分決定を受けるための弁護活動 ~
家裁送致から少年審判まである程度の期間がありますから、付添人(主に弁護士)としては,その間に,少年に対して教育的な働きかけを行っていき,少年の事件に対する反省を深めさせたり,少年を取り巻く環境を整えていかなければなりません。裁判所に意見を具申できるのは家庭裁判所調査官ですが、付添人はその家庭裁判所調査官と緊密に連絡を取り合いながら、少年の処遇に関し意見を述べることもできます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。少年事件でお困りの方はフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談等を24時間受け付けております。