人身事故,死亡事故

不注意による交通事故で相手方を負傷・死亡させた場合の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金になります(自動車運転死傷行為処罰法第5条)。アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させること等により,人を負傷させた場合の法定刑は,15年以下の懲役,人を死亡させた場合の法定刑は,1年以上20年以下の懲役になります(自動車運転死傷行為処罰法第2条)。アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転するなどして,人を負傷させた場合の法定刑は,12年以下の懲役,人を死亡させた場合の法定刑は,15年以下の懲役になります(自動車運転死傷行為処罰法第3条)    

自動車運転死傷行為処罰法の解説

飲酒運転や無免許運転のような悪質で危険な運転による死亡事故や人身事故が後を絶たないことから、2013年、自動車(自動二輪と原動機付自転車も含む)の運転による死傷事故に対して、運転の悪質性や危険性の実態に応じた処罰ができるように、罰則の整備と厳罰化を盛り込んだ新たな法律「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称、自動車運転死傷行為処罰法)」が成立しました。 この自動車運転死傷行為処罰法は2014年5月20日から施行(適用)されています。 新法の成立により,従来からの危険運転致死傷罪(以下,「従来型危険運転致死傷罪」といいます。)におけるアルコール等の影響により正常な運転が困難な状態と同じとまではいえないけれども,なお悪質で危険な運転によって人を死傷させた場合に,これまでよりも重く処罰することができるようにするために,新たなに危険運転致死傷罪が成立する類型が定められました(以下,「新型危険運転致死傷罪」といいます。)。 新型危険運転致死傷罪とは,アルコール等により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で,そのことを自分でも分かっていながら自動車を運転し,その結果,アルコール等により正常な運転が困難な状態になり,人を死亡させたり,負傷させたりした場合に,成立することになります。 「正常な運転が困難な状態」とは,道路や交通の状況などに応じた運転をすることが難しい状態になっていることをいいます。 例えば,アルコールによる酔いのために,前方をしっかり見て運転することが難しい状態や,自分が思ったとおりにハンドルやブレーキなどを操作することが難しい状態が,これに当たります。 また,意識を失うおそれがある病気の発作のために意識を失っている状態や,精神疾患による急性の精神病状態などもこれに当たります。 不注意による交通事故(過失運転致傷)は,少年による犯罪の中でも2番目に多い犯罪となります。  

少年による交通事故事件の対応方法

1 無罪を主張する場合

身に覚えがないにも関わらず、人身事故の容疑を掛けられてしまった場合、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して、審判不開始又は不処分を獲得する余地があります。 アリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出することで、人身事故を立証する十分な証拠がないことなどを主張していきます。 また,人身事故・死亡事故を起こしてしまった場合でも、運転者に不注意(過失)がないのであれば、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷罪・過失運転致死罪等)は成立しません。 客観的証拠に基づく運転状況や被害者の行動、現場の状況等から、人身事故・死亡事故の発生を予想するのが困難であったことや、注意しても人身事故・死亡事故の発生を避けることができなかったことを主張・立証することで、審判不開始,不処分を目指す弁護活動を行います。 人身事故で警察に検挙・逮捕された少年の方は、本人の性格、不安や諦めの気持ち、友人・知人を庇うなど様々な原因から自分の主張を貫くことが困難になります。 弁護士が、少年本人と接見(面会)して言い分を丁寧に聞き取ってあげることで、人身事故の詳細を把握し、少年本人の主張が通るように警察・検察などの捜査機関や家庭裁判所に働きかけていきます。 また、弁護士との接見(面会)によって少年を安心させ、支えてあげることで、少年の虚偽の自白を防いで真の更生につなげることが可能になります。  

2 罪を認める場合

⑴ 謝罪,示談をする

被害者感情が重要視される昨今、少年による人身事故事件においても、被害者の方と示談することは、重要な弁護活動です。 被害者との間で示談が成立すれば、飲酒運転等の悪質な事故でない限り、審判不開始や不処分、保護観察処分を獲得する可能性を高めることができます。自動車事故の損害賠償は、けがの程度、通院期間等によって、ある程度、機械的に算出されますので、そのようにして算出した金額をベースに交渉することになります。 少年が任意保険(対人・対物無制限)に加入している場合、示談金は保険によってカバーされます。 保険会社から支払われる示談金とは別に、加害者が直接謝罪金を支払うこともあります。 任意保険に加入している場合は、判決までに示談が成立しなかったとしても,損害賠償がなされる見込みが高いとして裁判で有利に考慮される傾向にあります。    自賠責保険にしか加入していない場合、人身損害に関しては一定の限度でカバーされますが(死亡による損害…最高3000万円、傷害による損害…最高120万円、後遺症による損害…最高4000万円)、物損についてはカバーされませんので、この点については損害金を支払う必要があるでしょう。 少年による人身事故事件では、被害弁償や示談の有無及び被害者の処罰感情が少年の処分に大きく影響することになるので、弁護士を介して迅速で納得のいく示談をすることが重要です。 また、示談をすることで少年が釈放される可能性もありますので、示談によって子供の早期の学校復帰・社会復帰を目指すことができます。   

⑵ 環境を整える

暴走族や,非行グループの一員として事件を起こした場合は、そのような組織から完全に離脱することが必要です。 不良交友による荒れた生活が事件の引き金になった場合は、交遊関係の見直しを含めた生活環境の改善が必要となってくるでしょう。  生活環境を立て直すためにはご家族の協力が不可欠となることから,ご家族には日常生活の中で本人を監督してもらうことになります。  

3 身柄拘束からの早期解放活動

少年が人身事故事件で逮捕されても、適切な取り調べ対応と弁護活動によって留置場や鑑別所に入れられずに済む可能性があります。 人身事故事件で逮捕された少年が早く留置場から出て鑑別所に行かずに済むためには、逮捕の後に勾留されないこと又は家庭裁判所による観護措置を回避することが大切です。 少年の勾留や観護措置を避けるためには、逮捕後の早い段階で、弁護士と面会して取り調べ対応を協議し、身元引受人の協力を得ることが大切です。 その上で、弁護士から検察官や裁判官に対して、少年の反省と二度と人身事故事件を起こさない旨を主張し、釈放してもらうよう働きかけます。

 

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