少年の器物損壊事件

2019-12-01

少年の器物損壊事件

今回は、少年の器物損壊事件における手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

高校3年生のAくん(17歳)は、受験勉強のストレスを発散するために、福岡県直方市内の駐車場に駐車されていた他人の自動車のタイヤをパンクさせるなどのイタズラをして楽しんでいました。
ある日、パンク被害に遭ったVが福岡県直方警察署に相談し、警察が連続器物損壊事件として捜査したところ、駐車場の監視カメラなどの映像から、犯人をAくんと特定しました。
ある日、Aくんの家に捜索差押許可状を持った警察官が現れ、パンクさせるのに用いた千枚通しなどを押収していきました。
捜索の後、Aくんは器物損壊罪の疑いで警察署にて取調べを受けています。
Aくんの親は不安に思い、弁護士に相談することにしました。(フィクションです)

~少年の器物損壊事件~

器物損壊罪とは、他人の物(建造物や特定の内容の文書を除く)を損壊し、又は傷害する犯罪です。
「物」の「傷害」とは、他人が飼っている動物を傷つけるケースが想定されています。
法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となっていますが、A君は20歳未満の少年ですから、原則としてこれらの刑罰を受けることはありません。
それでは、Aくんには何のお咎めもないのでしょうか。

少年法によれば、家庭裁判所は、少年審判を開始した事件につき、一定の場合を除き、保護処分を行わなければならない、としています(少年法第24条)。

保護処分には、
・保護観察処分
・少年院送致
・児童自立支援施設又は児童養護施設送致
の3種類があります。

一方、保護処分が行われない場合として、
・調査の結果、児童福祉法の規定による措置を相当と認めるとき(少年法第23条1項・18条1項)
・死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき(少年法第23条1項・20条1項)
・審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるとき(少年法第23条2項)
・審判の結果、本人が二十歳以上であることが判明した場合(少年法第23条3項)
があります。

~Aくんは今後どうなるか?~

捜査段階では、刑事訴訟法が適用されるので、捜査機関の取調べを受ける点、場合によって、逮捕勾留されうる点においては成人と同様です。

しかしながら、成人の刑事手続が起訴便宜主義(検察官に起訴・不起訴を決める裁量が認められる)を採っているのに対し、少年事件の場合は、全件送致主義(少年法第42条1項・審判に付すべき事由が認められる限り、原則として少年を家庭裁判所に送致しなければならない)が採られているため、不起訴処分を目指した弁護活動は想定されません。
したがって、非行事実の存否を争う場合などを除いては、家庭裁判所へ送致された後の対策をも検討しなければならないことになります。

~家庭裁判所へ送致されたあと~

家裁に送致された後、それまでは在宅で捜査されてきた場合であっても、「観護措置」により、少年鑑別所に収容される場合があります。
家裁送致された後は、少年の性格、生育歴、家庭環境、交友関係などが調査され、その結果が審判の資料として利用されることになります。

~審判が開始されたら~

審判が開始されてしまった場合、Aくんに対し上記の保護処分を言い渡される可能性があります。
保護処分が言い渡される場合は、一般的に保護観察処分少年院送致のいずれかが言い渡される可能性が高いと言えます。
また、中間処分として試験観察に付され、社会内で更生できるか見究められたうえで、改めて保護処分が言い渡されることもあります。

少年院では、基本的に施設の中での生活を強いられ、特別の場合を除いては外出できません。
これに対し、保護観察処分においては、保護観察官や保護司の指導・監督を受けるものの、在宅で更生を目指すことができます。
本件において、Aくんは受験を控えた重要な時期にあります。
このような時期に、少年院に送致されてしまうと、Aくんの将来に多大な悪影響を与えることが予想されます。
したがって、保護観察処分を獲得し、在宅で改善更正を目指していくのが良いでしょう。

~弁護士と共に保護観察処分の獲得を目指す~

家庭裁判所が保護観察処分を言い渡す場合は、Aくんが在宅でも改善更正しうる、と考えている場合です。
非行を行いがちな者との付き合いがある場合や、家庭での指導監督が期待できない場合、Aくん自身に強い犯罪傾向が認められる場合は、保護観察処分の獲得は難しくなります。

弁護士と力を合わせて、Aくんに真摯な反省を促し、家庭での指導・監督態勢を充実させ、不健全な交友関係を断ち切っていくことが、より軽い処分獲得への近道です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が器物損壊事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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