占有離脱物横領で不処分
占有離脱物横領と不処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
神奈川県平塚市に住む少年A君(16歳)は電車の座席に置き忘れている財布(Vさん所有)を見つけました。A君はしばらくそのままにしていましたが、誰も取りに来る様子がなく、周りに人もいなさそうだったことから、「自分のものにしてしまえ」と思い、その財布を手に持ったまま電車から降りました。ところが、後日、A君は神奈川県平塚警察署の警察官から占有離脱物横領罪の疑いをかけられ、警察署まで出頭するよう呼び出しを受けてしまいました。A君とA君の両親は不処分獲得のため、弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)
~占有離脱物横領罪~
占有離脱物横領罪は刑法254条に規定されています。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
「遺失物」も「漂流物」も「その他占有を離れた他人の物(占有離脱物)」の例示です。
そして、「その他占有を離れた他人の物」とは、その物(本件でいえば財布)の持ち主の元(占有)から離れたものをいいます。
「横領」とは、簡単にいうと自分のものにすることです。
では、本件の電車の座席に置かれていた財布は、「持ち主の元から離れたもの」すなわち「占有離脱物」と言えるのでしょうか?
この点、Vさんの占有が及んでいない場合は占有離脱物といえますが、占有が及んでいる場合は「他人の物」として窃盗罪(刑法235条)の客体となります。
そして、財物に対して占有が及んでいるかどうかは、主として①支配の事実と②支配の意思によって判断されます。
例えば、財布をその持ち主が実際に手に持っているという場合には、①支配の事実が明白であり、占有が及んでいると認められるでしょう。
しかしながら、持ち主が財物を実際に手に持っていないという場合でも、例えば、マンションの自転車置き場に自分の自転車を置いているという場合には、実際に手に持っている場合に比べて①支配の事実が弱いとはいえ、自分の物として自転車置き場に置く意思があると考えられますので、②支配の意思があり、占有が及んでいると認められるでしょう。
~不処分決定~
少年(20歳未満の者)の場合は,少年の更生に主眼が置かれるため,警察や検察での捜査がある程度終了すると,事件は家庭裁判所に送致されるなど成人とは異なる手続きを踏むことになります。具体的には
①家庭裁判所送致&観護措置決定
↓
②少年鑑別所における鑑別、家庭裁判所調査官による調査等
↓
③少年審判
不処分(決定)とは,家庭裁判所における調査の結果,①保護処分に付することができない場合や②保護処分に付するまでの必要がない場合において,少年審判で保護処分に付さない旨の決定のことをいいます。
ご相談者の中には,審判不開始と混合して理解されている方もおられますが,審判不開始はそもそも少年審判を開く前の審判を開かない旨の決定,不処分決定は少年審判開いた上で,少年に対し保護処分を下さない旨の決定である点が異なります。
①とは,非行事実の存在が認められない場合(無罪判決に相当)などが当たります。
②とは,審判までに少年が更生し,要保護性(つまり,矯正施設による保護の必要性)がなくなった場合,非行事実が極めて軽微な場合などをいいます。
不処分決定が出される場合の多くが②の場合です。
ですから,不処分決定を獲得するためには,少年審判が開かれる前に,まずは少年自身に内省していただき,少年の更生のために,ご家族,学校,その他少年に関わる環境を整える必要があります。それにはご依頼を受けた弁護人はもちろん調査官などの専門家が関与しますが,何よりまずはご家族様のご協力が不可欠です。
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