殺人未遂罪と少年法の改正について 

2022-03-19

殺人未遂罪と少年法の改正について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

18歳のAさんは令和4年4月上旬の深夜、神戸市長田区の路上で通りかかったVさんに対し、殺すつもりでVさんを刃物で切りつけました。
Vさんは軽傷で済み、Aさんは兵庫県長田警察署の警察官に殺人未遂罪で逮捕されました。
Aさんの両親は、Aさんはまだ未成年だからテレビなどで名前が出ることは無いと思っていましたが
令和4年4月1日から、18歳と19歳は実名で報道される可能性が有ることを知り、法律事務所に相談に行きました。
(フィクションです)

少年法の改正について

令和3年5月21日に、少年法等の一部を改正する法律が成立し、令和4年4月1日から施行されます。
令和4年4月1日から、成年年齢を18歳とする民法の一部を改正する法律についても施行されます。

選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、責任がある立場となります。
今回の少年法改正は、民法上は成年となる18歳、19歳の者が犯罪を犯した場合に、その立場に相応の取扱いとするために「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めることになりました。

少年事件の基本的な流れ

少年事件は、事件の捜査が終了した後は、全ての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定します。
処分には、保護処分(少年院送致や保護観察が、あてはまります)や検察官送致(いわゆる「逆送」です)などがあります。
家庭裁判所が保護処分ではなく、少年に対し刑罰を科すのが適切であると判断した場合に、検察官送致が行われます。
また、原則検察官送致がされる事件の基準は、令和4年4月1日の改正までは「16歳以上の少年の時点で犯した、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件」とされています。

少年法の改正点

続きまして、少年法の改正点についてみていきましょう。

①少年法の適用範囲について

18歳・19歳も引き続き少年法の適用対象で、家庭裁判所が処分を決定しますが「特定少年」という扱いになります。
しかし、原則検察官送致される事件が拡大して適用されたり、検察官送致された後は20歳以上の者と同様に取り扱われることになり、検察官送致された17歳以下の少年とは異なる扱いとなります。
異なる扱いの一例として、懲役刑の長さなどがあり、17歳以下に課される有期懲役刑の上限は15年ですが、18歳・19歳は20歳以上の者と同じ扱いとなるため、有期懲役刑の上限は30年となります。

②原則逆送対象事件の範囲について

先に述べた通り、原則検察官送致がされる事件の基準は、令和4年4月1日の改正までは「16歳以上の少年の時点で犯した、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件」とされています。
しかし、特定少年については、「特定少年の時に犯した死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件」が原則検察官送致がされる事件となります。

事例のAさんは、18歳の特定少年の時点で殺人未遂罪を行っています。
殺人罪及びその未遂罪につきましては、刑法第199条及び刑法第203条に規定があり

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。(刑法第199条)
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。(刑法第203条)

とあります。
ですので、改正後の少年法ではAさんの場合、被害者は軽傷で、亡くなってはいないのですが、殺人(未遂)罪は「死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件」となりますので、事件が検察官に送致される可能性が高いのです。

③実名報道について

少年の時に犯した事件については、犯人の実名や写真などの報道は禁止されています。
しかし特定少年の時に犯した事件について、検察官送致され、その後起訴された場合はその禁止が解除されることになります。
ただし、この起訴は正式裁判にかけられるもののみで、略式起訴(罰金などの書面で審理される手続き)の場合は当てはまりません。

少年事件の弁護活動

少年事件においても、事件の各段階において適切な弁護活動を受けることが大切です。
具体的には、逮捕前ならば取調べ対応や出頭、自首への同行、逮捕後ならば、こまめな面会や身柄解放に向けた活動、示談交渉などを行うことが可能です。
その後の家庭裁判所の審判段階ならば、少年にとって最も良い処分が出るように家庭裁判所に意見を提出したりすることもできます。
また、検察へ事件が送致され、起訴され正式裁判になった場合でも、少しでも軽い刑を獲得するための弁論活動や、身柄が解放されていなければ保釈の請求などもしていくことができます。

少年事件のことでお悩みでしたら、事件がどのような段階でも一度少年事件・刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

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