(事例紹介)少年の実名報道について

2022-05-04

(事例紹介)少年の実名報道について

今回は、今年4月1日に改正・施行された少年法に基づき、逮捕・起訴された少年が実名報道されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

2021年10月、甲府市の住宅で50代の夫婦が殺害され住宅が放火された事件で、甲府地方検察庁は、刑事処分が相当として家庭裁判所から送り返された19歳の被告人を殺人などの罪で起訴しました。
報道では実名も記載されています。(2022年4月8日 NHK NEWS WEB 「甲府の夫婦殺害事件 19歳被告起訴 改正少年法施行で氏名初公表」より引用)

~少年の実名報道について~

少年法上は現在でも、20歳未満の者を「少年」としていますが(少年法第2条1項)、18歳以上の少年については「特定少年」とし、特別な取り扱いがなされることになりました。
その内の一つが、少年の実名報道です。

少年法第68条本文によれば、「特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合における同条(第61条)の記事又は写真については、適用しない」とされています。
少年法第61条は、「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼ(ヽ)う(ヽ)等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と定め、推知報道を禁止しています。
少年の実名を記載するような報道(実名報道)は、この規定に反するものです。

ところが、少年法第68条本文により、特定少年のときに犯した罪により公訴を提起された場合=起訴された場合には、推知報道は禁止されません。
つまり、18歳以上の時に犯した罪によって起訴された場合においては、実名報道がなされる可能性がある、ということになります。

~実名報道の是非~

今回の少年法改正により、少年の個人情報について従来と異なる取扱いがなされることになります。
20年以上前にも、1997年に神戸市で起きた連続児童殺傷事件(いわゆる「酒鬼薔薇事件」)の犯人である少年の写真や実名の報道に踏み切った週刊誌があり、大きな話題となりました(2015年9月14日 JCASTニュース「週刊ポストの元少年A実名・顔写真公開巡り賛否 ネットでは以前から出回っている「周知」の事実だが…」より)。

既に民法では成人とされている年齢の者による重大事件は、国民の重大な関心事である一方、実名報道されることで少年法の目指す少年の健全な育成を損なうのではないかという問題があります。
少年の実名報道については、今後も大きな議論を呼ぶでしょう。
実名報道がされますと、世の中に顔や名前が知れ渡ってしまい、仮に無罪となっても、以後の人生における就学や就職にも影響を及ぼすおそれがあります。
実名報道についてお悩みの方は、まず弁護士と相談し、今後の善後策を立てていくことをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を中心に取り扱う法律事務所です。
少年事件についてお悩みの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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