(事例紹介)逆送対象の放火事件を少年院送致に①

2023-04-05

(事例紹介)逆送対象の放火事件を少年院送致に①

少年事件で原則逆送事件とされている放火事件で少年院送致されたという報道事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説致します。

・参考事例

自宅に火を付けたとして現住建造物等放火の非行内容で送致された兵庫県明石市の女(19)の審判が28日、神戸家裁であり、○○裁判官は第1種少年院送致とする保護処分を決定した。

決定によると、女は2月10日、明石市の集合住宅の一室で、ガスこんろで手紙を燃やした際に誤ってごみ袋などに火を燃え移らせた。
消火できる状態だったが自殺しようと考えて火を放置して燃え広がらせ、約12平方メートルを焼損させた。

特定少年である女の非行内容は、昨年4月に施行された改正少年法で、原則検察官送致(逆送)の対象となる事件だった。

決定で○○裁判官は「自殺目的という非行の動機は身勝手」と指摘した上で、積極的に他人の物などを傷つける意図があったとは認められないなどとし「例外的に保護処分を選択することが許容される」と説明。
保護処分で再非行を防ぐことが相当と判断した。

(神戸新聞NEXT 令和5年3月28日(火) 23時42分配信 「自宅に放火の女 少年院送致決定 神戸家裁」より引用 ○○部分についてのみ弊所で編集しています)

・放火と失火

今回の参考事例は、集合住宅の一室で「手紙を燃やした際に誤ってごみ袋などに火を燃え移らせた」とあります。
この時点では、積極的に火を放つ「放火」ではなく、不注意による火災である「失火」に当たります。
失火罪の条文は以下のとおりです。

刑法116条1項 失火により、第108条(注:現住建造物等放火)に規定する物又は他人の所有に係る第109条(非現住建造物等放火)に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。

然し乍ら、その後少年は「消火できる状態だったが自殺しようと考えて火を放置して燃え広がらせ」ているとされています。
本来であれば作為的に、つまり積極的な行動によって火を放った場合に適用される放火の罪ですが、消火できるのに(ご自身の命を絶とうとする目的で)消火をしなかったことから、
このように、本来は積極的な行動の結果成立する罪について、傍観する等した消極的な行動によっても成立する場合を、不真正不作為犯と呼びます。
今回は対象となる建物が集合住宅という人の住居ですので、現住建造物等放火罪の適用が検討されます。
条文は以下のとおりです。

刑法108条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

このような事件の場合、動機の部分や消火の可否の判断の部分(客観的には消火が可能な失火であったとしても、パニックになって気が動転していた、等)など、取調べでの供述が極めて重要になります。
弁護士は、捜査段階から接見を繰り返し、取調べ状況を把握することが重要になるでしょう。

・特定少年事件について

≪次回のブログに続きます≫

・原則逆送事件について

≪次回のブログに続きます≫

・逆送回避の弁護活動と付添人活動

参考事例のように原則逆送対象事件で少年院送致などの保護処分を求める場合、家庭裁判所や検察官に対して保護処分が相当であることを積極的に主張してく必要があります。
保護処分が相当であることを主張するためには、事件前後の少年の変化(更生の可能性あること)、保護者などによる家庭環境の改善状況、当該少年に対し刑事処罰を科すことによるデメリットなどの主張が考えられます。
また、送致事実に少年の主張との食い違いがある場合には、証拠書類(法律記録)を丁寧に確認し、送致事実について争う必要があると考えられます。
罪を認めている場合でも、否認している場合でも、刑事事件及び少年事件の経験が豊富な弁護士に相談し、今後の見通しや考えられる弁護活動・付添人活動について相談することが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件と少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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