【少年事件に強い弁護士】大阪市の保護責任者遺棄致死事件で逮捕

2017-09-26

【少年事件に強い弁護士】大阪市の保護責任者遺棄致死事件で逮捕

18歳の少女Aは、生後10か月のVの母親であったが、Vの世話に疲れ、これ以上面倒をみることはできないと思い、真冬の大阪市北区の人気のない歩道上に、誰かに拾われることを期待してVを放置した。
しかし、Vは寒さが原因で凍死してしまい、大阪府大淀警察署はAを保護責任者遺棄致死罪の容疑で逮捕した。
(フィクションです。)

~保護責任者遺棄致死罪の罪を問えるか~

刑法218条の保護責任者遺棄罪では、以下のような条文が規定されています。
「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。」
では、今回の事例は本条に該当するでしょうか。

まず、Aは18歳の少女ですが、母親であるので「保護する責任のある者」といえ、Vは生後10か月なので「幼年者」といえます。
そして「遺棄」とは、遺棄される者を「場所的離隔を伴って保護のない状態に置く行為」をいいます。
Aは、人気のない歩道上に赤ん坊Vを置いているので、「遺棄」にあたります。
したがって、まずは保護責任者遺棄罪が成立するといえます。
さらに、刑法219条では、保護責任者遺棄罪により「よって人を死傷させた者」には、保護責任者遺棄致死傷罪が成立するとしています。
では、Aに死の結果の責任を負わせることができるのでしょうか。

死の結果の責任を負わせるためには、AがVを放置した行為とVが死亡したこととの間に、因果関係が必要となります。
本事例では、放置しなければ、死の結果は発生していませんし、真冬の人気のない歩道上に放置する行為に死の結果が現実に発生する危険性が含まれていいるので、保護責任者遺棄致死罪が成立しうると考えられます。
保護責任者遺棄致死罪は、故意の犯罪行為によって人を死なせてしまう犯罪ですから、いわゆる「原則逆送事件」にあたります。
つまり、少年であっても、刑事裁判になる可能性のある重大事件なのです。
保護責任者遺棄致死罪の量刑ですが、懲役2年6か月~10年の間が多く、執行猶予が付いた過去の裁判例もあります。

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