中学生の傷害致死事件

2020-10-30

中学生の傷害致死事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

~ケース~

中学3年生のAくん(15歳)は、東京都港区において、他校の中学生と頻繁に喧嘩を行っていました。
ある日、Aくんが喧嘩中に他校の生徒Vの腹部あたりを蹴ったところ、Vはバランスを崩して後ろに倒れて失神しました。
それを目撃した通行人の通報され、Aくんは駆け付けた警察官により傷害罪の現行犯として警視庁高輪警察署に逮捕されてしまいました。
その後、後頭部の強打が原因でVが死亡したため、傷害致死罪の疑いで捜査が進められることになりました(フィクションです)

~傷害致死罪について解説~

人の身体を傷害し、結果的に死亡に至った場合に成立しうる犯罪です(刑法第205条)。
傷害致死罪に類似した犯罪類型として「殺人罪(刑法第199条)」がありますが、傷害の時点で殺意がない、という点で殺人罪と異なります。

傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役となっています。
もっとも、Aくんは未成年であり、「少年」(20歳未満の者)に該当するため、原則として少年法の定める少年保護事件として事件が進行することになります。

~少年保護事件の手続について解説~

少年保護事件においても、捜査段階においては主に刑事訴訟法が適用されるため、逮捕勾留されうる点では成人と同様です。
逮捕勾留されると、最長で23日間身体拘束を受けることになります。
成人の場合、勾留される場所は警察の留置場または拘置所になりますが、少年の場合、「少年鑑別所」を勾留の場所とすることもできます(少年法第48条2項)。
「少年鑑別所」は、医学・心理学・教育学・社会学その他の専門的知識に基づいて、少年の資質の鑑別を行う、法務省管轄の施設です。

捜査機関が捜査を遂げると、事件は家庭裁判所に送致されます。
成人の場合は検察官が起訴又は不起訴を決定することになっており、不起訴となれば事件は裁判所に係属することなく終了します。
これに対して、少年保護事件においては「全件送致主義」が採られており、検察官の裁量で家庭裁判所に送致しない、ということはできません。

(家庭裁判所へ送致された後)
まずは、家庭裁判所がAくんに対し、「観護措置」を行うかどうかを検討します。
観護措置」とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置をいいます。
観護措置は、2週間を超えることができませんが、とくに継続の必要があるときに1回に限り更新することができます。
さらに、「特別更新」の要件を満たしている場合は、さらに2回を限度として期間を更新することができます。
実務上は4週間が最も多く、2週間で観護措置が終わるというケースは殆ど見られません。
観護措置がとられると、少年は前述した少年鑑別所に収容され、心身鑑別のために様々な調査が行われることになります。

(「逆送」の可能性)
家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪を犯した少年について、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき、検察官送致決定を行います。
また、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件であって、その罪を犯すとき16歳以上の少年については、検察官に送致する決定をしなければなりません。
これを一般に「逆送」といいます。
傷害致死事件は、人が死亡していることからしばしば重大な事件として扱われます。
Aくんは事件当時は15歳なので当然に逆送になるわけではありませんが、逆送決定がなされる可能性が大きいです。
逆送されると、成人と同様に起訴され、有罪の場合は刑罰が科されることになります。
刑事裁判の公判は公開される点、懲役刑が言い渡される場合、少年刑務所の処遇が矯正教育として不十分である点などを考慮すると、できれば逆送決定は回避したい処分です。
弁護士は、可能な限り、逆送決定が行われないよう働きかけ、後述する保護処分に向けた事件解決を目指します。

(家庭裁判所における審判)
家庭裁判所における審判では、少年を更生するための措置である保護処分が決定されます。
一方、公的機関などの援助がなくとも更生が可能だと考えられた場合には、何らの保護処分も行わない不処分の決定がなされます。
保護処分の種類として、①少年院送致、②保護観察処分、③児童自立支援施設又は児童養護施設送致があります。
ケースの場合、不処分あるいは②、③の保護処分が言い渡される可能性は低く、①の少年院送致が言い渡される可能性が高いでしょう。
少年院も矯正教育施設ですから、Aくんの改善更正を図る、という目的に照らすと妥当な処分であるようにも思えます。
ただ、本来の生活圏を離れて身柄が収容される点や、少年院へ送致されたという経歴が残る点を考えると、少年院送致の是非も一考の余地があると言えます。

ケースの事件においては、逆送決定など、Aくんにとって不利益の大きい処分を回避し、Aくんの改善更正に適した処分の獲得に向けて行動することが、弁護士の主な活動になると思われます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、少年による傷害致死事件についてもご相談いただけます。
お子様が傷害致死事件を起こしお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にの無料法律相談をご利用ください。

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