少年事件と逆送の流れ
少年事件と逆送について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
札幌市内に住むA君(17歳)は、傷害致死罪でに逮捕、検察庁に送致された後勾留されました。その後、A君の事件は家庭裁判所に送致されましたが、少年審判で「刑事処分相当」であるとして「逆送決定」が出てしまいました。A君は、現在、留置場に収容されているようです。A君のご両親は今後のことが不安になって少年事件に詳しい弁護士に相談を申込みました。
(フィクションです)
~ 逆送とは ~
逆送とは、家庭裁判所の調査の過程、あるいは少年審判で本人が20歳以上であることが判明したとき(少年法19条2項、23条3項)、又は、家庭裁判所の審判において、刑事処分が相当であると判断されたとき(少年法20条1項)、あるいは、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件(※)であって、その罪を犯したときに少年が16歳以上だったとき(少年法20条2項)に、事件を家庭裁判所から検察官に送致される手続のことをいいます。手続的には、検察官から家庭裁判所へ送られた事件が、再度、家庭裁判所から検察官の元へ送られるわけですから「逆」送と呼ばれています。
逆送されれば、成人と同様の刑事手続に移行します。正式起訴されれば、成人同様、正式裁判を受けなければなりませんし、裁判で有罪となり裁判が確定すれば刑に服さなければなりません。前科も付きます。
※ 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件
原則的に検察官への送致を義務付ける事件で「原則逆送事件」とも呼ばれています。1997年に少年が起こした「神戸児童連続殺傷事件」を受け、平成 12年の少年法改正により新設された規定です。故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件とは、殺人罪(刑法199条)、傷害致死罪(205条)、強盗致死罪、強盗殺人罪(刑法240条)などがあります。
~ 逆送後の流れ(少年法20条の場合) ~
逆送後の流れを図にすると以下のとおりです。
家庭裁判所による逆送決定(①)
↓
検察官送致(②)
↓
強制起訴(③)(※)
↓
裁判(④)
↓
判決(⑤)
少年法20条の場合、少年の身柄は拘束されている場合がほとんどでしょう。①の段階では、まだ「少年鑑別所」にいます。しかし、②の段階になると、少年の身柄の措置は「観護措置」から「勾留」に変わります(呼称も少年から被疑者に変わる)。そして、被疑者(少年)の身柄は、捜査の便宜上、「少年鑑別所」から警察の留置施設(留置場)へ移されることもあります。勾留の期間は、検察官が事件の送致を受けた日から数えて10日間です。期間の延長(最大10日間)はほとんど認められないでしょう。
②の段階に入ると、検察、警察による連日の取調べなどを受けます。そして、嫌疑が固まりしだい起訴されます(③)。
※ 強制起訴と呼ばれていますが、次の場合は、起訴しないこともできるとされています(少年法45条5号但書)。
・送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないとき
・犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するとき
・送致後の情況により訴追を相当でないと思料するとき
起訴されれば、成人と同様の刑事手続で刑事裁判を受けなければなりません。事件が裁判員裁判対象事件である場合は、一般市民である裁判員6名の参加する合議体によって裁判が行われます。ただし、少年に対する刑事事件の審理は、少年のプライバシー等に配慮して行わなければならないとされています(少年法50条)。また、マスコミ等に対しては、刑事被告人が本人であることを推知させる記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならないことを求めている(少年法61条)など、一定の配慮をしています。
~本件における弁護活動~
逆送決定自体に対する不服申し立ては認められないと解されています。そこで、まずは、逆送決定が出る前に、少年の環境調整を行うなどして家庭裁判所(あるいは調査官に)に逆送決定は相当でない旨の意見書を提出します。次に、②段階での勾留に対する不服申し立て(準抗告)をすることが考えられます。不服申し立てが認められた場合は釈放されます。
起訴された場合は、裁判で、懲役刑や禁錮刑などの刑事罰ではなく、保護観察や少年院送致などの保護処分が相当である旨の主張を行います。この主張を行う前提として、当然、少年の環境調整を行っておく必要があることはいうまでもありません。この主張が認められた場合は、事件は再び家庭裁判所へ移送されます(55条移送)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。