【業務妨害事件】少年が爆破予告で逮捕・少年事件における実名報道

2021-09-09

少年が業務妨害で逮捕されてしまった事例を題材に、少年事件の実名報道などについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例:少年A(18歳)は、その気がないのに、爆破事件を起こすと虚偽の予告を行った。
これにより、警察が出動する騒ぎになった。
警察官は、少年Aを偽計業務妨害の疑いで逮捕した。
少年Aの家族は、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~公務執行妨害罪とその他の業務妨害罪~

まずAの行為は、警察活動という「公務」を妨害したとして、公務執行妨害罪に当たるのではないかということが考えられます。
この点、刑法95条1項は「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と規定しています。
本条を見れば明らかであるように、公務執行妨害罪によって保護される「公務」とは、「暴行又は脅迫」を手段としたものに限られることになります。
よって、本件では「暴行」や「脅迫」が用いられていないため、公務執行妨害罪が成立することはありません。

次に問題となるのが、刑法223条および224条の業務妨害罪です。
223条は「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とし、224条は「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による」と定めています。
本件では、「威力」が用いられていないため、専ら前者の223条の「偽計」業務妨害罪の成否を検討することになります。
本件では、虚偽の犯罪予告を行っており、「偽計を用いて」いることは明白といえます。
さらに、本条にいう「業務」に公務が含まれるかが問題となりますが、裁判例(東京高判平成21年3月12日)は「妨害された警察の公務(業務)は、強制力を付与された権力的なものを含めて、その全体が、本罪の対象となる」と判示し、「業務」には公務が含まれるとしています。
有力な学説は、その理由として、偽計による妨害を自力で排除することは難しい以上は、強制力を付与された権力的な公務も「業務」に含めて保護する必要があることを挙げています。
したがって、本件のような権力的な公務に対しても、「偽計を用いて」「その業務を妨害した」として少年Aの行為に偽計業務妨害罪(刑法223条)が成立します。

~報道における成人事件と少年事件との違い~ 

通常の刑事手続を経ることになる成人事件と、少年法の適用対象である少年事件の違いとして理解しておきたいのは報道に関する差異です。
刑事事件を起こしてしまった場合、被疑者となる本人やそのご家族がまず心配するのが実名報道の有無です。
いわゆる通常の刑事事件(成人事件)においては、逮捕等のタイミングで実名報道されてしまうことが少なくありません。
これに対し、少年事件においては少年法の明文によって実名報道は法律上禁止されているのです。

少年法は、「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と規定しています(61条)。
同条は「家庭裁判所の審判に付された少年」又は「少年のとき犯した罪により公訴を提起された者」としていますが、それ以前(逮捕段階など)の家裁送致前にも適用されるものと解されています。
なお、推知報道の禁止に関しては2021年5月に成立した改正少年法において、一部例外が認められたことから、施行時期なども含め注意を要します(2022年4月施行)。
以上のような点を含め少年事件においては、成人の通常の刑事事件との違いに十分に留意した弁護活動が求められることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
仮に本事例のように逮捕までは至らなかった場合でも、事情聴取・取調べ対応を含め、刑事事件・少年事件の専門知識を有する弁護士に相談することが重要です。
業務妨害事件を起こしてしまった少年のご家族は、24時間対応している弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで まずはお問い合わせください。

 

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