少年法の改正

1 平成12年(2000年)改正

平成12年における少年法改正の大きな柱は,①少年事件・少年犯罪の処分等の在り方の見直し,②事実認定手続きの一層の適正化,③被害者への配慮の見直しです。
   

⑴ 少年事件・少年犯罪の処分等の在り方の見直し

  • 検察官に送致できる年齢を16歳から14歳に引き下げました。
  • 犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件については,原則として検察官に送致することとなりました。
  • 家庭裁判所や家庭裁判所調査官は保護者に対して,訓戒,指導その他の適当な措置をとることができるとしました。

 

⑵ 事実認定手続きの一層の適正化

  • 家庭裁判所は,事実認定が困難な事件については,少年審判を3人の裁判官が関与する合議体で行うことができるようになりました。
  • 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件および死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件については,検察官の関与することが認められました。
    一方で,検察官が関与した場合には,少年に付添人がいない限り,必ず国選付添人を付さなければならないことが定められました。
  • 観護措置期間が最長8週間となりました。
  • 観護措置決定およびその更新決定に対して,家庭裁判所へ異議を申し立てることができるようになりました。
  • 保護処分が終了した後においても,保護処分の取消しを求めることができるようになりました。

 

⑶ 被害者への配慮の見直し

  • 被害者等は,審判開始決定があった後,事件記録の閲覧,謄写を請求することができるようになりました。
  • 家庭裁判所は,被害者からの申し出があったときは,その意見を聴取することになりました。
  • 家庭裁判所は,被害者からの申し出があったときは,審判結果等を通知できることになりました。

 

平成19年(2007年)改正

平成19年改正の主要な内容は,①触法少年に係る調査,②14歳未満の少年の少年院送致,③保護観察中の者に対する措置,④国選付添人制度の導入の4点です。
   

⑴ 触法少年に係る調査

触法少年に関して、客観的な事情から合理的に判断して、触法少年と疑うに足りる相当の理由のある者を発見した場合には,警察は調査を行うことができるとされました。
   

⑵ 14歳未満の少年の少年院送致

14歳未満の少年であったとしても、特に必要と認める場合に限り、概ね12歳以上であれば,初等少年院および医療少年院に送致できることとなりました。

なお、この概ねという表現には、1歳程度の幅があると考えられており、小学5年生の一部と小学6年生までも少年院送致される可能性があります。
   

⑶ 保護観察中の者に対する措置

保護観察所の長が警告を発し、それでも遵守事項を遵守しなかった場合には、家庭裁判所が新たな審判を行い、少年院送致の決定をすることができるようになりました。
   

⑷ 国選付添人制度の導入

故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件、死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件の場合について,少年鑑別所送致の観護措置が取られる場合において,少年に弁護士である付添人がいないときは,家庭裁判所の職権で少年に弁護士である付添人を付することができるようになりました。
  

3 平成20年(2008年)改正

平成20年改正の主要な柱は被害者に関する諸規定の導入であり,その内容は以下の4点です。
   

⑴ 被害者等の少年審判の傍聴

家庭裁判所は,殺人事件等一定の重大事件(故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪,自動車運転過失致死傷等の罪)の被害者等から申し出がある場合に,少年の年齢や心身の状態等の事情を考慮して,少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは,少年審判の傍聴を許すことができるとされています。
   

⑵ 被害者等に対する説明

被害者等からの申し出がある場合,裁判所は審判の状況について説明することができます。
   

⑶ 被害者等による記録の閲覧・謄写の範囲の拡大

被害者等には,原則として,記録の閲覧又は謄写を認めることとするとともに,閲覧又は謄写の対象となる記録の範囲を拡大し,非行事実にかかる部分以外の一定の記録についてもその対象としました。
   

⑷ 意見聴取の対象者の拡大

被害者等は,被害者が死亡した場合のほか,被害者の心身に重篤な故障がある場合に,被害者に代わり,意見を述べることができるようになりました。
 

4 平成26年(2014年)改正

平成26年改正の主な内容は,①家庭裁判所の裁量による国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲拡大と②少年の刑事事件に関する処分の規定の見直しです。
  

⑴ 家庭裁判所の裁量による国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲拡大

改正前までの家庭裁判所の裁量による国選付添人制度の対象事件の範囲は,「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」及び「死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」であったところ,改正後は「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪」に拡大されることになりました。

一方で,検察官関与制度の対象事件の範囲も,「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」及び「死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」から,「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪」に拡大されました。
  

⑵ 少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し

    • 罪を犯す時18歳に満たない者に対しては、無期刑をもって処断すべき場合であっても、有期の懲役又は禁錮を科すことができます。
      そして,この場合における刑の上限が,平成26年改正により,「15年」から「20年」に引き上げられることになりました。

 

    • 少年に対して不定期刑を科す事件の範囲を「長期3年以上の有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきとき」 から「有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきとき」に改めるとともに、短期は、長期の二分の一の範囲内を下回ることができないこととなりました。
      不定期刑の短期について、少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、処断すべき刑の短期の二分の一及び長期の二分の一を下回らない範囲内において定めることができるものとされました。 不定期刑の長期と短期の上限について「10年」と「5年」から「15年」と「10年」に引き上げられました。

 

  • 仮釈放を許すことができるまでの期間を「3年」 から「その刑期の三分の一」に改められました。

 

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